第13話 ヒルト村
アンファングから伸びた街道を一日ほど歩いた場所に、オレはキングと歩いてる。
「なぁ、キング。今日は暇すぎないか?」
「魔物も出ないですからねぇ、平和ですねぇ。」
昨日は、街から出てしばらくすると、魔物に襲われている商人の馬車がいたり、盗賊が出たりであっという間に時間が過ぎてしまった。
そのおかげで、距離も進まないまま、一晩過ごすことになってしまった。
「なぁ、もうリュートかほーくん出して乗せてもらおうぜ!」
「ご主人様は飽きたのですね……。しょうがないですね。早く着いたほうが依頼も解決しやすいでしょうし。」
「よしきた!!」
オレは、早速リュートを出した。
「いやぁ、やはり外は良いのぅー!ゲストよ、今日は何用かの?」
「乗せてってもらいたい場所があってね」
「ドラゴンである我を乗るために使うのは、ゲストくらいだろうのぅ……この前もそうじゃったし……」
リュートはへこんでいるような素振りを見せつつも、オレたちを乗せてくれる。
四本の足で軽く助走をつけて飛び立つ。
「やっぱりリュートは早いな!出して正解だ!」
「できれば戦闘に呼んでほしいのだが……」
「広いとこで戦う時は呼ぶかもなぁ……。あとは戦争とか?」
「頼むぞ!我だって思い切りブレスを吐きたいのだ。」
「わかったわかった!!」
リュートの背中ですごい勢いで変わる景色を楽しみながら、六時間ほどで着いた。
ほとんどリュートの背中で寝ていたのだが……
さすがにリュートを村に直接下ろすわけに行かないので、少し離れたところで降り立つ。
「リュート!ありがとなぁー!さすがにドラゴンのお前が村に入るわけにいかないからまた戻ってくれ」
「うむ、その辺は理解しておる。次は戦いに呼んでくれ!」
「わかったわかった!」
リュートをかごに戻し、村に向かう。
ヒルト村は魔物対策なのか、木でできた簡単な柵に囲まれている。
それに農村なのでそれなりな広い。
オレは、開きっぱなしの門に着いた。
本来なら警備がいるべきなのだが、見当たらない。
「おぉーい!誰もいないの?勝手に入るの不味いよねぇ?!」
オレは、大きな声をかけて呼び掛けてみた。
すると中から眠そうに一人の男が出てきた。
「ふわぁー……。わりぃな、休憩中に寝ちまってよ!ははっ!」
「そんなんで大丈夫なの?魔物だって出ないわけじゃないでしょ?」
「大丈夫だよ!村の各所にある矢倉から誰かしら見てるから!」
確かに柵より高い矢倉が数ヶ所建っている。
だが、この男の言い方だと不安しかない。
まぁ依頼達成したら帰るから関係ないが。
「ところで、何しに来たんだ?」
「あぁ、依頼だよ!オレ、冒険者なんだ!村の少女の行方不明事件の解決しに来たんだ。」
「それは助かる!この村の領主様は何もしてくれなくてねぇ……」
ギルドで聞いたのとちょっと違うなぁ……
「何もしてないの?したけど成果がないとかじゃなくて?」
「何もしてないんだよ!してると言い張ってはいるけど、動いてるところを見たことがないんだ!」
御高く停まっている典型的な貴族だな。
自分の欲望には忠実なのに下の者のことは考えない、そんな領主なのだろうな。
「そうなのかぁ……。とりあえず中に入っていい?すぐに捜索開始するからさ!」
「もちろんだとも!まず村長に話を聞いてみてくれ!一番デカい建物の隣の家が村長の家だからすぐわかると思う!」
「わかった!ありがとう!」
オレは、軽く軽く手を振り門をくぐる。
村の中は、畑が広がっていた。
畑をずっと進むと、奥にやっと住居区が見えてきた。
ちょっと高くなっているところに、この村で一番大きくて、趣味の趣味の悪い建物が見えてきた。
敷地の広さは流石貴族と言わざるを得ないが、その敷地の至るところに自分の像を建てている。
ちょっと見たことがある顔をしているような気がするが、この世界に来て、こんな細身のモデル体型の男はスヴェンくらいしかしらない。
そんなことは置いておいて、隣の質素な家が村長の家みたいだ。
質素だが小綺麗にしていて、古くて汚いといった印象は一切なかった。
そしてオレは、村長の家の扉をノックする。
「すいませぇーん!村長さんいますかぁ?!依頼の件で伺ったんですけどぉ!」
どうも中にいる気配はない。
どうしたものかと困っていると、後ろから声をかけられる!
「あんたが、依頼を受けてくれる冒険者か?」
「あ、はい!そうです!Cランク冒険者のゲストです!こっちは相棒のキングです!」
どんなじぃさんが出てくるかと思えば、見せかけのデカいデカい筋肉じゃなく、使える筋肉を搭載した白髪混じりのオッサンが出てきた。
「ほう?その年でCランクかすごいな!俺も冒険者やってたときはDランクまでが限界だったのに。」
「元冒険者なんですか?」
「あぁ……。昔な!パーティーの一人が一人が大怪我しちまって、それで限界を悟っちまった……」
歴戦の勇士って感じの感じの出で立ちだったのが、寂しさをまとっていた。
「わりぃ!関係ないことだったな!!」
「いえ!そんなことはないです!ところで行方不明事件の件ですが……」
「あぁ、説明するか。家に入ってくれ!中で説明する。」
オレは、村長に連れられて家に入った。
中も綺麗にされていた。
村長の奥さんにお茶を出され椅子に座った。
「まずは自己紹介な!このヒルト村で村長をしているジークベルトだ。ジークで良いからな!」
「わかりました。ジークさん!早速説明したもらってもいいですか?」
「わかった!最初は、1ヶ月前だったかな……」
1ヶ月、村のすぐ側にある森に集団で薬草や山菜の採集に向かった時に起きたらしい。
一人の少女がはぐれていなくなったらしいのだ。
近くで採集していた者は離れていくところを見てはいないらしい。
それどころか直前まで会話していたらしい。
結局その日は採集どころじゃなくなり、捜索したのだが見つからなかったそうだ。
二回目は村の中で起こった。
畑仕事を手伝っていた少女が家に物を取りに戻って行ったのだが、畑には帰らなかった。
少女の両親はそのまま家にいるのだろうと思っていたらしいのだが、結局家にもいなくてその日から帰ってこなかった。
それから似たようなことが続き、二十人ほどが行方不明らしい。
「う~ん……どうすっかなぁ……。」
「なんか良い案あるか?」
「囮作戦かな……」
「囮って誰を?この坊主にやらせるのか?」
ジークさんはキングに視線を向けながら言った。
まぁ、キングにやらせるくらいしか思い付かないし……
「キング!女の子っぽくなれる?」
「ご主人様!お任せを!」
そういうとキングはみるみる女の子っぽくなっていった。
どこかゲストに似ている美少女になってしまった。
ジークさん夫妻は目を丸くしている。
「お、おい!何したんだ?こいつの姿が変わったぞ!」
「あ、説明してなかったですね!オレは、テイマーなんですよ!そしてキングは魔物!スライムです!」
キングはオレの説明に合わせて手の一部をスライム状にしていた。
ジークさん夫妻は目をぱちくりさせている。
「そういうわけで、この村の少女に被害はこれ以上出ないと思いますので安心してください。」
「あ、あぁ、頼んだ!ところで今晩はどこで過ごすつもりだ?」
「その辺で野宿でもしようかと。」
「じゃあ俺の家に泊まれ!」
そういうわけで、半ば強引にジークさんの家に泊まることになった。
キングはジークさんの奥さんに気に入られて可愛がってもらっている。
「娘ができたみたい」って喜んでいた!
これ事件解決したら帰りづらいな……
オレは、ジークさんと遅くまで酒を飲み、冒険者のことを話した。
先にジークさんが潰れて、オレも寝るために横になると、すぐに夢の中へ誘われた。




