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いつも君がいた  作者: 遙香
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025:歓迎会

本日2回目っ!お休みだしー。頑張りました(笑)

ポイントつけて下さっている方、お気に入り登録して下さっている方、超テンションあがります☆ありがとうございます☆

 教科毎に出された大量の課題と共に初めての週末が訪れた。さすが超進学校だけあって出される課題のレベルもかなり高い。土曜の夜に、と健が計画してくれた零の歓迎会は零以外の皆で準備をしてくれているようで、零は一人部屋で課題を進めていた。

得意な物理、科学、歴史、古典、現代文などはすぐに片付くが、あまり得意でない数学の超ハイレベルな問題と耳慣れないドイツ語に頭を抱える。息抜きをしようと、授業には出ていないが課題だけ出される英語のプリントを開いて溜息を付く。英字新聞を読んで、訳すだけの、零にとっては文字通り朝飯前の課題。

物の数分で訳してしまうと、再び数学の問題に向き合った。

 ・・・数学は閃きだって言うけど・・・一回詰まるとなかなか閃かないんだよな・・・

部屋を広く使うためにデスクを置かず、センターテーブルで勉強している零はそのままゴロン、とラグの上に寝転ぶ。そのままの姿勢で窓の外に目をやると、空が夕暮れの色に染まり始めていた。

朝からずっと課題に取り組んでいた零は昼食さえ食べに行く事を忘れていた自分に気付く。もともとあまり食に執着がある方ではなく、食事を抜いてもあまり苦にはならないが、ここに来てからはいつも誰かが呼びに来てくれて一緒に食べる事もあり、食事を抜いた事はなかったが、今日は皆何かと忙しかったのだろう。

フゥ、と大きく息をついた零はふと携帯の着信ランプが光っている事に気付いて携帯を見ると、お昼過ぎに健からの着信があった。

 ・・・私、携帯音切ってたんだ・・・。

気付かずに悪い事しちゃったな、と思いながら、零は健の携帯を鳴らす。

『零ちゃん、あぁよかった、』

ワンコールもせずにすぐに携帯に出た健は開口一番そういい、繋がらないから心配していた、と言う。

「ごめんね、音切ってて忘れてたの。」

『あ、いや、いいんだけどさ俺今街に出てきてるからさ、何か・・・ほしいもんある?』

「え、ほしいものって?別にないよ?強いて言うなら今喉が渇いてるからミネラルウォーターくらいかな。」

『いや、そうじゃなくって、何かないの?好きなものとかさ・・・』

「好きなもの?好きなものならいっぱいあるよ。綺麗なものなら何でも好き。」

綺麗なもの、と電話口で絶句する健。電話の向こうで数人の聞き覚えの声がする。きっとみんなで歓迎会の買出しに行ってくれたりしているんだろうと思うと零は嬉しくなった。



 結局、数学の課題が終わらないまま時間だけが過ぎ、零はどうしても解けない最後の問題に苛立ちを覚えていた。イライラを紛らわせるためにお気に入りのクマのぬいぐるみを抱きしめて寝転がる。

窓の外は暗くなり始め、ふと時計に目をやると18時を回っている。零は溜息を付いて起き上がり、クマを膝の上に乗せて目を閉じる。

 ・・・この一週間、あっという間だったな・・・・。

慣れない環境で、初めての講義ばかりを受ける新鮮さと緊張は思った以上に疲れる事を知る。講義の大半が選択性であるために教室移動も多く、休み時間と言ってもなかなかゆっくりする時間はない。


一般教養棟で行われる音楽の時間はかおると一緒だったから良かったが、それはそれは衝撃的なものだった。音楽、と言っても一風変わった授業で、数局ある課題曲の中から好きな曲を選択し、各々が得意とする楽器で演奏する、と言うもの。半年間で一曲を弾きこなせるようになるまで練習をして、半年に一度、皆の前で披露するらしい。

かおるの選択はヴァイオリンで、彼がヴァイオリンを奏でる姿はそれはそれは美しく、皆が見惚れるのは分かるが、授業中であるにもかかわらず黄色い声を上げたり、お構いなくかおるの近くに集まって騒いだりする一般教養科の女生徒を見て零は少なからず驚いた。

課題曲の中には協奏曲などもあり、仲のいい者数人で協奏曲を選択する人も多いようだ。3年生が始まって最初の講義で課題曲を選択する事になり、零は悩んでいた。

「零ちゃんは何にするの?」

迷っている零を見たかおるが近づいて零に声をかける。

「あ、うん、えっとね・・・。多分一番得意な楽器はハープなんだけど、ハープはなさそうだし、家からも持ってきてないし、」

「零ちゃん、ハープ弾くんだ?」

「うん、」

「だから、どうしようかなと思って。ヴァイオリンはちょっと苦手だし、次に選ぶならピアノかフルートか・・・」

「じゃあピアノにしたら?僕と協奏曲にしない?課題曲にあったでしょ?ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番。」

「それいいね。じゃあピアノにしようかな。」

零が微笑むと、かおるも小さく頷き、二人で課題曲の提出をする。一般教養科の生徒達の突き刺さるような視線が痛かったが、かおるに無視するようにと囁かれて敢えて見ないフリをした事を思い出して溜息をついた。


 ・・・そういえばピアノの練習もしとかないとかおる君に迷惑かけちゃうよね。また放課後にでも練習しに行こう。


 ラフマニノフは好きな作曲家の一人だが、ピアノはここ半年ほど弾いていないだけにかおるの足を引っ張るのではないかと不安だった。


 ・・・そう言えば、家庭科の調理実習もすごい本格的だったな・・・。


 家庭科、と言うと調理実習よりも必須アミノ酸だのなんだのという授業を受けていた零は料理教室さながらの調理実習に驚いた。何でも、この学校の最終目的は《社会に出てからすぐに通用する人間の基礎を育てる事》で、文武両道はもちろん、社会的適合性を育てるための様々な要素が取り入れられている。日本人が苦手だと言うディスカッションや、プレゼンなどもその一つだ。


 一週間の出来事を取りとめもなく思い返していると、部屋をノックする音が響き、ドアを開けるとにっこりと微笑んだかおるの姿があった。

「姫、お迎えに上がりました、」

スーツ姿でおどけて跪いて手を差し伸べるかおるに零は思わず頬を染める。あまりにもはまり過ぎていて突っ込む事もできない。

「あ・・ありがとう。」

《おしゃれしておいてね、》といわれていた零はお気に入りのピンクのシフォンワンピースに、髪をハーフアップにして少しだけメイクをしていたが、本物の王子《かおる》を見てもう少し頑張っておめかしすればよかった、と後悔する。

「零ちゃん、今日も可愛いね。本当にお姫様みたいだよ。」

 どうしてかおる君ってこんなに殺人的なんだろう・・・。

何度見ても慣れない100%スマイルと殺人的なセリフに零はまっすぐにかおるを見られずに俯いた。


 かおるにエスコートされて食堂に着いた零は、寮生達の大歓迎を受ける。食堂の入り口から一列に並んだ面々が、各々用意してくれたのだろう、一人一人からプレゼントを手渡される。

思いがけない演出に、零は驚きと嬉しさとで言葉に詰まる。

「零ちゃん、これ、気に入るといいけど、」

照れくさそうにそう言って、健は綺麗にラッピングされた包みを渡す。

「ありがとう、健君、」

零が笑顔で受け取ると、健も嬉しそうに笑う。

「・・・はい、」

「あ、ありがとう、」

いつもと変わらないつまらなそうな顔で、それでもプレゼントを用意していた駿。大きさや重さから、中身はきっと本だろうと推測できた。

「お前、花言葉は知ってるか、」

伊織に差し出されたオレンジと黄色のバラの花束を受け取る。フワリ、とバラの甘い香りがする。

「えっ、あまり詳しくないけど・・。

「オレンジのバラは無邪気、黄色のバラはジェラシー。お前にぴったりだろう。」

久しぶりに話したと思ったらこの超上から目線。黙って笑っていれば超男前なのにこの性格が惜しい、と零は内心思う。

「私、誰にも嫉妬なんかしてないよ?」

少しムッとして言い返すと、小さく笑って零を抱き寄せて耳元でささやく。

「お前が、じゃない、お前に、だ。」

「伊織、零ちゃんに気安く触れるな。」

「伊織ッ、」

かおると健の怒気を含んだ声がとび、伊織はほらな、と唇の端で笑う。

「お前に触れるとみんなが嫉妬するんだよ、面白いくらいにな。」

「今日は大人しくしてるさ、せっかくの歓迎会だからな。」

お前らも大げさに怒んなよ、と伊織は零から離れ、零は行列の最後にいるかおるの方を見る。かおるはにっこりといつもの穏やかな微笑みを浮かべて零に一歩近づき、大きなリボンをかけた小箱を渡す。

「ようこそ、お姫様、」

歓迎会でもらったプレゼントの中身とかー、歓迎会で起こった出来事とかー、そう言う事は別途、『番外編』を書く予定です☆


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