第46話 完璧王子様の登場
美味しそうなお料理が並ぶテーブルを前に、私がどのお料理からいただこうかな♪ってウキウキしていると、ふいに流れていた音楽が止んだ。人々も歓談を止め、一瞬、会場が静まり返る。
次の瞬間、華やかなファンファーレが鳴り響いた。
みなが一斉に玉座のほうへ目を向ける。
私もみんなと同じように、そちらへと振り返った。
みんなが注目するその先に、薄い水色に金糸で刺繍が施された煌びやかな衣装に身を包んだ金髪碧眼の王太子、アレクシス様がじつに華やかに、そして麗しく優雅に姿を現した。
わあ~!綺麗っ、輝いてる!
いつもは長めに下ろしている前髪も、今日は上げて後ろに流しているせいで、形のよい額がよく見えて、彼の整った美しさが際立っている。
優雅で、威厳のある堂々とした立ち居振る舞い。
ああ、彼は生まれながらにして、王子様なんだって思う。
甘美な微笑みを浮かべる彼は、天使様という言葉すら似合っている。童話に出てくる白馬の王子様そのものだ。
いつもの素の彼は黒王子様だけど、いま、玉座の前に立って優雅に微笑んでいる彼は完璧な白王子様。
ところどころから感嘆の声が漏れ聞こえた。
女性たちだけでなく、男性もみなうっとりと釘付けになっている。
わかります~!!
ほんと推しの騎士様にそっくりな彼は、美しいですよねっ!
なぜか自分のことのように嬉しい。
彼が金で装飾を施され豪華な真紅の玉座の前に立ち、右手を優雅に滑らせ挨拶をすると、広間の人々もみな優雅にお辞儀をした。
私もみなに習い、教えて貰った貴族女性のお辞儀をする。
「今宵は国王に代わり、第一王子であり王太子である私、アレクシス・ルークス・アウレリオが、皆様をお迎えします。どうぞごゆるりとお楽しみ下さい」
まだ王ではない、王子様らしい丁寧な挨拶。
彼の簡単な挨拶のあと、彼の合図で再び楽団が音楽を奏で始め、フロアの真ん中ではダンスをするもの、周りで談笑を楽しむもの、アレク様に順番に挨拶したり、各々がこの空間を楽しんでいた。
私はもちろん料理を楽しむ事にした。
小さな貝殻のお皿に入ったグラタンは、オレンジ色した星型のチーズがのっていて可愛いだけじゃなくて、驚いたのは料理の並ぶテーブルに置かれていても魔法で温められているので、食べるときにも出来立てのように温かくて美味しかった。
私の暮らす日本では見たことのない、色とりどりの豆やきのこが置かれているのを見ると、ここって絵本やファンタジーの世界のような、私たちの世界とは異なるもう一つの世界なんだって、あらためて実感する。
もちろん珍しい食べ物もあれば、馴染みのあるものもたくさんある。
いま食べてるローストビーフは私達の世界にあるのと同じで、これもとっても美味しい。
もぐもぐしながら幸せを噛みしめる。
二つ目のローストビーフを、ぱくっと口に入れた瞬間……
「失礼、そこのレディ?」
と、私の後ろで若い男の人の声がした。
誰か近くの女性が話しかけられてるのね、くらいに思っていたんだけど。
私の目の前で、お料理を取り分けてくれていたシェフの格好した男性が、目を剥いて口をパクパクさせながら、早口に小声で私に言ってくる。
「お、お…、お嬢さん、ですよ……」
なぜか、私の背後を見てびっくりした顔をしている。
……私?




