004 スキルの解放条件
俺たち勇者一行は王国を発ったあと、丸二日かけて次の国へと足を運んでいた。
歩きなので大分疲れたが、幸いにも道中魔物と遭遇することはなかったので、皆無事に次の国へと足を運ぶことが出来た。
「王国とは違った街並みだな」
「そうだね。王国よりも随分庶民的というか何というか・・・・」
「ぼ、冒険者の為の国? みたいな・・・・」
姫川の言う通り、王国が商人や貴族向けの国だとしたら、この国は冒険者向けの国に見える。通行人の話を盗み聞きしていたが、どうやらこの国には世界で一番巨大で難易度が高いダンジョンがあるらしい。
未だにレベルは初期の頃から上がっていないしスキルの能力とかはわかっていないが、ダンジョンの浅い層だと俺たちでも倒せるような低レベルな魔物しか湧かないらしく、能力を確認するのやレベル上げに絶好な場所だ。
「ダンジョン・・・・一気にファンタジーっぽくなったわね」
「あれ? 菜音っちってファンタジーとか知ってたっすか?」
「私でもファンタジーぐらい知ってるわよ」
小林が星川を揶揄いながら笑っているのを横目に、俺は今晩泊まる宿を探していた。
この二日間旅をしていて思ったのだが、現代人である俺たちに野宿は結構キツイ。こっちの世界は水回りも整備が行き届いていなく、風呂にも入れない。
風呂好きの俺からしたら、毎日水を含めたタオルで体を拭くのは地獄だ。
「銀貨一枚ぐらいの宿・・・・後藤、ここら辺で宿について聞き込みしてくる」
今は食事や宿に大金などは掛けられない。今後回復用のポーションや性能の良い武器防具を買うためにも今は節約第一だ。それに万が一の事があった時に、金がある方が心にも余裕を持てる。
「ああ分かったよ。僕たちの方でも良さげな宿がないか探してみるね」
後藤と俺はそれぞれ別の方向に向かおうとした。だが宿を探しに行こうとした直後、俺の腕は誰かに掴まれた。
後藤だと思い振り返ると、そこには今にでもぶっ倒れそうな程顔を赤くしている姫川がいた。
「ひ、姫川? 顔すげぇ真っ赤だけど大丈夫?」
ここまで顔が赤いと体調が悪いのかと思うレベルだぞ。
それに大丈夫かと聞いても姫川は俺の腕を掴んで無言を貫いており、恥ずかしそうにしながらずっとモジモジしている。
「・・・・あ、ぁの、いっ、一緒に」
「え? ご、ごめん、なんて言ってるか聞こえなかったからもう一度言ってくれない?」
やっと口を開いたと思えば、今度は声が小さすぎて何を言っているのか全く分からない。俺が姫川に聞き返すと、姫川は意を決した様に話す。
「わ、私も、一緒に行きたいですっ・・・・・!!!」
「え?」
「私も、一緒に、行きたいですっ!!!!」
「お、おう・・・・・」
段々と顔を近づけ圧を掛けてくる姫川に怖気ついた俺は、結局一緒に宿の情報を聞き込みする事になった。
⭐︎⭐︎⭐︎
宿の情報を聞くには冒険者が一番手っ取り早いと思い、目に止まった酒場に向かった。
昼でも繁盛しているらしく、冒険者っぽい風貌の男や女たちが酒を呑みながら盛り上がっている。中には身長がとても低い奴や、ケモ耳が生えた獣人などもいた。亜種族という奴だろうか。少なくとも、王国では一切見かけなかった。どうやら王国と違い、ここは亜種族にも寛容的な国なのだろう。
横に視線を向けると、酒場の圧に少し怖気付きながら、不安そうな表情を浮かべる姫川がいた。
「危ないから、離れないように俺の腕掴んどいて」
「あっ・・・・はいっ・・・・!」
俺がそう言って姫川を自分の体に寄せると、さっきの不安そうな表情から一変して姫川ははにかんだような可愛らしい笑顔を俺に向けてきた。
「あ、ありがとうございます・・・・・・」
消え入りそうな声で感謝を伝えてきた姫川。いえいえこちらとしても姫川みたいな可愛らしい女子と密着出来ただけで役得です。
「すみません、こちらの方にお酒を三つ」
「お、なんだニィちゃん! えらい気前いいじゃねぇか!」
「あはは、偉大なる先輩に少しだけ教えてもらいたい事がありまして」
俺は酒場の奥の方で座って呑んでいた比較的ガラが悪くなさそうな冒険者の方に声を掛け、お酒を店員に頼んだ。
「酒を奢ってくれる奴にはなんでも教えてやるよッ!!」
俺がお酒を奢った事で、えらい上機嫌になった冒険者三人組は色々と情報を話してくれる。
どうやらこの国は本当に冒険者向けに築かれた国らしい。ダンジョンが近くにある事で、冒険者向けの設備を整えたそうだ。冒険者ギルドの他にも、魔物の解体をしてくれる店や、ダンジョンで見つけた宝を買い取ってくれる店。その他にも、色々と冒険者向けの店があるらしい。
宿も他の国より安く上質な部屋を提供してもらえるらしく、ダンジョン近くの宿が一番安くておすすめらしい。
「色々と教えてもらってありがとうございます」
「おお! そっちこそ酒を奢ってくれてありがとよ!」
最後まで上機嫌で気前よく情報を教えてくれた冒険者たちに感謝だな。姫川もさっきの冒険者たちを見て大分安心している。やっぱり口に出さないだけで怖かったのだろう。
「明日にはダンジョンに潜る予定だし、ポーションとか必要品を買いに行くか。姫川も、それでいいか?」
「あ、は、はい! わ、私もポーションとか気になってて!」
何故か俺と話す時の方が、冒険者と話す時より緊張しているらしい。さっきからずっと、目線すら合わせてくるれない。
少しだけセンチメンタルになりながらも、俺は薬屋に足を運んだ。
「いらっしゃい、どんな品物をお求めで?」
どんな品物・・・・・ダンジョンを潜る時の事を考えて、万が一を考えての上級ポーションと、ちょっとした怪我に対応できる下級ポーションを買っといたほうがいいな。
「上級ポーションと下級ポーションって幾らですか?」
「上級ポーションは金貨一枚。下級ポーションは銅貨五十枚だね」
うーん、金貨一枚か・・・・結構なお値段になるが致し方がない。
「分かりました。じゃあ、上級ポーション四つと、下級ポーション十個で」
「では金貨四枚と銀貨五枚になります」
俺は薬屋の店主にお金を渡し、店を後にする。
そう言えば、ふと気になった事があったので姫川に聞いてみた。
「姫川、ポーションが気になってるって言ってたけど、何か気になる事でもあったのか?」
「い、いやあの・・・・私のステータスが表示させられているウィンドウに、スキルの解放条件が表示されて・・・・」
「スキルの解放条件っ・・・・!?」
姫川の爆弾発言を聞き、俺は冷静を保てない。
す、すきるのかいほうじょうけん~?
「も、もう一度聞いていい? す、スキルの解放条件ってどうゆうこと?」
「こ、困らせてしまってすみません・・・・きょ、今日、突然ウィンドウに新しい表示が増えて・・・・」
姫川の話を要約するとこうだ。
今朝、腕に埋め込まれていた宝石が黄色く光っていたらしく、気になった姫川が宝石に手をかざしてステータスを表示させると、スキルの欄の横にスキルの解放条件と表示されたらしい。
「そ、それで、その解放条件が治癒ポーションを使う事だったんです」
「ああ、だから治癒ポーションが気になるって言っていたのか」
俺たちにとってこれ程朗報は話はない。どういう経緯でスキル解放の条件が表示されたかは分からないが、これでスキルが使える人が一人増えた。
「さて、この事を知らせるためにも、皆と合流しようか」
「そ、そういえば・・・・どうやって合流するんですか・・・・?」
あれ、俺、合流の仕方とか考えてなかったな。
その後、後藤たちと合流するのに二時間ぐらい掛かった。
この異世界の経済状況は結構シビアです。低い年収のわりに、値段の高い食料や物。冒険者でも商人でもない農業をする民は生活基盤を整えれていない家計が殆どです。
結局、無理してでも冒険者や商人になって金稼いだ方がまだ年収は良い方です。




