第10話 そんな選択肢はなかった
中庭から部屋へ戻ると、誰の表情もさっきより硬くなっていた。
誰も席を立っていない。
いや、もともと軽くはなかった。
王城の一室で公爵が二人いて、第一王子と宰相までいる。
軽くなる要素がない。
それでも、さっきまでは焦げた手帳という形のあるものを相手にしていた。
今は違う。
ミリア・ベルティナ。
あの少女が何を知っているのか。
誰もそれを測りかねていた。
エレオノーラは俺の横に座った。
指先はもう袖から離れている。けれど、その手は膝の上で固く握られていた。
俺はそれに気づいた。
言えば彼女はすぐ手をほどくだろう。
強がりの熟練度が高すぎる。
困ったものだ。
ユリウス殿下がフェリクス殿へ目を向けた。
「ボルマンは何と言っている」
「ミリア嬢に頼まれたと。最初は証言の整理だけだったそうです」
「証言の整理」
ラウレンツ宰相が低く復唱した。
その言い方がもう嘘くさい。三割増しくらいで。
「はい。学園内でレインフォード公爵令嬢に不満を持つ者を探し、その証言をまとめるよう頼まれたと」
「その段階で副学園長が動く理由はないな」
父上が切った。
切れ味がすごい。包丁なら料理人が泣いて喜ぶ。
フェリクス殿はうなずく。
「ボルマンは金銭を受け取っています。さらに、昇進の口添えを約束されたとも」
「誰が」
「ミリア嬢です」
誰かが椅子を引きかけ、短い音だけが残った。
下級貴族の娘が副学園長の昇進を約束する。
普通に考えれば笑い話だ。
だがボルマンは乗った。
ということは、彼には信じる材料があった。
ミリアなら王子たちを動かせる。
そう思わせる何かが。
「ボルマンは、ミリア嬢が殿下方の好みを詳しく知っていたと話しています」
フェリクス殿は紙を見た。
読み上げる声に少し苦みが混じる。
「レオンハルト殿下は正義を口にすれば動く。カイル殿は守るべき相手を見せれば前に出る。セドリック殿は理屈を与えれば勝手に補強する。ノエル殿は孤独を見せれば寄り添う」
俺は机の木目を見た。
手帳にあった内容と同じだ。
違うのは、それを実際に使った者がいること。
人の弱いところを覚えておくこと自体は、責められる話じゃない。友人の嫌いな食べ物を覚えるのも、相手が傷つく言葉を避けるのも同じだ。
でもこれは違う。
鍵束だ。
心の鍵穴に合う鍵を並べている。
「ミリア様は、どうしてそれを知っていたのでしょう」
エレオノーラが言った。
静かな声だった。そのぶん刺さる。
「学園で親しくなったから。そう答えるでしょうね」
ユリウス殿下が言う。
「実際、彼女は殿下方と近かった。表向きはそれで通る」
「表向きは、ですね」
「ああ」
ユリウス殿下は目元を押さえた。
第一王子も大変だ。
弟が大暴走して、ヒロインが妙な方向に読めない。
俺なら胃薬を箱で持ち歩く。
「問題はボルマンの次の証言です」
フェリクス殿が言葉を続けた。
「ミリア嬢は、調査の前から存在しない証拠の場所を知っていたそうです」
「存在しない証拠の場所?」
声が出た。
「はい。たとえば、ある令嬢の手紙箱にレインフォード公爵令嬢の名を使った手紙を入れればよいと指示した。別の男子生徒には、訓練場の倉庫に偽の証拠を隠すよう言った。まだ何も作っていない段階で、どこに何を置けば自然に見つかるかを話していたと」
「準備がよすぎるな」
父上が言った。
「準備というより」
俺は口を開きかけて止めた。
言葉にすると変だ。
けれど、どうしてもそう思えてしまう。
ミリアは計画を組み立てたというより、知っている場所に物を置き直している。
そんな感じがした。
ユリウス殿下が立ち上がる。
「ミリア嬢を呼ぶ」
オスカー公爵の眉が動いた。
「この場にですか」
「ええ。もう証人扱いのまま進める段階を過ぎた」
「娘を同席させる必要は」
オスカー公爵の声が低くなる。
父親の声だった。
エレオノーラが先に口を開く。
「私は残ります」
「エレオノーラ」
「父様。ここで外に出ても、聞かされる言葉は変わりません」
オスカー公爵は娘を見た。
止めたいのだろう。
とても止めたい顔だった。
でもエレオノーラは目をそらさなかった。
「私の名前が使われました。私の立場が奪われかけました。なら、私が聞きます」
オスカー公爵は一度だけまばたきをした。
「無理をするな」
「はい」
オスカー公爵の眉間にしわが寄った。
俺はこっそり手を伸ばした。
机の下で、彼女の袖に指先だけ触れる。
エレオノーラが一瞬だけこちらを見た。
怒られるかと思ったが、怒られなかった。
その手がほどけることはなかった。
ミリアが部屋に入ってきた。
白いドレス。淡い桃色の髪。大きな目には涙が浮かんでいる。
普通なら守ってやりたくなる姿だ。
そういうふうに見えるよう、何度も磨かれた姿だ。
「ユリウス殿下……わたし、何か悪いことをしたのでしょうか」
声が震えていた。
上手い。
前世で妹がやっていた乙女ゲームなら、ここで柔らかい音楽が流れたかもしれない。
だがここは王城の取調室みたいな部屋だ。
音楽は流れない。
流れるとしたら胃に悪い沈黙くらいである。
ユリウス殿下は座ったまま言う。
「ミリア・ベルティナ。ボルマン副学園長が、君の名を出した」
「ボルマン先生が?」
「君から指示を受けたと話している」
「そんな……わたしはただ、エレオノーラ様にいじめられていると相談しただけです」
ミリアは両手を胸の前で握った。
視線を落とす。弱々しい。
だが俺は見た。
彼女の目が一度だけエレオノーラを見た。
次に俺を見た。
その瞬間だけ、涙の色が消えた。
「相談しただけなら、なぜ証拠を隠す場所まで知っていた」
ラウレンツ宰相が言う。
「知りません。そんなこと、わたしには」
「訓練場の倉庫。女子寮東棟の古い手紙箱。礼拝堂裏の花壇。ボルマンはこれらを君から聞いたと証言している」
ミリアの指がぴくりと動いた。
「……偶然です」
「まだ場所しか言っていない。そこに何があるかは聞いていない」
ユリウス殿下の声は冷たかった。
ミリアの唇が止まる。
短い沈黙。
エレオノーラがミリアを見ていた。
怒りとも恐れとも違う。
何かを見極めようとしている目だ。
「ミリア様」
エレオノーラが呼んだ。
ミリアの顔が少し歪む。
「あなたは、私をいつからご存じだったの?」
「学園でお会いしてからです」
「本当に?」
「ええ」
「あなたは先ほどから、私を知っているように話すわ。いつも怒っていた。いつも邪魔をした。最後には全部なくす。そんなふうに」
ミリアの顔が固まった。
「それは……学園でのことです」
「私はあなたと、いつもと言えるほど話した覚えがありません」
エレオノーラは静かだった。
「あなたは、どの私を見ていたの?」
ミリアの目が揺れた。
その揺れは大きくない。
普通なら見逃す。
でも俺は見逃せなかった。
彼女は今、答えを選んでいる。
嘘を作る顔とは少し違った。
ありすぎる答えの中から、ここで言っていいものを探している。
「あなたはいつもそう」
ミリアがか細い声で言った。
椅子の背に置かれていた手が、いくつか動きを止めた。
「冷たい顔でわたしを見るの。わたしが何を言っても信じない。殿下にふさわしくないのに、婚約者だからってそばにいて」
「ミリア様」
ユリウス殿下が止める。
だがミリアは聞いていない。
「最後には全部なくすのに。いつもそうだったのに。どうして今回は、そんなふうに立っているの」
俺の背中に冷たいものが落ちた。
今回は。
今、そう言った。
エレオノーラも気づいた。
彼女の指が机の縁に触れる。
「今回は、とはどういう意味かしら」
ミリアの表情が戻った。
一瞬で、泣きそうな少女の顔になる。
「言い間違いです」
「そう」
「怖くて、混乱して……」
「では、いつも、というのも言い間違い?」
「……はい」
エレオノーラはうなずいた。
「わかりました」
ミリアの肩から力が抜ける。
だが次の瞬間、エレオノーラは続けた。
「私は信じません」
ミリアが顔を上げる。
「あなたの涙も、震えた声も、私を見下ろしていたあの目も。今は何一つ信じません」
「エレオノーラ様……」
「その名を、そんなふうに呼ばないで」
静かな声だった。
でも、部屋の誰も口を挟めなかった。
ミリアは唇を噛んだ。
涙が頬を落ちる。
綺麗な涙だった。
悔しいほど絵になる。
だが、もう誰もすぐには動かなかった。
レオンハルト殿下だったら動いただろうか。
昨日までなら、動いた。
剣に手をかけて、エレオノーラを責めたかもしれない。
今日は違う。
レオンハルト殿下はこの部屋にいない。
そしてこの部屋にいる者たちは、もうミリアの涙だけを見てはいなかった。
「……どうして」
ミリアがつぶやいた。
その声が低くなる。
「どうして誰も選ばないの」
誰も動かなかった。
ミリアは自分の手を見た。
まるで、そこにあるはずのものが消えているか確認するように。
「この場面なら、誰かがわたしを庇うはずなのに」
ユリウス殿下の目が鋭くなった。
「場面?」
ミリアははっとした。
「違います」
「何が違う」
「違うんです。そんな意味じゃ」
「ではどういう意味だ」
ミリアは答えなかった。
フェリクス殿が一歩前へ出る。
近衛も動いた。
その時、扉が叩かれた。
入ってきたのはベルトラム殿だった。
彼は一礼し、ユリウス殿下へ告げる。
「レオンハルト殿下が、ミリア嬢と話をしたいと申されています」
ミリアの顔がぱっと明るくなった。
その変化が恐ろしかった。
泣いていた少女が、助け舟を見つけた顔になった。
「殿下が……」
彼女は微笑んだ。
昨日までなら、その笑みで誰かが味方についたかもしれない。
ユリウス殿下はしばらく考えたあと、短く命じた。
「入れろ」
オスカー公爵の顔が険しくなる。
父上も黙ったままだ。
俺はエレオノーラを見た。
「大丈夫か」
「大丈夫なわけがないわ」
彼女はそう言った。
「でも、逃げない」
俺はうなずいた。
扉が開く。
レオンハルト殿下が入ってきた。
昨日より顔色が悪い。髪も少し乱れている。
王子様のきらきらした感じはどこかへ行っていた。
代わりに、眠れなかった男の顔があった。
「レオンハルト様!」
ミリアが一歩前に出た。
近衛が止めようとする。
だがレオンハルト殿下が手で制した。
彼はミリアを見た。
それからエレオノーラを見た。
最後に俺を見る。
目が合った。
恨まれるかと思った。
でも違った。
その目にあったのは、ひどく情けない迷いだった。
「ミリア」
「はい。わたし、怖かったんです。皆さんがひどいことを言って……でも殿下なら、わかってくださいますよね」
ミリアは泣きながら笑った。
「だって殿下は、いつもわたしを選んでくれたもの」
レオンハルト殿下の顔が強ばる。
「いつも?」
ミリアの笑みが止まった。
「いえ、あの」
「俺は君を選んだ。あの日、エレオノーラを斬ろうとした」
レオンハルト殿下は自分の手を見た。
「この手で」
「殿下。それはエレオノーラ様が」
「黙れ」
短い言葉だった。
ミリアの目が見開かれる。
俺も少し驚いた。
昨日の第二王子なら、そんな声でミリアを止めることはなかったはずだ。
レオンハルト殿下は唇を震わせた。
「俺は……君を信じた。いや、違う。信じたかった。エレオノーラを悪だと決めれば、俺は正しい王子でいられた。君を守る者でいられた」
エレオノーラは何も言わない。
「証拠など見ていなかった。彼女の言葉も聞いていなかった。最初から聞く気がなかった」
レオンハルト殿下はエレオノーラへ向き直った。
「俺は、婚約者としても王族としても失格だ」
部屋に、誰かの息を呑む音がした。
ミリアは信じられないものを見る顔をしていた。
「どうして」
彼女が言った。
「どうして、そんなことを言うの。あなたはそんなふうに謝らない。あなたは最後までわたしを守ってくれるでしょう。だって、それがあなたの役目で」
そこで、ミリアは口を押さえた。
遅い。
今の言葉は全員が聞いた。
役目。
レオンハルト殿下の顔から血の気が引いた。
「役目、だと」
ミリアは首を振る。
「違うの。違うのよ。わたしはただ、幸せになりたかっただけ。今度こそ、みんなで」
「今度こそ」
ユリウス殿下が言った。
ミリアの肩が震えた。
もう取り繕えない。
いや、本人はまだ取り繕おうとしている。
けれど穴が多すぎる。
水を入れた桶の底に、剣で穴を空けたみたいな状態だ。
俺なら泣く。
ミリアは俺を見た。
さっきまでの涙は消えていた。
「あなたが悪い」
低い声。
さっきまでの可愛い声が、そこには残っていなかった。
「あなたがエレオノーラを助けたから。あなたが本来の場所から出てきたから。全部がおかしくなった」
「本来の場所ってどこだよ」
俺は聞いた。
聞かずにはいられなかった。
ミリアは笑った。
泣き笑いにも見えた。
「どこでもないわ。あなたは、どこにもいないはずだった」
記録官の羽ペンが止まる。
「幼い頃に少し名前が出るだけ。エレオノーラの思い出の端っこにいるだけ。断罪の日に剣を持って現れる人じゃない。殿下を止める人じゃない。わたしの邪魔をする人じゃない」
俺は息を止めた。
ほぼ合っている。
前世で見た、はなはじの情報と合っている。
悪役令嬢の幼馴染。
生い立ちの説明に一文だけ出るモブ。
でも、それをこの世界の人間であるミリアが言うのはおかしい。
おかしすぎる。
「ミリア様」
エレオノーラが口を開いた。
その声は震えていなかった。
「あなたが何を知っているのか、私にはわかりません。けれど一つだけ言えます」
ミリアはエレオノーラを見る。
「アルトはここにいます」
エレオノーラはまっすぐ言った。
「私の思い出の端に置いておくつもりはありません。アルトは私の隣にいます。あなたがそれを邪魔だと思うなら、私は何度でも言います。私がそう望んでいます」
ミリアの顔が歪んだ。
怒り。
悲しみ。
焦り。
それから、どうしようもない恐怖。
「違う」
彼女はつぶやく。
「そんな選択肢はなかった」
選択肢。
俺はその言葉を頭の中で拾った。
レオンハルト殿下も気づいたらしい。
彼はミリアを見る目を変えた。
恋に浮かされていた時の目とは違う。
自分が何に触れていたのか、ようやく気づいた男の目だ。
「ミリア。君は俺を何だと思っていた」
ミリアは答えない。
「俺は君の何だった」
「……レオンハルト様は」
ミリアは笑おうとした。
でも笑えなかった。
「わたしを愛してくれる人です」
「人、か」
レオンハルト殿下は唇を噛んだ。
「君の言葉を聞いていると、そうは思えない」
ミリアの顔が真っ白になった。
その一言は、どんな証拠より効いた。
ミリアはよろめいた。
近衛が支える。
「本日はここまでだ」
ユリウス殿下が命じた。
「ミリア・ベルティナを別室へ。監視を倍にしろ。誰とも単独で会わせるな」
「はい」
近衛たちがミリアを連れていく。
彼女は最後まで俺を見ていた。
知らないはずの相手を見る目。
あるはずのない石につまずいた人間の目。
扉が閉まる直前、ミリアの唇が動いた。
声はほとんど聞こえなかった。
でも俺には、そう聞こえた。
「やり直せないのに」
扉が閉じた。
誰もすぐには話さなかった。
レオンハルト殿下は椅子に座り込んだ。
エレオノーラは机を見つめている。
ユリウス殿下は目を閉じていた。
俺は自分の手を見る。
何も変わらない手だ。
剣を握って震えた手。
エレオノーラの前に出た手。
ミリアにとって、俺は本来いないものらしい。
知るか。
俺はここにいる。
エレオノーラもここにいる。
レオンハルト殿下も、今ようやく自分の罪の前に座っている。
ここに画面はない。
誰かの選択肢で人が消えていい場所でもない。
「アルト」
エレオノーラが俺を呼んだ。
「何だ」
「先ほどの言葉、少しうれしかったわ」
「先ほど?」
「本来の場所ってどこだよ、の話じゃないわ」
「そっちじゃないのか」
エレオノーラは口元を緩めた。
「私の隣にいてくれること」
俺は黙った。
父上の視線を感じる。
オスカー公爵の視線も感じる。
ユリウス殿下の視線まで来た。
やめてほしい。
こういう場で全員に見られると、俺の中の小心者が土に潜ろうとする。
でも、ここで茶化すのは違う。
「ああ」
俺は短く言った。
「いるよ」
エレオノーラは視線を落とした。
耳が少し赤い。
その様子を見て、レオンハルト殿下が息を吐いた。
後悔の息だった。
彼は椅子に手をついて立ち上がる。
「エレオノーラ」
オスカー公爵の目が鋭くなる。
父上も少し動いた。
レオンハルト殿下はそれでも続けた。
「謝罪をさせてほしい」
エレオノーラは彼を見た。
「今ここで、ですか」
「ああ」
「私は受け取る準備ができていません」
レオンハルト殿下の顔が揺れた。
「そうか」
「はい」
エレオノーラはまっすぐ座っている。
「ですが、あなたが自分の罪を見ようとしていることはわかりました」
レオンハルト殿下は唇を噛んだ。
「それだけで、今は十分です」
「……俺は」
「殿下」
エレオノーラの声が少し強くなる。
「私は、今すぐ許せるほど優しくはありません」
静かな言葉だった。
レオンハルト殿下は深く頭を下げた。
王子が公爵令嬢へ頭を下げる。
本来なら大騒ぎになる光景だ。
でも誰も止めなかった。
ユリウス殿下も、ラウレンツ宰相も。
父上もオスカー公爵も。
エレオノーラはそれを見ていた。
勝った顔とは違った。
すっきりした顔でもない。
ただ、自分の足で立っている顔だった。
俺はそれを見て、ようやく思った。
ああ。
助けられたのは俺の方かもしれない。
彼女が立ってくれたから、俺はまだ前を向ける。
ユリウス殿下が重い息を吐いた。
「調べることが増えたな」
「増えましたね」
俺はうっかり返した。
父上の視線が来る。
はい、すみません。
今のは余計でした。
だがユリウス殿下は苦笑した。
「アルト殿」
「はい」
「君の存在は、どうやら我々が思うより大きな意味を持っているらしい」
「ものすごく嫌な言い方ですね」
「事実だ」
それも嫌だ。
俺はため息を押し殺した。
悪役令嬢の幼馴染。
ゲームではほぼ名前も出ないモブ。
そのはずだった俺が、ミリアにとっては最大の邪魔者になっている。
俺はエレオノーラを見た。
彼女はまっすぐ前を向いている。
なら、まあいいか。
モブだろうが邪魔者だろうが関係ない。
俺は彼女の隣にいる。




