058:ホラー映画・3
ホラー映画パートのラストになります。
更新に一か月も間があいてしまいました・・・。
今回は私的に糖度低めです。
「零ちゃん、まだ起きてる?」
伊織が部屋を出て行ってもまだドキドキのおさまらない心を抱えていた零はかなり控えめにドアをノックする音に顔を上げる。とっさに時計の針を見るとちょうど3時を指している。どうやらありがたい事に今日は明るくなるまで眠らずにいられそうだ、と零は思う。
「起きてるよ?」
返事をして、ドアを開けると、きまり悪そうに俯いた健が立っていた。きっと健も怖がっている自分の事を心配して来てくれたんだろうと思うと心が温かくなる。
・・・それにしても、見てるみたいに入れ替わりで来るから不思議・・・。
「あ・・・あのさっ」
健はいつになく元気のないトーンで切りだす。
「あの・・・俺さ、その・・・ごめん!俺、前に零ちゃんの事守るって言ったのに零ちゃんが嫌がる事しちまったなって・・・。あんなに怖がると思わなかったんだ・・・」
いつも元気な健がしゅんとしているとこっちまで調子狂う、と思いながら零は少し笑う。
「大丈夫だよ?すごく怖かったけど・・・みんなも心配して来てくれたし、もう平気!」
「・・・みんな?そっか。そりゃ、そうだよな。・・・あ、あのさ、ホントにごめん!俺、零ちゃんに嫌われたら・・って思ったら怖くなってさ・・・。俺!零ちゃんがいてくれないと困るんだ・・・その、なんていうか・・・」
「健君?私、どこにも行ったりしないよ?健君の事嫌いになったりしないし・・・。もう大丈夫だから、心配しないで?」
言いながら、零は自分の事を本当に心配してくれる人がいてくれる事が嬉しくて心の奥が熱くなる。自分で思っているよりもずっと、みんな自分の事を心配してくれているのかもしれない、とそう思うと苦しほどの幸せが心の奥に広がる。
「零ちゃん!俺っ!」
「キャッ!」
突然強く肩を掴まれた零がよろめき、健は慌てて零を抱きしめて体を支える。
「あ、ご、ごめんっ!あのっ・・・俺っ!」
健が何か言おうと口を開きかけた時、静かに向いの部屋のドアが開いてかおるが顔を出す。
「健、零ちゃんが嫌がる事をして謝りに来たのは立派だけど、筒抜けに聞こえちゃってるからそれ以上言うのはやめた方がいいと思うよ?」
少しあきれたような、怒っているような、あまり抑揚のない口調。かおるらしいといえばかおるらしく、らしくないと言えばらしくない。
「それに、」
かおるは自分の部屋を出て、零と健の方へ近づく。
「怯える姫君を守るのは僕の仕事だから、健は自分の部屋に帰ろうか?」
静かで穏やかなかおるの口調。それなのに従ってしまう不思議な力を秘めた声に健は何か言いたそうにしながらもごめんね、ともう一度零に謝ってその場を離れる。
「さぁ、いい子が寝る時間はとっくに過ぎちゃってるけど、」
かおるはいつものようににっこり笑って零に近づくと、そのままフワリと抱き上げる。
「ちょ!ちょ、ちょっ!!」
・・・い、いきなりお姫様抱っことかっ!
「零ちゃん、暴れると危ないって、いつも言ってるでしょ?」
・・・そういう問題じゃなくってっ!お姫様抱っこが異常事態なんですって!!
零ちゃんいい匂い、と髪に顔を近づけられて零はさらにパニックになる。
かおるはそんな零にはおかまいなしに零を抱き上げたまま部屋を横切り、途中ソファーの上で寝転んでいたクマのぬいぐるみを拾い上げるとそのままロフトの上に零とクマをおろす。
「姫君はそろそろ寝ないとね?一人じゃ眠れないって言うならいつでも僕の部屋へおいで?伊織と違って僕は紳士だからね。」
ただ、とかおるは少し考えるような表情を浮かべた後いつものようににっこりとほほ笑む。
「寝ぼけておはようのキスくらいはするかもしれないけどね。」
じゃあ、お休み僕の可愛い零ちゃん、とかおるはすっと顔を近づけて零の額に口付ける。
「明日の朝、お迎えにあがります、僕の姫君。」
優雅に一礼して部屋を出て言ったかおるの後ろ姿を、零は茫然と見送った。
相変わらず報われないお方がお一人・・・。
なんとなくそうなってしまっているって言うか。
おでこチュウ萌えますよね・・・。
って私だけか・・・スミマセン。




