050:届いた手紙
今回はお手紙、のみです。
夏休みの初日にかおるとプラネタリウムに出かけて以来、零はほとんど部屋にこもって鬼のような課題と格闘する日々を送っていた。昼間は数学、夜はドイツ語、気がつくと深夜になることも多い。
零ちゃんに手紙が届いてるわよ、と寮母さんに手渡された一通の手紙。差出人の名前はなく、美しい流れるような文字で書かれた宛名。手紙なんて珍しいな、と思いながら零は部屋に戻って封を切った。
『突然の便りに驚く君の顔を想うと幸せな気分になれる僕がいる。
ぼくの心にはいつも君がいて、
君の幸せを願っている。
時が過ぎ、時代が変わっても絶対にこの想いは変わらない。
君に出逢えた偶然は必然で、その必然を運命と呼べるのなら
僕はその運命に従って生きる。
今と言う瞬間に一生懸命向き合う君の姿が
僕と共にあればと願う。
今と言う瞬間は未来でもあり、過去でもあるから。
今この瞬間は最も新しい未来で、
今この瞬間が重なって過去を作る。
だから、そんな今を君といたい。
僕の全てに、いつも君がいるように、
僕の思い出の全てに いつも君がいるように。
この命を捧げて君を守りたい。一人ぼっちにならないように。
ほんの一瞬でも、一秒でもいい、
君が僕を見てくれるなら、その瞬間のために僕は生きる。』
淡い桜色の便せんに美しい文字で書かれた短い、詩の様でもある手紙。
・・・あの、本のメモと同じ・・・?
零の脳裏に、図書館で借りた本に挟んであったメモの記憶が蘇る。
美しい文字で綴られたラブレター。熱くて切なくて心の奥をしめつけられる。こんな風に思われたらどんなに幸せだろう、と心が温かくなった日の事を思い出す。
転校してきたばかりだったあの日に読んだあのメモが自分宛だったとは思えないけれど、心臓がドキン、と高鳴る。零がここにいる事を知っている人。図書館の本にメモをはさめる人、この学校の生徒であることは間違いない。
・・・誰、なんだろう・・・?
見たこともない、誰かも分からない差出人の事を思う。きっと、ロマンチストで繊細で、とても情熱的な人なのだろう。
・・・会って、みたいな。
ラブレター、と言うよりは恋文、と言うほうがぴったり当てはまる手紙。持っているだけで一人じゃないと勇気付けられるような気さえしてくる。いつも見守ってくれている誰か。それが誰でも、その人が側にいてくれたらきっと幸せだろうと思う。
不思議と高鳴りはじめた心に戸惑いながら、零はそっと手紙を抱きしめた。
恋文・・・。
メールじゃなくて、手紙。
しかも字が綺麗。NICE!




