052:夏休みの課題・2
今回も引き続きオールスターです☆
洋書のタイトルは、フィクションですぅr(^ω^*)))
《何もないと思うけど、部屋のドアは開けておくようにね。》
かおるに言われた通り、零は部屋の外開きのドアを開け、閉まってこないようにストッパーをかける。部屋で二人きりになる、と言えば確かにそうだ。
「零ちゃん、お待たせ!」
いつもの100%スマイルで健が開いたままのドアをノックする。手にはノートと英語の分厚い本。
「あれ?辞書要らないの?」
「零ちゃん辞書持ってないの?」
「・・英英辞典ならあるけど・・・英和辞典は持ってないんだ。」
「すっげ、マジでネイティブ並みなんだ。ちょっと借りて来るわ。かおるー!!」
・・・相変わらず、元気いっぱいだな、健君・・・。
健の様子を見て、零は思わず微笑む。
「・・・相変わらず健は騒々しいね。何か用?」
めずらしく、明らかに少し不機嫌そうなかおるの対応に零は少し驚きつつ、部屋の中から小さく手を振ってみる。かおるは目を上げて零の姿を認めると、いつもの様ににっこりと優しく微笑みを浮かべた。
「いや、英和辞典借りようと思ってさ。零ちゃん持ってないって言うから。」
「あぁ、そうだろうね・・・はい、どうぞ。なんなら僕も参加しようか?零ちゃんの綺麗な発音を僕も聞いていたいし。」
「じ、邪魔すんなよっ!せっかく俺が苦労して・・・」
「邪魔はしないけど、少しでもおかしなマネしたら、どうなるか分かってるよね?」
「お、おかしなマネって、伊織と一緒にすんじゃねーよ!」
ならいいけど、とかおるは健に辞書を手渡し、零に向かって微笑む。
「零ちゃん、少しでも健がおかしなことしたら、大きな声出すんだよ。」
「しねぇっつてんだろ!」
・・・かおる君って時々本気なのか冗談なのかわかんないな・・・。
「じゃあ、始めよっか!私、ゆっくり読むね。だから、健君は後で感想文が書けるように訳しながらノートにメモを取ってね。」
本のタイトルは《Freedom on the other side of the wall》壁の向こうの自由、日本語で読んでも難しそうだな、と零は読みながら思う。
健がリスニングは得意だ、と言ったのは本当の様で、ゆっくりと読み進めると途中で辞書を引くこともなくノートにメモを取っている。別に英語が苦手なわけじゃないんだな、とよそ事を考えながら読んでいると不意に視線を感じて目を上げた。
「い・・伊織君・・?」
「俺に気にせず、続けろよ?面白そうな内容だから聞きに来ただけだ。」
「・・気になるんだけど。」
「僕も仲間に入れてもらっていい?いい本だね、それ。」
「・・・かおる君まで・・・」
「俺も内容を知りたい。」
「くっ、久遠君・・・」
「はい、零ちゃん続きよろしくね。」
・・・・・もう、結局みんな集まっちゃったよ・・・。何か人数が多いと読みにくい・・・。
本の内容は、壁で別たれた東西ドイツを題材にした悲恋の物語。人と人が対立する哀しさ、戦う事の愚かさ、自由や愛の尊さを壁と言う無機質なもので表現していて引き込まれる。どんなに想っても届かない想い。言葉さえも届けられない苦しさ。冷たい壁に遮られたほんの一メートル足らずの距離が全てを別つ現実。
「・・・ちょっと、休憩にしようか?」
読み進めていくうちに、すっかり感情移入していた零の声が少し悲しみに震えたのを感じたかおるが、物語を遮る。
「・・・うん、そうだね。」
・・・危ない、もうちょっとで泣くとこだった・・・。
ふぅ、と息を付いて時計を見ると時間は12時前を指している。本の残りは後20ページ程度。これなら後数分で読破できそうだな、と零は小さく微笑んだ。
「私、お水買ってくるね。みんなも何か飲む?」
「あ、俺、行ってくるよ。読んでもらってるから、お礼に。」
「じゃあ俺コーヒー頼むわ。ブラックで。」
「僕もお願い。」
「俺も」
「なっ、何でお前らの分まで買ってこなきゃいけねーんだよ!」
「健の課題に付き合ってやってんだ。あたりまえだろ?」
「そう言うこと。」
なんだよ、と文句を言いながらも健は部屋を出て行く。その様子を見て結局みんな仲良しなんだな、と零は少し嬉しくなって微笑む。
「どうしたの?零ちゃんなんだか嬉しそうだね?」
ずっと読んでたけど、疲れてない?とかおるは零を気遣いながら微笑みかける。
「みんなが仲良しだから、見てて嬉しくなっただけ。」
「仲良し?俺たちが?冗談じゃねぇよ、なぁ?」
「・・・俺はどっちでも?」
「僕は仲良しだと思ってるけど?」
「俺は零とだけ仲が良けりゃそれでいいんだよ。」
小説読みながら泣きそうになって可愛いやつ、言いながら伊織はソファーに座っていた零の隣にひょいと座って肩を抱き寄せる。
「なっ、泣きそうになんかなってないしっ!」
慌てて否定するが、ばれていたと思うと恥かしくて顔が火照る。かおるが休憩と言って止めてくれたのもきっと、泣きそうになっている事に気付いてくれたからかもしれない、と思う。
「そうやって赤くなって否定するあたり、ホント可愛いんだよなぁ、零は。泣きたい時は泣いていいんだぜ?俺が慰めてやるから。」
零を自分の膝の上にのせる勢いで抱き寄せた伊織は間近に零の瞳を覗き込む。
・・・ちょ、ちょ、ちょ、ち、近い!近いって!
近すぎて焦点があわせられない程近づいた伊織に零は思わず硬直する。
「伊織、やりすぎだ、」
駿の不機嫌そうな声に伊織はニヤリと笑い、零を抱き寄せたままで言う。
「俺が俺の好きな女を口説いて何が悪い?」
「口説くのと無理強いするのは違うだろう、」
「へぇ?無理強いねぇ。これが無理強いしてるように見えるか?」
言って、腕の中で大人しくしている零を指す。
「・・・私、諦めてるだけだよ?」
指差された零は少しむっとして伊織を睨む。最初は心臓が止まるほど驚いたりしたが、慣れたというのもある。強引で、時折怖く感じる事もあるが基本的に優しくて困っている時にふらりと現れて助けてくれたりする事に零は気付いていた。
「まぁそう言うなよ、零。そのうち、こうされないと淋しく感じるようになるさ。」
伊織は余裕の笑みでそう言うと、これ以上やってるとあいつらに殺されそうだ、と明らかに怒りの表情を湛えているかおると駿を見て零を解放して部屋を出て行った。
久しぶりに連日更新できました((´∀`*))
次回は零と伊織です。




