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真実の愛で捨てられる妻に転生してしまった!  作者: もも


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3/8

 ……もしも、もしも離縁をしたら何をして生きていこう。


せっかく縁が切れたのだ。実家には戻らない。


慰謝料で小さな家を買い得意な刺繍をして売ろうか。それとも小さな貸本屋をして暮らす?

1人で生きていけるだけの金額は欲しい。


こっちは一生に一度の愛を諦めるのだ。それくらいの誠意は見せて貰いたい。






でもまずは諦めずに攻めようとルシアは思う。

お色気は無理な気がするが、前世に女は度胸という言葉があったではないか。

セクシーなナイトウェアを取り寄せよう。新婚だしね。


夫を虜にする作戦を教えてと言えば、きっと侍女達も協力してくれるはず。

既婚者が多いのだ。この屋敷には。

先輩達の意見を聞いてみよう。



料理も良いかも知れない。食べたことがない珍しい料理を出して喜んでもらうのはどうだろう。豚の生姜焼きとか…。天ぷらとか…。大根おろしにお醤油を垂らして…。うーん美味しそう。思い出したらお腹が空いてきた。

パンにも合うのかな?ご飯が食べたい。

この世界にお米や醤油があるのか調べてみる?

でも最初から生姜焼きってどうなの。引かれたらどうする?

無難に手作りお菓子にしておくべきよね。


ルシアの頭の中は色々な考えが万華鏡のようにぐるぐると渦を巻いた。








 ウィルヘルムはルシアが熱を出して寝込んでから、何か悩んでいる時間が多くなったと感じていた。

実家の事でも思い出して悩んでいるのだろうか?


侯爵家は経営が上手くないようだが現状は維持している。2女が婿を取り跡を継ぐというのは調べている。相手は子爵家の2男だ。

無関心は続いているが何か仕掛けて来るようなら潰す。

ルシアの心を悩ませるものなど必要はない。




「ルシア様のことが心配なのか?気になるなら部屋に行ってくればいいんだよ。さっきから仕事が捗っていないじゃないか」

側近のブランが勧めてくれた。彼は乳兄弟で遠慮がない。



「ああ、そうだな。行ってくるよ」


見れば机の上の書類が殆ど減っていない。自分でもこんなことは珍しいと思う。

ウィルヘルムは仕事を諦めて妻の元へ急いだ。






 銀色の絹糸を垂らしたような美しい髪を揺らし、ルシアが物憂げに窓の外を見つめていた。


後ろから抱きすくめ肩に顔を乗せた。


「何を考えているの?」


「わっ!驚いた」

ウィルのさらさらの金髪が首筋に当たって擽ったい。


「ねえ、何を悩んでるの?俺には言えないこと?考え込んでたよね。ノックをしたのに返事がなかった」


ウィルが拗ねている。いつも年上の余裕を見せている夫が甘えてくるのって可愛い。

耳の側で話すので熱い息がかかる。どうしよう、色っぽい。


これもストーリーの内なの?上げて落とす的な?もやもやするがウィルは何も知らないのだから普通にしなければ。


「ウィルのことを考えていたの。昔父親の気まぐれで公爵家に連れて行ってもらえて幸運だったなって思ってた。まさか優しいお兄さまが旦那様になるなんてあの時の私は思っていなかったもの」


「ふうん、それは光栄だ。君は昔から可愛らしい人だったからね。知り合えて嬉しかったのは俺も同じだよ。

小さくても媚びを売ってくる女は山ほどいたけど、ルシアは違った。遊んであげると本当に嬉しそうだった」


「えっ!子供なのに媚びてくるの?みんなませてるのね」


「親の言いつけだろうな。家の為に公爵家に縁を繋げとかさ、うんざりしてた。最初は君もそうかなって警戒したけど違った。友達を欲しがっている寂しがり屋の子供だった」


「そんなことまでバレてたの?ウィルは凄いね。人を見る目があるのね」


身体の向きを変えてルシアがキラキラした目で見つめてきた。


「…可愛い。このまま離したくない」


「ウィルったら仕事はいいの?」


この様子だとまだヒロインとは会っていないのかもしれない。嬉しくなり甘えてみた。


「ルシアのことが心配で仕事が手につかない」

声が熱を含んでいる。


(そんな人が私を捨ててまで選ぶヒロインは素敵な人なんだろうな。確かマリアという名前だった。あれ?確か学院にもそういう名の人がいたような気がする。でも女性には多い名だわ。ヒロインとは限らない)

ルシアは迷走しそうな考えを追い出した。


「屋敷にばかりいないで出かけてみようか?結婚してからデートしていなかっただろう」

ウィルヘルムは妻の目が一瞬曇ったのを見逃さなかった。



「街に行くの?久しぶりね。楽しみだわ」

ぱあっと花が咲いたように笑うルシアを見てウィルは全力で妻に楽しんで貰おうと決めた。









 ルシアは腕まくりをして小麦粉と奮闘していた。

「まずは胃袋を掴んでみせるわ。よそ見できないように頑張る」


前世ではお菓子作りが好きだった。分量は覚えている。基本の材料はバターに小麦粉、卵に砂糖だ。プレーン味とチョコ味から挑戦した。


奥様がお菓子を焼くのか?火傷をするぞ。オーブンは任せて貰おうと意気込むシェフ達の力を借りて初めてのクッキー作りは成功した。

厨房には甘い匂いが充満し、味見をしたシェフから合格をもらった。


にこにこ顔のルシアは午後のお茶に手作りクッキーを差し出した。


妻の手作りクッキーを喜んだウィルから甘いお返しがあったのは言うまでもない。

読んでいただきありがとうございます!

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