028:修学旅行・1
修学旅行編は全部で5部くらいに分ける予定ですっ
5月のよく晴れた日に私たちは待ちに待った修学旅行に旅立った。一番人気はやはり韓国で、沖縄行きのメンバーは数十人。運良くか悪くか、引率の中に竹川先生の姿もあった。
「おう、お前ら揃ってどこへ行くつもりなんだ?」
4泊5日の沖縄旅行。すでに修学旅行という名の卒業旅行に近い零たちの計画では離島へ渡ってのんびりと海で遊んだり、琉球グラスの工房で思い出のグラスを作ったりする予定で埋まっている。
「沖縄と言えば、肝試しだろう?お前ら離島へ渡るなら打ってつけのスポットがあるから連れて行ってやるよ、」
竹川先生はそう言って、お前らだけを単独行動させるような危険な真似はさせないからな、とニヤニヤ笑いながら搭乗手続きをしに行ってしまった。
「何だよ竹川の野郎、」
邪魔すんな、と健は竹川の背中を睨む。
「零ちゃん、荷物、持ってあげる。」
「あっ、大丈夫だよ。自分の荷物くらい持てるし・・・」
「女の子が大きな荷物を持ってるのを黙って見てられないから、お願い、それ、貸して?」
かおると零のいつものようなやり取りに駿は呆れたような溜息をつく。
「それにしても、お前らが揃うとヘタな芸能人よりオーラあるんじゃねぇの?」
搭乗手続きを終えた竹川はそう言いながら零たちのところへ戻ってくると、ポンポン、と零の頭を叩く。
「なっ、何ですか、いきなり!」
零が両手で頭をかばって竹川をにらむと、先生は面白そうに声を立てて笑う。
「白金台高校のイケメン人気ランキング上位4人が集まればそりゃあ目立つわな。」
それにこのお姫さんがいるからなおさらだ、と竹川はさらに零の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
「竹川、お前いい加減にしとけよ!嫌がってんだろ、」
零の隣にいた健が髪を乱されて顔をしかめている零をかばうと、竹川は減るもんじゃねーのに目くじら立てんな、とおよそ教師とは思えない発言をして笑い、遅れんなよ、と言いながら搭乗口へ歩いて行った。
「着いたー!」
数時間のフライトの後、沖縄の地へ降り立った一行は5日後の搭乗2時間前までに空港へ集合する事、と言うきわめてアバウトな指示を受けて解散となり、各々自分達で決めた行き先へ散っていく。前半の3日間を離島で過ごす予定の零たちはフェリー乗り場までタクシーで移動し、ちょうど出発間際だったフェリーに飛び乗った。
「潮風、気持ちいいね」
甲板の上に出ていた零は隣にやってきた伊織に声をかける。
「あぁ、天気もいいし、楽しくなりそうだ、」
空を見上げて目を細める伊織を見上げる。何となく、伊織に青空は似合わないと思っていたが、案外似合うんだな、と思って小さく笑う。
「何だ、人の顔を見て笑うな、」
「ご、ごめん、別に笑ってないよ。」
「ウソつけ、」
「・・・・ッ!ついてないッ!ついてないよっ!」
顎をつかまれて零は慌てる。いつもの毒のある瞳に見据えられるとどうしようもなくドキドキしてしまう。
「何故笑ったか言えよ、」
顎を掴んだままスッと顔を寄せる伊織に零は慌てふためいて言い訳を考えるが、諦めて素直に思っていた事を告げると伊織の瞳がさらに妖しい輝きを増す。
「人をヴァンパイアみたいに言うんだな?ならお望みどおり、首に噛み付いてやろうか?」
開いている手で零の腰を引きよせ、顎を掴んだまま首筋に顔を寄せる伊織に零は慌てる。
「エッ?!やっ、そう言うんじゃなくってッ!
「伊織、佐倉から離れろ、」
静かな怒りを湛えた駿の声が響き、伊織は零の顎を掴んでいた手を離して声のした方を振り向く。
「ナイト様はどうした?その役目、いつもならかおるだろ?」
「・・・知るか、そんな事。」
「へぇ?優等生の駿がねぇ?」
伊織はそういってニヤリと笑うと思い切り眉間に皺を寄せた駿の肩を叩いて零に聞こえないようにその耳元で呟く。
「お前みたいな堅物でもこの姫さんの虜になるんだな、」
「・・適当な事を言うなッ!」
肩に置かれた伊織の手を払いのけた駿はそのまま船室へ降りていく。二人の様子を見ていた零はいつもの事ではあったが少し心がふさぐ。
「ねぇ、伊織君、せっかっくの旅行なのに、ケンカしないで?」
・・・また久遠君、怒っちゃったよ・・・。
「ケンカなんかしてないぜ?アイツが勝手に怒ってるだけさ。」
「でも怒らせたんでしょ?」
「まぁな。・・・悪かったよ。そんな顔すんな。」
「・・・伊織君も謝ることあるんだね、」
「何だそれ?俺が謝ったら悪いか、」
「ちょっと意外だっただけ。」
「悪いと思ったら謝るさ。さっきお前、泣きそうな顔してたからな、」
ふわり、と伊織が優しく微笑む。
「え・・・?」
「俺だって、お前は笑ってるほうがいいと思うさ。泣かれたら困るしな。」
そう言って伊織は照れたような笑顔になったが、またすぐにいつもの挑戦的な、自信に溢れた光が瞳に宿る。
「俺といると、楽しいだろ?優しいだけのかおるとか堅物の駿とか、ワンワン犬みたいな健より俺がいいと思わないか?」
「・・・よく、わかんない。」
「なら、分からせてやろうか?」
不意に零の腕を引き寄せ、顔を間近に寄せて耳元で囁く。
「・・・伊織ッ!てめぇ何やってやがるッ!」
「あぁ、ワンワンうるさいヤツが来た。」
続きはまた今度、と伊織はいつもの毒のある微笑みを残して甲板を後にした。
沖縄いきたーい。イケメン達といけたらどんなに楽しいでしょうかねー。




