↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
49/60

第49話 ドラゴンを追って!

私を背に乗せた黒馬はスピードを緩めることもなく、ドラゴンを追って市街地を抜けたあと、今は月夜に照らされた野を駆けていた。


手綱をつなぐ金具に、王家の紋章が刻印されているから、アレク様の愛馬なんだと思う。

自分の主人を思って、助けようと、この黒馬も必死なんだ。


ドッドッドッドッ……

荒々しく力強い音と衝撃を全身に感じながら、とにかく落ちないように、私は必死でしがみついていた。


明るい月夜のお蔭で、ドラゴンの姿を見失うことはない。


ただ、あまりスピードを出して飛んでいないように感じられた。まるで、敢えてそうしているかのように。

だとしたら、いったい何が目的なの?


時間稼ぎ?それとも、この先に何か罠があるのだろうか……

罠?

何が待っているかわからない。怖いとは思った。

でも……。

何かあるとしても、私には追いかけるしか、選択肢はない。


馬で駆けながら、私は必死で考える。


レイとルーセルは?

彼らは、アレク様がドラゴンに連れ去られたことを知っているのだろうか……

レイはもしかして、外の見回りもしてるって言ってたから、騎士の仕事で城に居なかったのかも知れない。

私が城を飛び出して来たときは必死で、周りを見てる余裕がなかった。私の他にドラゴンに気づいてる人が居たのだろうか。


ドラゴンは、今も真っ直ぐどこかを目指して飛んでいる。


先程からその先に見えていた大きな森の黒い影が近づいていた。このまま行けば、森の中に入ってしまう。


――あれは、ヒ(・)ス(・)イ(・)の(・)森(・)だ。


森の中に入ってしまったら、空を見ながらの追跡が難しくなる。馬のスピードも落ちてしまう。どうしよう……

迂回するルートとかあるのかな。


そして、ヒスイの森を抜けた先に、いったい何があるのかも、私にはわからない。


ドラゴンはゆっくりと真っ直ぐ飛び続けて、私の不安どおりヒスイの森の上に来た。


どうしよう……


森の入り口まで来たとき、黒馬が嘶(いなな)くと、そこでピタリと止まってしまった。


ええっ?どうしようっ!?


「ね、ねぇ、止まらないで?」


黒馬は首を振りながら、前脚で土を蹴り、ブルルンと鼻を鳴らしている。

まるでそこに壁があるように、一歩も進もうとしない。

それどころか、私に降りろと言うように、私を振り落とそうとする。


「わぁ~っ、落ちるよ!待って、降りるから!!」


私は転げ落ちるように、馬の背から滑り降り、地面に尻もちをついた。

「痛たたた……」

慣れない乗馬に私の足もガクガクで、情けないけど立ってられない。


そのとき、ヒスイの森の木立の中から、大きな真っ白い鹿がすっと立って、こちらを見つめていることに気がついた。


「あなたは……、ヒ(・)ス(・)イ(・)の(・)森(・)の(・)精(・)霊(・)!?」


レイとこの森へ来た日、ヒスイの泉のほとりで出会った。泉に落ちたボールを取ってあげた男の子のお母さん。


私をじっと見つめる瞳は新緑の色で、まるで吸い込まれそうだ。私の頭の中に話しかけてくる。


「こちらへ」


低く凛とした声音で、そう聞こえた気がした。


「急ぎなさい」


強く有無を言わせない声。


「はい!」


私は返事をして黒馬を振り返ると、自分のドレスの腰に通していた薄い桜色のリボンを外した。そして、手早く手綱にぎゅっと結びつける。これだけでは、私からだと分からないかも知れない……


私はレイから貰ったピアスを片耳から外し、リボンの布に刺して留めた。

こうすればレイかルーセルなら、すぐに私からだと気づいてくれるはず。


黒馬の首に触れ、濡れたように強く輝く、黒い瞳を真っ直ぐに見る。


「お願い。あなたは城に戻って、近衛騎士団長のレイファス・アエラス・ランドルフにこれを見せてくれる?必(・)ず(・)アレクシス様を助けましょう!」


黒馬は高くいななき踵を返すと、来た道を再び駆けて行った。


賢い馬だもの、きっとレイに伝えてくれるはず。もし、レイが居なくても、ルーセルがピアスを見たら、私だと気づいてくれると思う。


大丈夫!きっとレイが助けに来てくれる!


私はヒスイの森の精霊を振り返って言った。

「お待たせしました!お願いします!」


ヒスイの森の精霊らしく、威厳のある佇(たたず)まいだ。

「北のドラゴンが目指す場所はわかっている」

「ほんとですか!?」

「ああ。そこまでお前を連れて行ってやる」

「ありがとうございます!」

私は勢いよく頭を下げた。


「礼は要らない。子を助けた借りを返すだけだ」

ヒスイの森の精霊が力を貸してくれたらこの先も心強い。


「私の背に乗れ」

そう言うと、ヒスイの森の精霊は私が乗りやすいように屈んでくれた。森の精霊というだけあって、鹿と言えども大きく、その背の高さは、馬くらいはあった。

私は急いで「失礼します」とその背に跨る。


「私の首にしがみつき、頭を下げていろ。出ないと首(・)が(・)飛(・)ぶ(・)ぞ(・)」


は?


「はい」


よく意味がわからないけど、言われたとおりにする。


その直後、言葉の意味がよくわかった。


私が首に抱きつくやいなや、ヒスイの森の精霊はすごい勢いで木々の間を跳ぶように、一気に駆け抜け出した。


確かにこれは、木々の枝に頭ぶつけたら、衝撃で頭がどっかにふっ飛んでいくでしょうね……


……想像したら、ホラーだ。

森を抜けるまで、私の首が飛んでいきませんように!!(泣)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。