12 朝からラブコメ展開か?
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「部活で俺を倒したいなら、もっと腕を磨けよな。」
「倒すのはお前だけじゃないさ。」
勇希がそう言い返した瞬間、天保がニヤリと笑い、鈴は「やる気が出たみたいだね」と嬉しそうに頷く。朝の教室には、どこか柔らかな空気が漂っていた――その時までは。
突如として教室の扉が勢いよく開き、明るい声がその場の空気を一気にかき乱した。
「ユウ君、おっはよ~!」
現れたのは一草笑華だった。キラキラと輝くアクセサリーに明るい髪色、そして愛くるしい笑顔。笑華はまっすぐに勇希の元へ歩み寄ると、まるで子猫が餌を見つけたかのように嬉しそうな顔を浮かべて言った。
「えっ?なになに、部活入るの~?」
「うん、OCG部に入ることにした。」
勇希がそう答えると、笑華は目を丸くして驚いた。
「え~、そうなんだ!でもさ、ユウ君、運営委員会はどうするの?私、ユウ君にはぜひ」
怒りのような不機嫌なオーラを漂わせる鈴が口を開いた。
「……ちょっと、ユウ君?」
鈴の声はいつもの明るさを保ちながらも、その奥には小さな棘が混じっている。
「勇希君、いつからユウ君とか呼ぶような関係になったのかしら?」
「いや勝手に笑華さんが!!」
「え~?ただのあだ名じゃん~。」
笑華は無邪気な笑顔を浮かべながら首を傾げる。その仕草が、かえって鈴の眉をさらに動かした。
そのやり取りを横目で見ていた天保が、ニヤリと口元を歪めながら軽口を叩く。
「ほうほう、勇希君、モテるな~。俺の知らない間に女子二人を取り合いさせるとは。」
その言葉に、勇希の顔が一気に赤く染まる。
「そ、そういうんじゃない!」
「えー、そうなの?」
笑華が悪戯っぽく笑いながら続ける。
「でも、ユウ君、結構イケメンだしね~。運営委員会に入ってくれたら、もっとモテるかもよ?」
「そういうの関係ないだろ!」
勇希が慌てて否定すると、鈴が冷静を装いながら口を開いた。
「イケメンとか関係ないから。勇希は、ただ自分の夢に向かって頑張ってるだけだもん。」
「ふーん、そうなんだ~。」
笑華の無邪気な笑顔が、どこか鈴をさらにイラつかせているようだった。
「ちょっと、二人とも、やめてくれよ!」
勇希は真っ赤な顔で声を張り上げた。その声に、鈴と笑華はハッとして「ごめんごめん」と軽く手を挙げる。
「俺、モテるとかそういうんじゃないし、部活も運営委員会もちゃんと自分で決めるから!」
「ほうほう、さすがだな、勇希君。」
天保が再び茶化すように言うと、勇希はその言葉に反応する余裕もなく、ただため息をつくしかなかった。
「俺、運営委員会にも入ることにした。」
笑華が驚きの表情で「えっ?」と声を上げ、
「本気なの?ユウ君!」
笑華が声を弾ませながら身を乗り出してきた。その目はキラキラと輝いており、まるで自分の勧誘が成功したと確信しているかのようだ。
「うん、本気だ。」
「やったー!ユウ君が運営委員会に入ってくれるなんて、最高だよ~!」
笑華は手を合わせて喜びの声を上げた。
「んじゃ、俺も運営委員会入ってやろうか。」
天保がにやりと笑いながら冗談交じりにそう言うと、そして次の瞬間、何事もなかったかのような無邪気な笑顔を浮かべながら言い放った。
「うーん、竜崎君は私の好みじゃないから、遠慮して。」
その一言に、天保の表情が固まった。
「……は?」
「だから、遠慮してほしいかな~って。ユウ君みたいに爽やかな人がいいんだよね~!」
笑華は悪気ゼロの笑顔を浮かべながら、勇希をチラリと見た。
「俺、好みじゃないって……マジで?」
片手で頭を抱えながら虚ろな目をしてつぶやいた。その姿は、まるで敗北を喫した剣士のように打ちひしがれている。
「ちょっと!」
その時、鈴が鋭い声を上げた。その声に、笑華も思わず「えっ?」と振り向く。
「好みとかで勧誘しないでよ!それ、勇希にも失礼だから!」
「え~?そんなつもりじゃないけど……。」
笑華は首をかしげながらも、どこか楽しそうな笑顔を浮かべている。その態度に、鈴の怒りはさらにヒートアップした。
「運営委員会ってそんな適当な理由で入るところじゃないでしょ?真面目にやってる人たちにも迷惑だよ!」
「いやいや、私は真面目だよ~?ただ、ユウ君みたいな人がいてくれたら、もっと楽しくなるかなって思っただけ!」
笑華のその軽い口調に、鈴は「もう!」と息をついてプイッと顔をそらした。
「まあまあ、二人とも……。」
勇希が慌てて手を挙げ、二人の間に割って入る。
「俺が運営委員会に入るのは、自分で決めたことだから、誰かの好みとか関係ないよ。それに、鈴の言うとおり、ちゃんと真面目にやるつもりだ。」
その言葉に、鈴は少し表情を和らげた。一方で、笑華も「あれ~、怒らせちゃったかな?」と悪びれる様子はないが、勇希の話には一応耳を傾けているようだった。
「とにかく、頑張るよ。OCG部も、運営委員会も、ちゃんとやりきるから。」
勇希がそう言うと、鈴は「分かった。でも、本当に無理しないでね」と小さく笑った。笑華も「ユウ君が頑張るなら私も応援するね~!」と、すぐにいつもの笑顔に戻った。
天保の復活
一方、そのやり取りをぼんやりと見ていた天保が、再び口を開いた。
「……俺の存在、完全に無視されてね?」
その声にはわずかに悲しみが混じっている。
「いや、俺も頑張ってみようかと思ったのによ。まさか好みでアウトとはな……。」
天保が大げさにため息をつくと、勇希は思わず笑いをこらえた。
「お前が運営委員会に入ったら、それはそれで面白いと思うけどな。」
「そうか?でも、俺は好みじゃないってよ。」
天保は肩をすくめて見せたが、その目にはどこか「しょうがないか」と諦めの色が浮かんでいた。
鈴は小さくため息をつきながら、自分の席に戻る。その背中には少し不満そうな空気が漂っていたが、勇希にはそれをフォローする余裕がない。
「いやー、朝から面白かったぜ。」
天保が机をトントンと叩きながら笑う。その笑い声を背中に感じながら、勇希は自分の席に腰を下ろした。
勇希は深いため息をつきながら天井を見上げた。しかし、その胸の中では不思議と新しい挑戦へのわくわく感が膨らんでいた。
俺、本当にこれで大丈夫なのか?
朝日が差し込む教室の窓から外を見ながら、勇希は自分にそう問いかけた。そして同時に、心のどこかで確信していた――。
いや、これでいいんだ。きっと。
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