↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
52/60

第52話 対決③ 地味で腐女子ですけど、逃げたくはありません

私は北の大魔法使いからの攻撃に、急いで備える。


お願いっ!白銀の姫っ、私達を守って!!


私は強く願うと、白金に輝くシールドを私達の前に出現させた。

北の大魔法使いが、まるで虫か埃でも払うかのように、さっと軽く手を振っただけなのに、すごい速さで攻撃の光が飛んでくる。


ドンッ、――と衝撃を受ける。


なんとか、耐えた。

けれど、ミレイユの時とは明らかに違う。重たい。


これが北の大魔法使い⋯⋯


今のは彼にとって、きっと赤子を相手にする程度のものなんだろう⋯⋯

相変わらず気だるげで、平然としている。


「ほお~、成る程。では、これはどうかな?」

「なっ、」


彼が軽く右手を上げる。フードの下に見える口元をにやりと歪め、嗤っているのだと分かった。

私達をいたぶることを楽しんでいるんだ、と憤りを感じたとき、二回目の攻撃魔法が放たれた。


私は両手を前に突き出し、全身全霊でシールドに集中して彼の魔法を受ける。

白金のシールドがビリビリと震えている。


「くっ……」


息が出来ない。凄い圧力だ。


とうとう盾であるシールドの端が欠け、あっと思った瞬間、シールドが消えた。

私は身体に彼の攻撃を受けてしまい、後ろに吹っ飛ぶと強い衝撃とともに地面に叩きつけられた。

ゴロゴロと転がり、アレク様のそばで止まった。


「ミツキ!!」

アレク様の掠れた声がすぐそばで聞こえた。

目を開けると、アレク様が悲痛な顔をして私を見ていた。


「もうやめろ……今はアイツに降伏するんだ。アイツは、お前を殺す気はない。お前は、もうこれ以上、逆らうな……」

「⋯⋯アレク、様⋯⋯」


どうして、そんな辛そうな顔を?王子様には、そんな顔似合わないですよ?

そう言いたいのに、口が動かない。

ああ……、アレク様は、きっと身体の傷が痛いのですね……

ぼんやりと、そんなことを思う。


「俺達では、今のアイツに、勝てない。いいか、お前は……、もうすぐ向(・)こ(・)う(・)の(・)世(・)界(・)へ(・)、帰る頃合いだ。仲間に、なると、言え」


そっか。私が彼の元へいっても、私の元いた現実の世界へ帰るという方法で、私(・)は(・)逃げることができる。


……確かに。アレク様の言うとおりだ。


今の私達では、北の大魔法使いに勝てない。


「……わか、りました……」


私は、痛みで軋む身体を両手で支え、なんとか起こす。

大丈夫。まだ立てる。


私はぐらりと立ち上がった。


……そうか。身を守るばかりでは、いつまでも勝てない。

一歩踏み出さないと、何も始まらないなら、踏み出すしかない。……だったら。

一か八かやってみるしかない。無謀だって言われても。


私は右手をあげて、白銀の弓を出現させた。


アレク様が、はっきりと息を呑むがわかった。


「おいっ……ミツ、キ……、なに考えて……っ」


慌てて身体を起こそうとする。


「ほう、俺に矢を向けると」

イヴェールも意外そうに口の片端(かたは)を上げる


「アレク様。私は、聖女様ではありません。力は大して無いし、ただの地味な腐女子ですけど、やっぱり、逃げたくはありません」


アレク様に目を向ける。彼の空色の瞳と目が合う。


「……すみません」


「お前は、……ほんとにバカだ」


彼はなぜか泣きそうな顔をしている。


「……はい。そう、思います」


「……でも、最(・)高(・)の女(・)だ」


なんか餞(はなむけ)の言葉に聞こえますけど?


内心苦笑しながら、私は弓に矢をかける。

ギリギリとイヴェールに向かって、狙いを定めた。

イヴェールは大したことではない、とでも言うように、まだ防御もせず、嗤って立っている。


攻撃はこの一度しか出来ない。二度目はない。


私は深く息を吐き、全ての力を込めて矢を放った。

矢は白銀の大きな光の塊となり、今までで一番鋭い速さで飛んだ。

そして、ようやく出した彼のシールドにぶつかる激しい音と、真っ白な光がイヴェールを包み込んだ。


あたりは白くまばゆい光に包まれて、何も見えなくなる。


どう!?ダメージを与えられた!?


ハァ、ハァ……


自分の荒い息遣いが耳に響く。


イヴェールは!?


まばゆい光が消えて、イヴェールは攻撃前と同じ場所に涼しい顔をして立っていた。

私には絶望が残った。


彼はゆっくりと黒いフードを脱いだ。

黒い髪にグレーの瞳。ミレイユが言っていたように、確かにものすごく綺麗な顔をしている。

まあ、今はもうどうでもいいか……


その白い頬に、スッと赤い筋が入っていた。

「この私の頬に傷をつけたことは褒めてやろう。なかなかに面白かったぞ」


もう私には、力が残っていない。

けれど、あとは残った力を全部使ってでも、ここをなんとか守ることしか方法が思いつかない。


「娘、仲間になるなら生かしてやろう」

「お断りします」

「ミツ、キ……もう、いい、逃げ、ろ……」


彼は、わざとらしく溜息をついた。

「残念だ。では、せめてじっくりと死を味わせてやろう」


イヴェールは笑みを浮かべると、手を上げた。

私は来るであろう攻撃に備えて、盾のシールドを出現させる。


彼がさっと手を振ると、光の矢がこちらへいくつも飛んでくる。凄い衝撃だ。重たい。

やがて張ったシールドにも、ピキピキと音を立てて、ひびが入り始めた。


そんな、まだお願いっ!!

もう少し、耐えて!!


そのとき、ひび割れた白金のシールドを守るように、大きな緑色のシールドが重なった。


え?て驚いた瞬間、すぐに力強く肩を抱き寄せられた。


「悪い、遅くなった」


耳元で、聞きたかった声が聞こえた。


「レイ!!」


夢なのかと横を見上げると、私のすぐ隣にレイが立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。