表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
碧色閃光の冒険譚 ~竜の力を宿した俺が、美人魔導師に敵わない〜  作者: 帆ノ風ヒロ / Honoka Hiro
QUEST.01 ランクール編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/380

10 最悪の誤解


「そうですよ」


「なんで、おまえが答えるんだよ」


 シャルロットに不満を漏らした時だった。


「うひぇぇぇっ!」


 ナルシスが派手に飛び退いた。


「有名なのですか?」


 セリーヌが興味津々でこちらを見てくる。


「はい。ナルシスさんは史上最年少のランクC昇格者ですけど……リュシアンさんは史上最速のランクA昇格者なんです」


「ったく、余計なことを……」


「なるほど。さすがですね」


 セリーヌに認められるのは嬉しいが、照れくささの方が勝ってしまう。


「気付いたら上がってただけだ。二つ名なんて、ギルドから勝手に付けられたあだ名みたいなもんだ」


「またまた。二つ名は、特別な功績を挙げた方にしか贈られないんですから」


 にやつくシャルロットに肘で突かれ、返答に困る。


「名誉なことなのですね。(わたくし)もいつか、そんな二つ名をいただけるのでしょうか?」


「間違いねぇ」


 根拠はない。けれど、確信はある。


 規格外の美女。いや、破壊の申し子か。それとも、強欲の守銭奴か。

 美人で、天然で、愛嬌もある。いずれ、名が轟くだろう。


「リュシアン・バティスト。君を超える冒険者になってみせる」


 ナルシスは涙目で拳を握る。


「その前に、名付けの感覚を磨け。共闘は二度としねぇけどな」


「覚えていろ!」


 三流悪役のような捨て台詞を残し、ナルシスはギルドを飛び出していった。

 背を見送り、セリーヌが小さく笑う。


「楽しい方ですね。甘辛ボンゴ虫も、美味しい美味しいと涙を流して召し上がられて」


「あれを食わせたのか……」


 断れなかっただけだろう。あいつもあいつで、大変だったらしい。


 しかし、これでようやく一段落だ。

 俺の目的は道半ばだが、あとはランクールからの報せを待つしかない。


「依頼も終わったし、ここで解散か……セリーヌはどうするんだ?」


 別れを意識した途端、胸の奥がわずかにざわつく。


「しばらく、この街に留まるつもりです。探しているものが、近くにある気がするのです」


 その言葉に、ほっとする自分がいた。


「探しものなら、手伝わせてくれないか」


 気付けば、口が先に動いていた。


「あの~。何の話ですか?」


 シャルロットが険しい顔で割り込んでくる。


「こっちの話だ。詮索するな」


「ひどい……私という者がありながら、この人に手を出すつもりですか」


「は?」


 直後、セリーヌがゆっくり後ずさった。まるで、危険人物を見るような目だ。


「嘘をつくな! 俺が、いつシャルロットに手を出した? そんなことしたら、おまえの親父さんだって黙ってねぇだろ。怒りを買って、ギルドを除名されてるぞ!」


 シャルロットはセリーヌの前に立ちはだかり、両腕を広げた。


「気を付けた方がいいですよ。リュシアンさん、スケベで有名ですから。今だって、あなたの胸ばっかり見て……」


 セリーヌは純白の長衣を引き寄せ、胸元を覆う。


「誠実そうな方だと思っていたのに……」


「違うって言ってるだろ」


「それ以上は近付かないでください。あなたとの行動は、お断りさせて頂きます」


 小さく、しかしはっきりと告げると、彼女はギルドの扉の向こうへ消えていった。


「行っちゃいましたね……」


 シャルロットが呆れたように肩を竦める。


「おまえのせいだろうが」


「でも、胸は見てたんですよね?」


「完全には否定はできねぇ……」


「最低です。不潔です。やっぱりスケベじゃないですか」


 お下げを振り乱し、指を差される。


 こんな終わり方があっていいのか。

 胸の奥が、鈍く沈んでいった。


「シャルロット。おまえのせいだからな」


「やり過ぎちゃいました?」


 ぺろりと舌を出すシャルロットを残し、打ちひしがれたままギルドを後にした。


 夕暮れのヴァルネットは、人通りこそ多いのに妙に遠く感じる。

 石畳を踏む音も、屋台の呼び込みも、どこか上滑りして耳を抜けていった。


「これで本当に嫌われたら、どうしてくれるんだよ……」


「がう?」


 左肩のラグが首を傾げる。


 こいつにはわからないだろう。

 ようやく距離が縮まりかけた相手に、“スケベで有名”なんて誤解を植え付けられた男の絶望は。


「笑えねぇ……」


 胸の奥に残る鈍い痛みを誤魔化すように、人混みを掻き分けて歩く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ