042:パーティー・2
お父様暴走中(笑)
「かおる、捜したぞ・・・零ちゃんも、こっちへおいで、」
フィアンセを避けて、再び会場に戻った二人をみつけたかおるの父親は満面の笑顔で二人を引き連れてパーティー会場を抜け、ロビーのソファーに零を座らせる。
「主賓が抜けて、いいんですか?」
かおるの問いかけを完全にスルーした崇はソファーに腰を下ろした零の足元に跪くと零の手を握ってうっとりと零を見つめる。
「本当に美しいお嬢さんだ。このまま時間を止めてしまいたい、」
「えっ、あっ、あの・・・」
「お父さん、そんな事をするために会場を抜けたんですか?!」
かおるの声に混じる怒りの感情に崇はフゥと息を吐き出し、再び零の手を握りなおす。
「零ちゃん、零ちゃんの夢はなんだい?」
「えっ?私の?!」
・・・かおる君のじゃないの?!
驚いた零が言葉に詰まって崇を見つめると、崇は一層目じりを下げてニコニコと微笑む。
「そんなに見つめられたら、その気になっちゃうから。」
「お父さん!」
見かねたかおるが崇の肩を掴んで零から引き離す。
「そんなに怒らなくてもいいじゃないか。おまえ独り占めする気か?」
「独り占めも何も、零は僕の恋人です。」
・・・何か、すごい恥かしいんだけど・・・。
「お前がなぁ?もったいない、本当にもったいない・・・」
「お父さん?話がないなら僕らはもう失礼しますよ?」
「まぁ待て、私は零ちゃんの話を聞きたいんだ、」
かおるは諦めて小さく溜息をつき、ベンチに座っている零の肩にそっと手を置く。
・・・夢、なんて人に話すの初めてなんだけど・・・。
零は内心思いながら、にこにこと笑いかける崇を見て話し始めた。
「私の夢は、NASAで宇宙開発の研究者になる事なんです、」
星を人口的に作り、人類を移住させる事の出来る新しい星を作る研究や、地球をボーダーレスに調査できる探査衛星、遙か天空に輝く星々の構成要素や歴史など、宇宙に対する興味は尽きない。
好きな事を話しているうちに零はパーティー会場にいる事を忘れてしまっていた。
「素晴らしい夢だ。NASA希望と言う事は、ハーバードを?」
「はい、」
「それならかおるも同じじゃないか。再生医療の研究を、するんだろう?」
「そっ、そうだけど、」
崇と同じく零が楽しそうに話すのを聞いていたかおるは不意に自分の話題を振られ、らしくなく動揺する。
「いいじゃないか、二人で同じ大学へ進学して、それぞれの夢を叶えて大きくなって帰ってきたらいい。」
「えっ?!」
「但し、一つだけ条件がある。」
「零ちゃんは必ず、年に一回・・・いや、二回・・・いや、三回は帰国して我が家でパーティーを開く事、」
「お父さん?!」
「約束通り、発表は延期する。こんなに可愛いお嬢さんを見せ付けられたらダメと言えないだろうが、」
・・・何か、話がよく見えないけど・・・・
「零ちゃん、もう一度聞くけど、かおるじゃなくて私を選んでくれたっていいんだよ?」
「お父さん、いい加減にして下さい、これで零に振られたら僕は一生恨みますよ?」
「私としては、お前を振って私のところに来てくれるのが最も素晴らしい選択だと思うんだがね、」
ねぇ、と笑いかけられて零は言葉に詰まる。
「とにかく、フィアンセの件はなかった事にしておくから、心置きなく再生医療を極めて来い。」
「・・・いいんですか、」
「いいから言ってるんだ。さぁ零ちゃん、一曲私と踊ってくれないか?」
優雅に腰を折ってダンスを申し込む崇に零は戸惑う。ダンスなどしたことがないし、いろんな意味で注目されるのも怖かった。
「お父さん、念のために申し上げますが、零は貴方が望むような作法の教育を受けて育っているわけではありませんよ、」
「そんな事、見れば分かるさ。そんな事は問題じゃない。今から学べば済む事だ。
ねぇ、零ちゃん、と鼻の下をのばして零に笑いかける父親にかおるは溜息を付く。
・・・・ダメだ、これじゃただのエロオヤジじゃないか。
「とにかく!ダンスをするのは僕です。零は僕の恋人ですから、」
かおるはそう言って半ば強引に零の手を取ってパーティー会場に戻っていった。
「・・・ごめんね、零ちゃんいろいろ驚いてるよね、」
僕に任せておけば大丈夫、と言われた通り、ゆったりとした音楽にのって踊る。ダンスなど初めてだったが、かおるのエスコートは完璧で、一応それなりに踊れているかも、と零は内心思っていた。
「あっ、で、でも良かったんだよね?かおる君、好きな事していいって言われてたし、」
・・・さっきの結論って結局、かおる君はハーバードへ進学して、再生医療の研究をしていい、ってコトだよね?
「・・・そうだね。」
ずっと心にひっかかっていたフィアンセの存在も、父がなかったことにしてくれると言う。おそらく、ただ単純に、父が零に一目ぼれをした結果そうなったのだろうが、理由はどうあれ結果はかおるの望むとおりの未来になった。
ただ一つ、零と自分の関係を除いて。
「零ちゃんのおかげで僕の未来が開けた。君は、僕の恩人だ。」
パーティー会場のダンスフロアの真ん中で思い切り、抱きしめたくなる衝動を抑えてかおるはそう言うと、照れたように笑う零ににっこりと微笑みかけた。
うーん、フィアンセ可哀想だけど・・・。
一回しか会った事なくても次あったら超かっこよかったら惚れるよねぇ。




