053:夏休みの課題・3
前回いろいろと・・・不備があるまま投稿してしまいまして(^^ゞ
大変お見苦しくて申し訳ありませんでした・・・。
今回はかなり甘めですぅ☆
「ようやく、俺に頼る気になったのか?おせーんだよ」
・・・や・・・やっぱりやめとけばよかったかも・・・。
零は先日自分が英語の本を朗読した事で、思った以上に健がすんなりと英語を受け入れていたのを目の当たりにして、意を決して伊織に声をかけたのだが、予想していたとは言え、超上から目線でガシガシと頭を撫でられて早くも後悔していた。
零の部屋を訪れた伊織はソファーに腰を下ろして零の課題図書をパラパラとめくると、なるほどね、とニヤニヤ笑い、こっちへこいよ、と零を手招きする。
・・・自分の部屋なのに、この居心地の悪さってなんなんだろ・・・。
伊織がソファーに座っている事で零は座る場所を見つけられず、センターテーブルの脇にクッションを置いてその上に座ってみる。
「・・・んな警戒すんなって。」
伊織は立ち上がって零の側まで来ると、ひょいと零を抱えてソファーへ戻る。
「ちょっ、ちょっとっ!」
「まぁ落ち着けって、」
真っ赤になって慌てる零とは対称的に落ち着き払った伊織はソファーに座り、膝の上に零を座らせて後ろから抱きかかえるとその前で本を開いた。
「この方が、零は文字が追えるし、俺は大声で読まなくて済む。こういうのを一石二鳥って言うんだぜ?」
「でっ、でもっ!」
・・・こんなんじゃ落ち着かないよっ!
それでもとりあえず、顔が見えないから赤くなっていることはばれずに済みそうだと思っていると、伊織は零の耳元で小さく笑い、《Du bist schön.》と囁いた。
「えっ?今何て言ったの?」
「耳がピンク色になって可愛いって言ってんの。」
・・・もう、やだ・・・
伊織の言葉に撃沈する。こんな状況で、ドキドキしない女子なんていないよ!とキレたいところだが伊織にそう言う事を言うと余計に酷い目にあいそうで言葉を飲み込む。
「じゃあ、始めるか。」
伊織は何事もなかったかのように本のページをめくり、美しい発音のドイツ語で物語を語り始める。耳元で囁かれる伊織の言葉はいつものからかうような毒のあるそれではなく、穏やかな湖の様な暖かで落ち着いた静かな響きで零の耳に届く。文字だけを追っていた時はあんなにも苦痛だった物語が不思議と心に届いた。
物語は年若い男女の恋の物語。燃えるような想いを秘めた男性が主人公で、手の届かない高貴な少女に恋をする。会うたびに囁かれる愛の言葉に少しずつ惹かれていく少女の心。そして、二人の間に立ちはだかる身分の壁。
「Ich liebe dich sehr.(貴方を心から愛している。)」
物語の言葉だ、と分かっていても耳元で伊織に囁かれるとイヤでも心臓が跳ねる。この心臓のドキドキが伊織に伝わってしまうのではないかと思うと気が気ではなく、零は微かに身動ぎをした。
「・・・どうした?」
伊織は本に指を挟んで閉じ、背後から零に回した手にぎゅっと力を入れる。
「えっ?!な、なんでもないよっ、つ・・続けてっ!ちょ、ちょっとっ!」
「疲れたから、ちょっと休憩。」
伊織の言葉に時計を見ると、始めてからすでに二時間近くが経過していた。すっかり物語の世界に引き込まれていた零はハッとする。
「ご、ごめん、気付かなくって。私飲み物買ってくるからっ!」
伊織に抱きしめられている事にも、思ったよりも時間が過ぎていた事にも慌てた零は伊織の手を解いて立ち上がろうとするが、伊織の腕に拘束されて立ち上がれずに戸惑う。
「休憩だ、っつてんだろ。」
伊織は零を抱く腕に力を込めて零の耳元に頬を寄せる。
・・・ちょ、ちょ、ちょ、ちょっ・・・!何か、これって、すっごく、恋人同士みたいでっ!
冷静そうに見える伊織の体温がフッと高くなる。零は自分の耳に聞こえるほどに高鳴る鼓動が背中越しに伊織に伝わる事を怖れ、放して、と自分を抱く伊織の腕を掴む。
「イヤだね。」
頬と頬が微かに触れる距離。ドキドキが加速しすぎて何も考えられなくなる。
「Ich liebe dich herzlich.」
「・・・そっ、そんなのズルイよっ!」
「ん?ずるくて結構だね。俺は零を俺のものにするためなら何でもするぜ?」
「はっ、放してってば!」
「イヤだ。」
意識するほどに、半そでのシャツから伸びる伊織の腕の引き締まった筋肉や、線が細く見える割にがっちりした胸板が間近に感じられて零はカッと身体が火照るのを感じる。今では伊織の香り、とさえ思える柑橘系の香るさわやかなムスクの香りに包まれているとそれだけでどうしようもなく鼓動が乱れた。
「零、好きだ。どうして俺じゃダメなんだ?」
耳元で囁かれる伊織の声。顔が見えないだけにその哀しげな響きが零の心に刺さる。ダメ、な理由などない。
「だ・・ダメとか、そう言うんじゃなくって・・・」
「ダメじゃないなら俺にしとけよ、」
「だ・・だからっ!そんな、急に・・・」
「急じゃねーだろ、俺はいつも言ってる。」
「・・・・」
・・・そうだけど、そうだけど!伊織君の好きは、本気かどうか、分からないんだもん・・・。
そう思った零は、少なからずハッとする。本気かどうか分からなくて、不安だから・・・?
「零、お前、こういうのは嫌か?」
「え・・?」
「俺は好きなヤツとはいつも一緒にいたいと思う。いつも側にいて、触れていたいと思う。大切な人が苦しんだり辛い目に合わないように、一番近くで守りたいと思う。でも、零が嫌なら仕方ない・・・」
ぎゅっと抱きしめる腕に力がこもり、耳元で紡がれる切ない声に零の心が悲鳴を上げる。
「いっ、嫌じゃないよ。私だって、好きな人には側にいてほしい・・・」
「・・・言ったな、合意の上だからな?もう文句言わせないぜ?」
「え?!えっ??」
伊織はニヤニヤ笑いながら零の首筋に鼻をすり寄せて、真っ赤になって慌てる零を見ておかしそうに笑う。
「だから、お前は可愛いって言ってんの。」
ほら、本の続き、はじめるぞ、と伊織は楽しげに本を広げ、流暢なドイツ語で物語を紡ぎ続けた。
こんな風に、読んでもらったら(*´q`*)やばい。
気絶する自信がある。えへへ((´∀`*))
次回は零と健です☆




