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【完結】翡翠色の光と銀の風〜失われた架け橋〜  作者: 碧風瑠華


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第十二話 湖畔に潜む危険(後編)



 王太子執務室にいたエルミージュの携帯通信機に緊急連絡が父セルジオより入った。


 リオネルが急病だと。

 

 報せを聞いたエルミージュは、しばらくの休暇願いとともに帰宅準備を始めた。

 

 だが、一刻も早くルクレ領に行きたいのに、休暇の許可が下りない。


 自分が居なくても困らないように平素から整えている。

 問題ないはずなのに。王太子ジュリアンが煮え切らない。


 遠隔通信作業で職務を行うという話に持っていき、なんとか了承させた。


 エルミージュが、ルクレ領に帰れたのは、一報が入ってから数時間が経過していた。



 エルミージュはリオネルの元に急いだ。

 セルジオから魔力供給を受けるリオネルの顔は白く、血の気がなかった。


「父上、リオネルは?」


 エルミージュはリオネルを見つめながら聞いた。


「ヴァンリュールだ……繁みに消えていく、とても綺麗なヴァンリュールを護衛が目にしている」


 リオネルへ魔力供給を終えたセルジオが呟いた。


「リオネルは奴と遊んでいた」


 エルミージュは目を見開きセルジオの方を見た。

 セルジオは続けた。


「どうやら小一時間戯れていたらしい。護衛が見つけた時、止める間もなくヴァンリュールを抱きしめた」


 エルミージュは、それが何を意味するのか理解出来ていた。


「魔力が枯渇したのですね」


「辺りがリオネルの魔力色で霧のようになっていたというから、相当なものだよ」

 

 エルミージュは唇を引き結んだ。


(私がはっきりと教えていれば)

(魔力を吸う可愛らしい魔獣は、十五歳以下には危険な存在だと)

(まだ身体の小さなリオネルは奪われると命の危険があることをはっきりと言えば良かった)

(すべて私が悪い)

 

 セルジオやエルミージュがそばにいるから助けることが出来た。

 いや、ルクレ伯爵家、ひいてはセリュール侯爵家の血筋だから生き延びたともいえた。

 祖父セリュール侯爵からの遺伝なのか、ルクレ伯爵家の親子は魔力量が桁違いだった。

 これは表向きには、あまり知られていないことだった。

 

 だからこそ一命をとりとめていた。

 それでも、まだ死の淵にいることには変わりなかった。


 リオネルとの魔力相性が良いのは、セルジオよりエルミージュだった。


 リオネルとエルミージュは、魔力色が近い同じ緑色。

 セルジオは、銀白に煌めく青銀だった。

 エルミージュが間に合わなければ、危険度は増していた。

 

 その後、魔力供給と安静にさせることで、リオネルは数日かけて回復していった。


 その間、リオネルの世話と遠隔業務の両方を、エルミージュはリオネルの傍らで行っていた。


 リオネルは、ほぼ問題なく回復した。

 仕事が終わったら散歩に連れ出そうかとエルミージュは考えていた時、遠隔通信が入った。


「弟君の容態はどうだい?」


 画面に映る王太子ジュリアンは、開口一番に聞いてきた。


「はい、お陰様で事なきを得ました。快方に向かっております」


 エルミージュは恭しく返した。やはり何か信用出来ないのだ。

 昔のように警戒なく話すことが出来なくなっていた。


「そうか……それは良かった」


 社交辞令を口にした後、本題を切り出した。


「君しか出来ない案件が浮上した。遠隔では無理だ。戻ってくれ」


 ジュリアンが言わんとする事を、エルミージュは察した。


「ベルテア王国との交渉ですか? それでしたら担当は変えてます。彼で大丈夫ですよ」


「戻れ」


 ジュリアンは端から聞く気などなかった。

 

「なぜですか? 許可も頂いていますし、大丈夫だと他の補佐官方からは聞いてます。本当に必要であれば何とかしますが、何かおかしいです」


「いいから戻るんだ。君が傍にいるべきなのは、弟君でなく私だろう」


 また話がおかしな方向に行っている、とエルミージュの心にさざ波が立ち始めた。


(何を言っているの? この人は?)


「意味がわかりません。殿下」


 リオネルの看護と仕事を両立させ、魔力供給という負荷の積み重ね。

 エルミージュの限界はとっくに超えていた。


 心の余裕もほとんどなく、辛うじて気力で保っていた。


 ジュリアンとの会話の内容は、そばにいるリオネルにも聞こえている。

 心配そうに見ている。

 エルミージュは、同じ室内でもリオネルから離れた場所に移動した。


(大事なのはリオネルに決まってる)


 大事なのは、迷うことなくリオネルだ。比べることすら無意味だ。


 エルミージュを中心に微かな風が起こっていた。


 自分の望む言葉をエルミージュが言わないことに、ジュリアンがたまらず声を荒らげた。


「いいから戻れ! 俺のそばにいろ! リオネルと俺とどちらが大事なんだ!」



 エルミージュを中心に起こっていた風が強くうねり、彼女を取り巻いた。

 エルミージュからは翡翠色に銀色の粒子の光が爆発的に放たれた。








 




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