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「さっきの女性、ウィル狙いね。あれをきっかけにして声をかけてくるかもしれないわ」
「嫌だよ、あんなとんでもない手口で君に近づこうとしたんだよ。願い下げだね。俺の愛してるのはルシアだけだよ」
(学院にミアを付けておいて正解だったな。物理的に遠ざけたとは聞いていたが。潰しておけば良かった。
ヒロインなのに俺に近づけないと訳の分からないことを言っていたと報告があったが実際に見ても頭が可怪しかった。ヒロインって何だよ。舞台か何か?あの手合には近づきたくないな)
「そう、嬉しい。次はレストランに行くの?」
「うん、予約しておいたんだ、楽しみだね」
微笑んでいるウィルを見ながらルシアは考えに浸っていた。
(ヒロインとヒーローってあんな出会い方だったかしら?奥さんとデート中なのに奥さんに声をかけるの?なんかイマイチの出会いだわ。小説では結婚前の夜会で困っているヒロインを助けて知り合うのに。ウィルは行かなかったのかしら?それで無理やり今日の出来事を起こしたの?隙だらけの作戦よね)
「ルシア着いたよ。ぼんやりとしてどうしたの。さっきの変な女のことを考えてたの?今日はデートなんだから俺のことだけ考えて」
ウィルの蕩けるような笑顔に意識を引き戻されたルシアは、エスコートされた腕にもう一度神経を集中させた。この人は私のものだ。絶対に渡さない。
ゆっくり食事をして帰ったら買った本の他に刺繍糸が届けられていた。
「まあ、絹の刺繍糸が50色もあるのね。こうして箱の中に並べられていると絵画みたいで綺麗。ありがとうウィル。なんて素敵なの。
これであなたのハンカチとシャツに刺繍をするわね。図案の本を買っただけでなく糸までプレゼントしてもらえるなんて思ってもいなかったわ。嬉しい!」
優しい夫の気遣いに心が温まる。
「この頃元気がなかっただろう?今日はルシアを楽しませるデートを企画したんだ。気に入ったのなら良かった。宝石の時より喜んでいるようだね」
「そんなことはないわ。貴方がくれるものは全て嬉しいもの。愛してるわ。ウィル」
ルシアは夫の首に抱きついて頬にキスをした。私の様子に気がついてくれていた。それがどうしようもなく嬉しい。
「俺も愛してる。ルシアが好きだよ」
抱きついてきた妻を軽々と抱き上げたウィルはそのまま寝室に直行をした。
勢いのまま朝を迎えた2人は気だるい甘さの中で目を覚ました。
「おはよう、お風呂に入ろうか」
「おはよう。うう~眠い。もう少しだけこのままでいたいわ。ね?」
「甘えるルシアも可愛いけど一緒にお風呂に入ろう。昨日は何も食べてないじゃないか。朝食にしよう」
「あっ!帰ってから直ぐ……。そういえばお腹が空いたわ」
思い出したルシアは真っ赤になった。
「ほら、さっぱりしてから食べよう。ここに運ばせるから」
お風呂に入っている間にシーツは替えられ朝食が運ばれていた。
「恥ずかしいから今日はここに籠りたい」
普通に使用人の顔を見れる気がしない。
「主夫婦が仲が良いのは使用人達にとっても良いことだ。ギスギスした関係は屋敷を暗くするからね」
「そうなのね。じゃあ頑張ってみる。でもウィルの為に刺繍をしたい。ハンカチならきっと直ぐに出来るわ」
「それは楽しみだ。でもゆっくりでいいよ。昨夜は無理をさせたから身体を休めて。午後のお茶には付き合える。夕食も一緒に食べよう。愛してるよルシア」
真っ赤になった妻が可愛すぎる。
「私も愛してるわ、ウィル」
俯きながらやっと絞り出した細い声が愛おしい。
君は可哀想で可愛い少女から咲き誇る薔薇のように美しい俺の妻になった。
一生知らなくていいけどあの冷たい檻の中の君を救い出したくて頑張ったんだ。しょっちゅう会いに行ったし会いに来てもらった。好きになって欲しくて…。
17才の俺は随分頑張ってプロポーズをした。あの時震えたのを忘れたことはない。一生に一度だけのプロポーズだ。
他の女の心配なんてしなくて良いよ。君を悩ませるものなど排除するだけだ。
読んでいただきありがとうございます!




