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第53話 対決④ 決戦

隣に立つレイが防御魔法を出しながら、チラリとこちらに視線を流す。


「待たせた、ミツキ……あ、アレクも」


「“も”って、なんだ、お前、待ちくたびれたぞ」

アレク様も安心したのか、憎まれ口を叩く。

私達の空気が変わった。


イヴェールが攻撃を止めた。


レイも防御を解き、私を背にして前に出る。

「あんたが黒馬に託してくれたお蔭で、ここがわかった」

「よかった……」


あの黒馬がヒスイの森の入口で別れたあと、レイに知らせてくれたんだ。


「まあ、あんたにはあとで言いたいことが、た(・)く(・)さ(・)ん(・)あるけどな。とりあえず、黒馬に付けられたピアスを見たときは、生きた心地がしなかったよ。でも、こうして頑張っていてくれた……ありがとう、ミツキ」


そう言った彼は、私にやさしく微笑んでくれた。

彼のコバルトブルーの瞳があまりにも綺麗で、やさしくて、私は鼻の奥がツンと痛くなる。ただ首を横に振ることぐらいしか、出来なかった。


レイこそ、ありがとう。


こうして、駆けつけてくれて……


「北の大魔法使い。俺が相手だ」


レイが凛として声で言うと、真正面からイヴェールと対峙する。


イヴェールは注意深く観察するように、じとり目を僅かに細めて見る。


「そう言えば、王太子のもう片腕が居たな。お前か?レイファス・アエラス・ランドルフ。今の防御もランドルフのものだ」


「そうだな、きっと俺のことだな」


「ランドルフの当主、か」


レイが私だけに聞こえるように小声で言う

「ミツキ、あんたにお願いがある」

「なに?」

「まだ盾は使える?俺がアイツに攻撃する間、どうなるかわからないから、ミツキ自身とつ(・)い(・)で(・)に(・)アレクの身を守って欲しい。出来る?」

「うん、わかった」

「ありがと」


レイはやさしくそう言いうと、イヴェールほうへと神経を集中させた。

私もいつでも防御のシールドを出せるように、準備する。


レイの周りの空気が、一気に冷たく鋭いものに変わった。

そして、怒気を含んだ低い声で言い放つ。

「北の大魔法使い。俺はお前を許さない」

「ほう、ランドルフの小僧如きが言ってくれる」

「小僧如きかどうか、その身で試してみるんだな」


右手に緑の光が集められていく。

「俺はいま、お前にめちゃくちゃムカついてるんだ」

「は、ランドルフの力でこの俺を倒せると?笑わせるわ」


「じゃあ、これはどうかなっ」


そう言うと、もう片方の手に青い光が一気に集まっていく。


「な、に……」

イヴェールの表情(かお)が驚愕に変わった。


地鳴りがして、地面の草や小石がぶわっと舞い上がる。


「あんの、バカ……」

と、後ろでアレク様が零すのが聞こえた。

私は急いで自分とアレク様の周りに白銀の盾のシールドを張る。


次の瞬間、ものすごい轟音と閃光とともに、大きな光の塊が北の大魔法使いへと放たれた。

地面の草や土を次々にめくり上げながら、凄まじい勢いで突き進んでいく。

イヴェールは急いで防御のシールドを何層にも張った。

けれど、強い攻撃の光はことごとく防御壁を破壊していき、最後はイヴェール自身も強い白光に飲み込まれた。

辺り一面、真っ白なまばゆい光に包まれる。


ようやく光が収まり目が慣れると、光を放ったレイは何でも無かったようにそこに立っていた。

イヴェールはというと、片方の肩から大量の血を流し、腕はダラリと垂れ下がっていた。もう片方の腕にミレイユを抱えている。攻撃を受けたときに、彼女を庇ったのであろう。立っているのも辛そうに感じた。


「貴様……、何者だ」

「さあ、小(・)僧(・)なんだろう?」

そう言いながらも、また二度目の攻撃の光を手に集める。

「言ったが、俺はいま、め(・)ち(・)ゃ(・)く(・)ち(・)ゃ(・)に(・)機嫌が悪いんだ」


イヴェールは小さく舌打ちをしたかと思うと、苦々しい声で言った。

「……ここは、いったん仕切り直す」

そういうと、北の大魔法使いはミレイユを腕に抱いて、フッと姿を消した。

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