↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつも君がいた  作者: 遙香
56/139

055:夏休みの課題・5

またまた間を開けてしまいました・・。

今回は駿君メインですー。

いいよね、イケメンよりどりみどり。

逆ハー最高。

 数学の課題に煮詰まった零は休憩にと深夜に食堂に下り、偶然居合わせた駿と思いがけず立ち話をすることになった。もともと背の低い零と背の高い駿が並ぶとかなりの身長差で、顔を見ようと思うと首が痛い、と零は内心思う。

「お前この夏、どこにも出かけてないのか?」

「・・・だって、課題終わらないし・・・」

・・・そ、そんな呆れた顔しなくったって・・・。

「人間の集中力の限界は90分なんだそうだ。数学ばっかりやってるから余計分からなくなるんじゃないのか、」

バカにされる事を覚悟していた零だったが、駿は意外にも少し微笑む。

「たまには気晴らしも必要だろ。明日俺買い出しに行くけどお前も行くか?」

「えっ?!いいの?!」

思いがけない駿の提案に一瞬でテンションの上がった零に駿は少し苦笑した。分かりやすいヤツだ、とわかってはいるものの、これだけはっきりと喜びの表情をされると誘った方が照れる。

「じゃあ明日な。昼過ぎに出る。たまには早く寝ろよ。お前夜な夜なうるさいんだよ。」

「え、うるさい?音楽の音とか、聞こえてた?ご、ごめんなさい・・・」

「違う、音楽じゃなくてお前が。時々、あーとかもーとか騒いでるだろ?」

・・・そ、そういえば・・・煮詰まり過ぎるとたまに声だすかも・・・。

「ご・・ごめん・・」

「・・・まぁ無駄に騒いでるわけじゃないからな。今日は早く寝ろよ。じゃあ明日。」



《じゃあ明日。》

軽く手を上げて食堂を出て行った駿の背中を見送って零は思わず胸を押さえる。今までほとんどまともに会話をした事のない駿と出かける事になった。お隣の部屋で、クラスも同じなのに、もしかすると一番何も知らない人。少し怖くて、でも困った時に黙って助けてくれる優しい人。二人きりになる事を最も想像できない人だけれど、零は不意に修学旅行の肝試しで抱きしめられた事を思い出す。

あの時は真っ暗な闇が怖くて何も考えられなかったけれど、大きくて暖かな手の温もりに、とても安心したことを思い出す。

・・・明日、楽しみだな。

零は心の中で呟いて、自分の部屋へ戻っていった。



 夏休みの課題に煮詰まっていた零を連れ出した駿は思いがけず二人きりになれる機会が訪れた事に少し感謝しながら、強い日差しに目を細める。真夏の太陽は容赦なく降り注ぎ半そでのシャツから出た肌を焼く。

「あー、これ可愛い!」

少し前から雑貨屋の中をあちこち歩き回って、使い道の分からない小物を見ては可愛い可愛いと楽しげに声を上げる零を見ていると思わずこちらまで微笑んでしまう。

「ねぇ、これカーテンレールに飾ったら絶対綺麗だよね!」

「・・・え?あ、あぁ。」

大きなクリスタルのような、キラキラと輝くオブジェ。ただ吊り下げておくだけの、《何の役にも立たないモノ》に見えるが零にとっては違うのだろうと思う。何度か零の部屋に入ったことがあるが、棚の上や出窓のスペース、ドレッサーの前などに使い道の分からないものたちがたくさん並べられている。

駿の適当な相槌にも零はそうだよね!と目を輝かせている。

「・・それって、飾り?」

「え?そうだよ。こういうのあると、テンション上がるよね!」

100%の笑顔で返されると、思わず言葉に詰まる。天真爛漫、と言うのが正しいのか、天使の様な、と表現するのが正しいのか、と心の中で思う。

「これ、買ってくるね!ちょっと待ってて。」

カウンターへ歩いていく零の後姿を見守りながら、駿は少し苦笑する。ほんの少し前、正確には昨日の夜まで、いつも少しおびえた目で見るだけで近づいてくる事のなかった零が今日は良くなついた子犬の様に笑顔を振りまいて側にいる。

 思えば、零を近づけないようにあえて壁を作っているのは自分なのに、本当はずっとこうやって側にいたかったんだと気付く。決して頼りないわけではない。頭も良く、自立心もある彼女だがなぜか目が放せなくて、なぜか守ってやりたくなる不思議な子。

 そんな事を考えながら、駿は精算を済ませて自分の方へ小走りに戻ってくる零に微笑みかけた。


 「ねぇ、久遠君って甘いもの好き?」

街を並んで歩きながら零が問いかける。ふと見ると、おしゃれなカフェ。

「いや・・・あまり。少し休憩するか?ずっと歩いてるしな。」

駿はそう言って、零の返事を待たずにカフェの中に入る。少し慌てたように後についてくる零の気配を感じながら、駿は少し苦笑する。きっと甘いものが好きではない、と言ったから気にしているに違いない。

席に案内されてテーブルの上のメニュー表を見る。センスのいい綺麗なケーキの写真がたくさん載っている。有名なパティシエの店と言う事もあり、店の中は女性客が多く混雑している。

「あっ、あのっ、」

案内された席に座ると、零は困ったような顔で駿を見る。

「何?」

次に零が言いそうな言葉は察しがついていたが、あえて尋ねてみる。あまりにも解りやす過ぎて、そんな零が可愛くて思わず笑みがこぼれる。

「あの、甘いもの、好きじゃないんだよね?」

ほらやっぱり、と駿は内心思う。さっき甘いものはあまり好きじゃない、と言った事を気にしているに違いない。

「佐倉は好きなんだろ?お前だけ食べればいい。俺はコーヒーが飲めたらそれでいい。かなり歩いたし、俺もちょうど休憩したかったんだ。」

駿の言葉に零がホッと安心したような笑顔になる。そんなに気を使わなくても、もっと思った事を言えばいいのに、と思う。これだけ可愛い子のわがままなら、大抵の男は皆喜んで聞くだろうと思いながら近づいてきた店員にオーダーを通す。

「あ、あのね!今日はありがとう。ずっと課題ばっかりだったから、すっごく楽しいの。」

テーブル越しに、少しはにかんだような零の笑顔。いつも横顔を見ていることが多いせいか、ひどく新鮮に見えて、思わず目を逸らす。いつもはストレートの髪をゆるく巻いて、ラフにまとめただけの髪、服装は涼しげなライムグリーンのチュニックに白のミニスカート。いつもと違う印象を受けるのは何故だろう。

「あ・・ご、ごめんね?久遠君の用事、まだ全然だよね?今日の買出しって、何を買いに行くの?」

零の問いかけに駿はハッとする。零を誘う口実にとっさに買出し、と言ったものの、別に買いたいものがあったわけではない。

「あ・・いや・・・」

どう誤魔化そうか、と思ったちょうどその時、オーダーしていたケーキと飲み物が運ばれて来る。

「わぁ、おいしそう!ねぇ見て!これ可愛い!」

零のオーダーしたカプチーノには泡で子猫の絵が描かれている。

「バリスタからの贈り物です。」

店員の言葉に零がカウンターの奥に目をやると、優雅にウインクする外国人バリスタの姿。深めの金髪に濃い緑色の瞳。零が嬉しそうに笑って小さく手を降ると、バリスタは満面の笑顔で投げキスをする。

「可愛いと何かと得するもんだな。」

「え?」

「周り見てみろよ。お前だけ、特別みたいだけど?」

駿の言葉に零が隣の席に運ばれてきたカプチーノに目をやると、そこには至って普通のカプチーノが置かれている。驚いた零がもう一度カウンターの奥に目をやると、外国人バリスタは嬉しそうな笑顔で零に手を振った。

「・・・何でだろうね?」

零の言葉に駿は思わず脱力する。これだけ周囲を惑わしておいて本当に自覚がないんだろうか?と時折不思議になる程この可愛いお嬢さんは何事においても鈍い。

「佐倉が可愛いから、あのバリスタが一目惚れでもしたんだろ。気を引くためのパフォーマンスってやつさ。」

「えっ?」

驚いて目を丸くする零を見て、駿は苦笑する。自分は基本的に洞察力には長けている方だと思うが、零の自分に対する自信の無さは驚くほどだ。

「お前、本当に鈍いよな?普通気付くだろ?」

「だ、だってそんなの急に言われたって・・・」

「一目惚れってのは急にするもんじゃないのか?」

「そ・・・そうだけど・・・」

少し困ったような表情で、零は呟き、いただきます、と手を合わせて見た目にも美しいケーキをほおばる。おいしい、と笑顔になる様子は見ているだけでひきこまれる。華の様な笑顔、というのはこういう笑顔の事を言うのだろうと思う。

「そんなにうまいのか?」

「うん!甘すぎないし、すっごくおいしいよ。・・・食べてみる?」

零は嬉しそうに笑いながらそういい、フォークでケーキを切り取って駿に差し出した。

「おっ、俺はいらないからっ!」

いつも冷静な駿が慌てるのを、零は不思議そうに見つめ、甘いもの嫌いなんだったね、と謝った。

「・・・お前さぁ、」

幸せそうにケーキを食べる零に、駿は苦笑交じりに声をかける。

「鈍いと言うか、天然と言うか、本当、面白いヤツ。」

「えっ?!天然じゃないよ!私なんか変な事した?」

「いや・・、別に。ただ、もう少し、考えてから行動した方がいいと思うだけだ。」

駿の言葉に零は少し首をかしげ、ハッとなって微かに頬を染める。

「お前が考えてる事は見てるだけでわかるから見てて飽きないな。もういい、言っても無駄だって事が良く分かった。」

声を立てて面白そうに笑う駿に、零は一瞬見とれる。

 ・・・久遠君の笑顔、素敵なんだ。

「俺はお前の、そう言うところ、好きだぜ。」

おかしそうに笑いながらそう言った駿の言葉に、零の心がドキン、と音をたてた。



今回はラブラブと言うよりは、ちょっとドキドキ感って言うか。そう言う感じにしてみました。

けど、私としてはあまあまが欲しいので、また壊れたようにらぶらぶ全開頑張りまーす!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。