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いつも君がいた  作者: 遙香
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096:帰国して


 いろいろあった短期留学も、終わってみるとあっという間だったようにも思う。

日本へ向かう飛行機の中で零は、いろいろな出来事を思い出しながらうとうととまどろんでいた。

講義はいろんな意味で刺激的で、あの場所で学ぶ事が出来たらどんなにか楽しいだろうと思う一方で、怖いと思う気持ちも芽生えていた。

まだ消えない肩の痣。もしかすると骨にひびでも入っているのではないかと思う鈍痛がずっと続いている。結局、この痣の事はかおるにも言いだせないままだ。

触れると痛む肩にそっと触れて、零は小さくため息を付く。今回の留学で、弱すぎる自分を見せつけられた気がする。

あの時かおるが来てくれなかったらどうなっていたのだろうと思うと今でも怖かったし、進学すれば学部も異なり、近くにいたとしても今の様に同じクラスで授業を共にすると言うこともほとんどないだろう。

結局、自分自身が強くなってしっかりしなければどうにもならない事を理解しながらも、零はまだその方法を見つけられずにいる。


 いつの間にか眠っていた零は到着のアナウンスで目を覚まし、窓から外を見降ろすと美しく広がるジオラマの様な夜景。夜の着陸は好きだ。余計な物は見えず、光に彩られた街が少しずつ近づくのを見つめていると、少しの間様々な想いを忘れられる。そんな事を思いながら景色を眺め、飛行機が着陸すると、零は席に座ったまま大きくのびをした。


 一人でも大丈夫だったよ、と伊織に話したいと思っていたが、結局かおるがいてくれなければ解決できない事がたくさん起きてしまった。話さなくてもいい事は話さなければ、伊織に余計な心配をかける事もないだろう、と思いながら零はかおるが降ろしてくれた手荷物を受け取って礼を言いながら立ち上がった。

「零ちゃんが右手でかばんを持つなんて珍しいね。」

「え?」

ジェイクに付けられた痣が痛くて無意識に右手で鞄を持った零は、突然かおるに指摘されて驚く。

「いつも左手で鞄を持つから、僕は零ちゃんの右側を歩いてたんだけど。」

そう言ってかおるはふわりと微笑む。

自分でも無意識だった事を指摘された零はなぜか急に恥ずかしくなってうつむいた。

もしかしたら、かおるは自分よりも自分の事を良く知っているような、そんな気がして。


迎えの車を呼んであるから、と言うかおるは次々と荷物が出てくるターンテーブルを横目に見ながら携帯を取り出してメールを確認し、もう来てくれてるみたい、と微笑んだ。

そして当たり前のように零のスーツケースを奪って歩き出したかおるとともに、零は迎えの車に乗り込んだ。



 寮に到着したのは深夜過ぎ。秋休みは後2日あり、時差ぼけを治すにはちょうどいいリハビリ期間だと零は思う。

いろんな場所に留学していた仲間たちはもう帰ってきているのだろうか?と思いながら、零は部屋まで運んでもらったスーツケースを解いていた。伊織の帰国予定は明日の早朝のはずだ。明日には伊織に逢える、と思うと自然と心が明るくなった。


 よほど疲れているのか、飛行機の中でたくさん眠った割に眠気に襲われた零は、時差ぼけにならないためにも夜の間に眠る事を決め、一通り荷物の片づけを済ませてシャワーを浴びる。鏡に映るくっきりと残る肩の痣をみてため息を付き、久しぶりに袖を通すお気に入りのパジャマに包まれて横になった。


「・・・・?」

どのくらい眠っただろう。額に触れるくすぐったいような感覚に零は目を覚ました。

「・・・零、おはよう。」

「いお・・・っ!」

意識が覚醒すると同時に塞がれた唇。伊織の香りに包まれて、零はうっとりと瞳を閉じた。

「おいで。」

ロフトの上にいた零は、伸ばされた伊織の腕の中に身を委ねる。いつかと同じように、伊織は零を抱き上げて自分の部屋へ攫って行った。

「零・・・逢いたかった・・・」

「・・・ん・・・っちゅ・・・ん・」

伊織は部屋に戻るとソファーに座るのももどかしく零にキスをする。離れていた時間を埋めるようなキスは情熱的で心も身体も溶けそうになった。

「零・・・っちゅ・・・零・・・」

何度も名前を呼びながら舞い降りるキス。零は心の中が伊織への想いで満たされて行くのを感じながら伊織の首にしがみついた。

「ん・・・いお・・り・・・っん・・・んくっ・・」

慈しむように絡められる伊織の舌を伝って喉の奥に流れ落ちる唾液は媚薬の様に零の心を溶かし、身体の奥が切なく締め付けられる。もっともっと触れていたくて、もっと抱きしめて欲しくなる。

「零・・・」

「・・・っ痛っ!」

一度身体を放し、もう一度抱きしめようとした伊織の手が零の左肩に触れ、駆け抜けた痛みに零は思わず声を上げた。

「っ!?悪い、力・・強すぎたか?」

ハッと我に返った伊織が手を放す。

「・・・ううん、平気。平気だよ?」

零は伊織の首筋に頬を埋めてぎゅっと身体を寄せる。

「・・・零、何かあったのか?」

「え・・?」

「零、顔上げて・・・顔見せてくれよ。」

そんなにくっついてたら、顔が見えないだろ、と囁く伊織の声に、零は顔を上げた。


ちょっとした違いに気付いてくれるほど、

自分の事を見てくれている人がいてくれて。

お気に入り登録して下さっている方♪

ポイント付けて下さった方♪ 

ありがとうございます☆読んで下さる方がいてくれるとはげみになります!

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