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いつも君がいた  作者: 遙香
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027:飴と鞭?

今回は伊織と零のお話です。

 ある日の放課後、かおるが職員室に呼び出されたため教室で一人になった零はここぞとばかりに集まってきたクラスメイトに囲まれていた。

週末の約束を取り付けようとしたり、携帯番号の交換をしようとしたり、ちょっとした小競り合いが起こるほどで零は改めてかおるの存在の大きさを思い知る。

「あ、あの、ちょっと・・・」

小柄な零は男子生徒達に取り囲まれて身動きがとれず、どうやって脱出しようかと悩んでいると、フワリ、とムスクの香りと共に伊織が現れた。

「零、行くぞ、早く来い。」

・・・イキナリ呼び捨て?

内心、そう思いながらも伊織の出してくれた助け船に乗る。

「あっ、ごめんっ!ごめんね?みんな、私もう行かなきゃ!」

慌ててかばんを掴み、伊織の方へ歩み寄ると、クラスメイトから伊織を非難する声が上がる。

「伊織、お前何様だ?」

喧嘩っ早くていつもどこかしら怪我をしているクラスメイトの滝沢が伊織に詰め寄る。

「何様、って零の彼氏。何か文句ある?」

「かっ、彼氏ッ?!」

「ち、違うよっ!伊織君、いい加減な事言わないで!」

クラスメイトの反応に焦って否定しても伊織は余裕の表情を浮かべる。

「そのうち彼氏になる、なら問題ないか?」

そう言って伊織は零の顎を掴んで顔を覗き込むと、ニヤリ、といつもの毒を含んだ笑みを浮かべる。

「も、問題ですッ!」

零は赤くなって伊織の手を振り払って教室を出た。


「・・まぁそう怒るなよ、お姫さん。助けてやったんだから感謝しろよな。」

伊織の行動に怒って早足に歩く零を大股でゆっくりと追いかけながら伊織はそう言い、別に黙って見てても面白かったんだぜ、と付け加える。

「・・・あっ、あれは・・・。ありがとう・・・」

不本意ながら、自分一人ではあのクラスメイトの輪から抜け出すのは相当困難だったろうと思うと、伊織の助け舟はありがたかった。

「素直でよろしい、」

伊織はそう言って零に追いつき、頭を撫でる。

「ちょっ、それやめて!」

かおるにも頭を撫でられた事があったが、それとは違い、何故か嫌悪感を覚えた零は伊織を睨む。

「零、」

「呼び捨てにしないで、」

「どうして?」

「どうしてって・・・

「理由がないなら別にいいだろ?

「だ、ダメだよっ!イヤなんだもん。

「だから、どうして?

「と・・特別な人みたいだからイヤ。」

「特別だろ?お前は俺の女なんだから、」

毒のある瞳。どうしてこんな目でこんな風に見つめる事ができるんだろう。背筋がぞくぞくするような居心地の悪さを覚える。

「違います。」

零は伊織から視線を逸らし、その場を逃れようと早足になるがあっさりと伊織に腕をつかまれる。

「俺はこんなにもお前の事を想っているのに、お前は俺の事を見てもくれないんだな、」

「えっ・・・」

いつもの毒のある、自信に満ちた瞳ではない、不安に揺らぐ瞳に見据えられて零は絶句する。こんな頼りない表情の伊織は初めて見た。

「そんなに、俺のことが嫌いか?」

「えっ、き、キライじゃない、けど・・・」

「じゃあ、そんなに避けるなよ、」

「さ、避けてない・・・」

風が零の髪をもてあそんで通り過ぎ、フワリと辺りにムスクの香りが漂う。

「俺の事、避けないって、約束して。」

「えっ?!

掴んだ腕を強く引き寄せられ、零は伊織の腕の中に倒れこむ。

「約束しないなら、離してやらない、」

見上げると、いつもの毒を含んだ瞳にぶつかる。

「や、離してッ!

校舎から寮へ戻る途中の道の真ん中で思い切り抱きしめられた零は恥かしさで真っ赤になってもがいたが、しっかりと抱きすくめられた腕からは逃れられず、伊織は小さく笑う。

「お前って、単純。そんなんじゃすぐに騙せそうだな、」

「なっ、何でそんな事するの?!」

「何でって、お前の事を手に入れるために決まってんだろ?」

「私、意地悪な人はキライなのッ!」

零の言葉に伊織の動きが止まる。

「・・・そうか、嫌われてるなら、仕方ないな。」

ポツリ、と呟いて、零を抱きしめていた腕を離す。再び伊織の瞳から自信に満ちた光が消え、悲しみを宿した瞳が地面をうつろう。

零から距離を置いてゆっくりと歩き出した伊織を、零は戸惑いながら慌てて追いかける。

 ・・・これって、またフェイクだよね?またさっきみたいに・・・

零はそう思いながらも、《キライ》と言うキーワードを出してしまった事を後悔していた。《キライ》といわれて傷つかない人などいないはずだ。何よりも、自分が一番その事を知っていたはずなのに。

「ごっ、ごめん、伊織君、そのっ、私・・・」

伊織の背を追いかけながら零は声をかける。

「いいよ、無理しなくて、」

前を歩く伊織から呟くような返事が戻り、零は軽率な自分を責める。

「ごめんなさい、もう避けたりしないって約束するし・・キライなんて嘘だからっ!」

零がそう言うと、振り向いた伊織の瞳はまたいつもの毒を含んだ強い瞳で・・・。

「その言葉、忘れんなよ、お姫様?」

・・・だっ、騙されたっ・・・。

俺様キャラって、私は好きなんですが。硬派と俺様は私的ツボでして。硬派な人や俺様な人が見せる優しさにやられる私。

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