001 勇者召喚
ピチピチ大学一年生の俺、犬間 庄司は見知らぬ建物で目が覚めた。
石造りの立派な壁、大理石の床、金で装飾されたレッドカーペット。少なくとも俺の家はこんなにも豪華ではない。
あたりを見渡すとローブを着た男と、色鮮やかな装飾が施された王冠を被ったおっさんがいた。
そいつら以外にも、俺と同様に混乱している男や、三人ぐらいの女性が辺りをキョロキョロと見渡していた。
この状況、大体把握したぞ。これ、アレだ。
小説とかだったらよくある王道的な展開だ。
「どこなんだ、ここは・・・・」
一人の男がそう呟く。
その疑問に沈黙が続くが、王冠を被ったおっさんが俺たちの前に出て話し始める。
「我はこの国の王、レトロ=マンブル。代々伝わる勇者召喚魔法で其方たちを召喚したのだ」
勇者召喚・・・・異世界小説とかRPGゲームなどで聞きなれたワードだ。最近もRPG系のソシャゲとかやってたしな。
てかこれ、確定だろ。え、なに。俺、魔王とか倒しちゃうの? 俺、選ばれし者になっちゃったの?
「其方たちには我が王国レトロに侵攻する魔王を討伐してほしいのだ」
王がそう告げると、召喚された人たちはザワザワとしだす。
どうやら俺以外の召喚された人達は面識があるらしい。ボッチなのは悲しいが、それよりも王道的な展開すぎてちょっと興奮してる。
鼻息を荒くしている俺をよそに、俺と同様に召喚された男が文句を言い始める。
「なんで僕たちがそんな事しないといけないんですか! はやく元の世界に戻してください!!」
周りの召喚者たちも不安そうな表情を浮かべながら、男の意見に頷く。
いや、俺はどっちかって言うとこの状況楽しんでるけどね。
当り前じゃん、オタクが夢見る生活が目と鼻の先にあるんだよ? 大学も楽しみにしてたけど、普通にこっちの方が楽しそう。
男の話に王は一息吐き、深刻そうな表情を浮かべて話し出す。
「元の世界に戻る方法は一つ。魔王を倒し、魔王の心臓を手に入れることだ」
王の話を要約するとこうだ。俺たちが元の世界に戻るには魔王の心臓が必要らしい。そして、勇者の俺たちには共に旅を続けながら、魔王を倒せる力を鍛えて欲しいとの事。
聞いてて大分胡散臭い話だが、他の召喚者たちも俺も、今は王の話を信じるしか帰る方法はなさそうだ。
魔王と言い、勇者と言い、ゲームみたいな設定だなと思いつつも、俺は自分の右手に少しだけ違和感を覚えた。
「なんだ・・・・?」
服の袖をめくると、そこには小さな黒い宝石が埋め込まれていた。
「なんだよこれ!?」
思わず大きな声が出てしまい、俺の声に反応した他の召喚者たちも俺の腕に埋め込まれた宝石を見て驚く。
「私の腕にも宝石が・・・・!!」
「え・・・・私にもある・・・・」
「うわっ、ほんとだ。あたいの腕にもあるっす!?」
「僕の腕にもある・・・・」
どうやら他の召喚者にも俺と似たような宝石が埋め込まれているらしい。召喚者によって色は違うが、形は大体同じだ。
「それは其方たちが旅を続ける中で、とても強力な武器になる宝石じゃ。その宝石に軽く触れてみろ」
王に疑いの眼差しを向ける召喚者達だったが、王の言う通りに宝石に触れる。すると、目の前にウィンドウのような物が表示された。
犬間 庄司
レベル 1
スキル 屍蘇
魔法 無し
武器 無し
装備 異世界の服
おぉ・・・・どうやらこれはゲーム用語で言う、ステータスだな。
ん? スキルの欄で屍蘇ってあるけどなんだこれ?
「各々、自身の力を理解したと思う。では我からの説明は以上だ」
そう言い残し、王は俺たちが召喚された部屋から出ていった。
いや、俺まだ全然理解してないっすね・・・・・・。てか、最初から最後まで偉そうなおっさんだったな。なんか態度とかムカつくし、ほんと全部が全部胡散臭そうなんだよなぁ。
それに俺たちの扱いが適当すぎる。仮にも選ばれし者として召喚された俺たちにこの様な仕打ちはないだろ。異世界召喚なんて誘拐と同じような事だし。
「・・・・・」
沈黙が玉座の間に続く。
「えーと、それで・・・・僕たちはどうすれいいのかな?」
召喚者の一人である男が沈黙を破り、ローブを着た人に話しかける。
「二日後には、魔王討伐の冒険に出て行ってもらいたい思います。勿論、援助金や装備、武器などもこちらで用意します」
俺を含め、召喚者達が不服そうな表情を浮かべる。
やっぱ俺たちの扱い適当すぎやしねぇか? 王国側も碌な説明してくれてないし。
どれ、ここは俺が聞いてみるか。
「魔王を倒した報酬とかってないんですか? タダ働きなんてごめんですよ?」
これで元の世界に戻れる事が報酬です、なんて言われたら一発だけ顔面を思い切り殴ってやろう。一発ぐらいなら勇者だし許されるよね! 一応、俺たちは選ばれし者だし。
「勿論報酬は与えます。それに勇者様には英気を養ってもらうために、今日明日この城で出来うる最高級の食事や部屋なども提供します」
「「「「「おお!」」」」」
召喚者達は一斉に歓喜の声を上げる。よかった、これで殴らずに済むぞ。
一国の最高級料理や部屋を今日明日だけでも楽しめるんだ。それに魔王を討伐したら報酬も貰える。
大体、ゲームとかでも魔王は勇者に討伐されるためだけにいる存在だ。俺たち、選ばれし者なら魔王討伐も楽勝でしょ。
「では勇者様、付いてきて下さい。部屋へとご案内します」
諸々の説明が終わり、俺たちは案内人のローブを着た人に付いて行く。
「・・・・・・これから毎日、楽しくなりそうだ」
そう独り言を呟き、俺はこれからの生活にワクワクするのであった。
頭痛てぇ
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