034:伊織について
伊織君のお話ですー。少しずつ皆さんの素性を明らかに・・・(笑)
たくさんの思い出を残して高校生活最大のイベント、とも言える修学旅行が終わり、またいつも通りの学園生活が戻ってきた。6月初旬に予定されている実力テストに向けて生徒達は皆それぞれ課題に取り組んでいる。
零は相変わらず苦手な数学と慣れないドイツ語に頭を悩ませながらも、教室に残ってテスト勉強をしながらクラスリーダーとして企画を頼まれている6月下旬の体育祭の種目について考えていた。
・・・やっぱりクラス対抗種目とか、必要だよね。・・・そう言えば、みんなはスポーツ得意なのかな?健君は得意そうだけど・・・。他のメンバーってスマートすぎて何となく想像できないな。
かおる君はフェンシングとか似合いそうだけど、と想像して零は思わず笑う。イメージ的に、駿は弓道、伊織は・・・
「伊織君って、スポーツって言うより、拳銃持ってそうなイメージがあるんだけど、」
と呟く。
「なんだそれ、俺は殺し屋か、」
「・・・ッ!」
突然背後から声をかけられ、零は叫びそうになった口を押さえる。
「い、伊織君、いつからいたの?」
「さっきから。お前が妖しげな事を妄想してニヤニヤしてるのを見てた。」
「もっ、妄想って・・・。体育祭の種目を考えてただけだよ、」
「それで俺が拳銃を持ってるって話?」
「ち、違うけど・・・。」
まぁいいけど、と伊織は意地悪く笑って零の前の席に座る。
「お前ドイツ語専攻してんだろ?俺、ドイツ語ペラペラなんだけど、」
零が辞書を片手に訳している課題に目をやった伊織は零の机の上に肘をついて探るように零を見る。
「えっ、そうなんだ。」
「俺、ドイツ帰りだから。」
「へぇ・・・」
・・・そうなんだ、初めて聞いた。そういえば、私みんなのこと全然知らないな。
零は心の中でそう思いながら、出されている目の前の難解な課題に溜息を付く。
「教えてやってもいいぜ、」
・・・結局上から目線は変わらないんだ。
教えてほしいけど教えてもらいたくない、と思ってじっと伊織の顔を見ていると、伊織は急に笑い出し、零の頭をガシガシと撫でた。
「おまえってさぁ、何にも聞かないのな。一般教養棟の女どもは根掘り葉掘り何でも聞きたがって群がってうっとおしいけど、お前、興味ないの?」
・・・興味、って・・・。
「だって、話さないことは言いたくないことなんじゃないの?別に聞きたくないわけじゃないけど、聞き出そうとは思わないし・・・。」
・・・私にだって、聞かれたくない話もいっぱいあるし、と心の中で呟く。
「思わないし、なんだよ?」
探るような伊織の目に零は戸惑う。
「それぞれみんな、育った環境とか、いろんな事情とか、あると思うけど、どんな人かって言うのは直接会って話して理解するものでしょ?」
零の言葉に伊織は少し驚き、小さく笑う。
「お前には聞いてほしいと思ってるヤツ、結構いると思うぜ?今更言いたくても言い出せないって事もあるだろ?」
「伊織君は?」
「俺?聞きたいなら話してやってもいいぞ、」
「・・・別に無理に話してくれなくていいよ。聞いても聞かなくても伊織君は伊織君だし、」
「話してやるっつってんだ、おとなしく聞けよ、」
「話したいなら話したいって言ったらいいじゃん・・・もう髪くちゃくちゃにしないでよ!」
零がガシガシと頭を掴む伊織の手を避けて睨むと、伊織は大げさに怖がって見せ、いつもの毒のある意地悪な笑みを浮かべた。
「俺、高花財団の跡取りなんだぜ、」
「え、そうなの?御曹司?」
「まぁ、そうとも言うな。」
「御曹司がドイツ帰りで海外進学するの?」
「ドイツ帰りは置いといて、海外進学は社会勉強のためさ。国際経営学を学びに行く。」
いつもの意地悪な瞳ではなく、未来を見据えるような鋭い瞳に零は思わず見惚れる。こんなにもはっきりと未来を語れる人を初めて見た。
「俺が拳銃持ってそうってのは案外当たってるぜ。俺は身を守るための護身術と射撃の訓練を受けてるから、」
へぇ、と目を丸くする零を見て伊織は笑う。
「いざとなったらお前の事も守ってやる。」
「ねぇ、」
「何だよ、」
「私、御曹司って、初めて見たけど、御曹司って言うともっと品がよくて、かおる君みたいな人を言うと思ってたんだけど、案外違うんだね、」
「・・・お前さ、ホント面白いよな?まぁ、アイツは完璧だからな。俺はアイツの真似はできねーよ。」
「アイツって、かおる君のこと?」
「それ以外に誰がいるってんだよ。アイツほど完璧なヤツ俺だって初めてだし、ちょっと同情もするけどな。」
「同情?」
「まぁ人それぞれ事情があるって事さ。知りたいなら直接本人に聞けよ。」
伊織はそう言って席を立ち、まだ帰らないのか、と問いかける。
「うん・・・部屋に戻ると集中力が欠けるって言うか・・・」
「だから、ドイツ語なら教えてやるから、今日は帰れ。もう暗くなるぞ、」
窓の外を見ると、いつの間にか夕闇が迫っていた。寮では集中できないからと無理に先に帰ってもらったかおるも心配しているに違いないと思った零は素直に従い、伊織と共に教室を後にした。
登場人物の名前を決めるのも悩むけど、タイトルつけるのも悩むんです・・・。
今回いいタイトル思いつかずに・・・中途半端なタイトルで済みません・・・・。




