表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
敗北英雄―勇者を勝たせる仕事です―  作者: 来巳日咲
第一講『終焉学園入学編』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/17

仲間を守れる悪役へ①


 講堂へ移動した俺たちは、体操服姿で整列させられていた。この学校の体操服なんか格好いいんだよな。

「それでは基礎体力測定を開始します」

 アイゼン先生の合図と共に、A組はそれぞれの測定場所へ散っていく。


「普通だ……」

「普通だな」

 測定が終わった俺とガレスは思わず顔を見合わせた。どれも至って普通の測定だったからだ。

「もしかして本当に普通なのか?」

「いや、判断するのはまだ早いぞガレス。だって、あの先生だぞ?」

 信用できない、全員がそう思っていた。そして案の定だった。


「測定終了です!」

「お疲れ様でしたー!」

「よーし昼飯だー!」

 喜ぶ生徒たちにアイゼン先生は満面の笑みで告げた。

「それでは今から山に捨てます」

「だから言い方ァ!!」

 ジークが叫んだその瞬間、大きな音とともにどこからか煙が噴き出した。


「げほっ!?」

「な、何だこれ!?」

「睡眠薬入りです」

「説明が遅い!!」

 俺の叫びも虚しく、意識は沈んでいった。

「それでは皆さん。良い遭難を」


 目を覚ます。それでは問題です、ここはどこでしょうか? 見渡す限り木、そうここは……


「山じゃねぇか!!」

 勢いよく起き上がる。目ん玉飛び出そうなくらい驚いたわ。

「あぁ……終わった」

 草とは仲良しだったはずなんだけどなぁ……。勿論、土とも雨とも友達だよ?

「とりあえず……助けてくださーい」

 まずは大きな声で助けを呼ぶのが大事って本に書いてあった。


「うるさいよ」

「うおっ!? な、何で居るんだよハク!」

 後ろを向いたら、当然のように木の根元へ座っていた。

「お前……何でそんな落ち着いてんだよ」

「寝てたから」

 ゼロみたいなこと言わないでもらっていい? 俺、お前背負って歩くとか無理だよ?

 その時だった。ハクの尻の下に何かある。そこには、アザゼル先生の字で書かれた演習内容が。


 【三日以内に学園へ帰還せよ】

 【食料・水・装備は現地調達】

 【途中で教員が襲撃する】

 【死んだら失格】


「最後の一文おかしくない?」

「アルト、俺水は持ってるよ」

「お前天才か!!」

 思わず抱きついてしまった。無表情で押し返さないで、心に来る……。

「アルト、これ」

 紙には続きがあった。


 【なお遭遇した仲間を見捨てた場合減点】

 【全員生還なら加点】


「……なるほど」

「どうしたの?」

 ハクが首を傾げる。

「これ勇者対策だ」

「これが勇者対策なの?」

「ああ」

 勇者は人を助ける。だからこそ、対になっている悪役は仲間を見捨てる存在だと思われている。でも違う、終焉学園が教えているのは仲間を守れる悪役だ。


「とりあえず雨風凌げる場所を見つけよう」

「うん。アルト、水どうぞ」

「お前良い奴だなぁ……」

「俺のことなんだと思ってたの?」

「扉の番人」

 ペットボトルを返しながら森を進み始める。あら、ハクさん? 急に俺にもたれかかってくるのやめようか。俺君と同じくらい体力ないんだなぁ、これが。すると数分後。


「た、助けてぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 聞き覚えのある騒がしい声が聞こえた。

「ねぇアルト、これってジーク?」

「十中八九アイツだな」

 声のした方へ茂みをかき分ける。

「何してんだお前ぇ!?」

 逆さ吊りになったジークがいた。完全に罠に掛かっていた。

「頭に血がのぼる……助けてください、アルトぉぉ……」

「何で開始五分で捕まってるの? バカみたいだね、アルト」

「おいこらハク! 今の俺にその言葉は禁句だぞ!!」

 こうして、俺とハクとジークの山岳サバイバルが始まった。うん……何でこの二人なの。ガレスとかヴァイスが良かった……。


 その頃、森の奥では岩の上に腰掛けたアザゼルが双眼鏡を覗いていた。

「結構バラけたな」

 その隣にはアイゼンが楽しげに微笑んでいる。

「どう? いい感じに配置できたでしょ」

「だが、相変わらず生徒人気が低いな」

「それ今関係あった……? というかさー、アルト君はあからさまにアザゼルの授業が好き!って感じで私ちょっと悲しいんだよ……」

 その言葉にアザゼルは口角を上げた。滅多に笑わない彼は同期の前だけでは微笑む。

「でも、ちゃんとお前の授業も聞いてる。その証拠に、誰も仲間を見捨ててない」


 逆さ吊りのジークを助けるために刃物を探すアルトとハク。マキナのネジを見つけては手渡すリリカ。足を怪我したセレナを運ぶガレス。

 誰も置いていかない。それが、終焉学園一年A組だった。


「いい子たちだよね」

 アイゼンの呟きにアザゼルは少しだけ微笑んだ。

「だからこそ、勇者に勝てる悪役になる」

 二人が生徒を見つめるその目は、どこか誇らしげだった。


「あ、アザゼルそろそろ行かなくて大丈夫?」

「はぁ……俺は実技担当じゃないんだけどな。後でアイツに夜飯奢らせる」

「私も奢ってもーらお。店予約しとくから、早めに終わらせてきてよアザゼル」

 山岳演習一日目、地獄の特訓が幕を開けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ