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第4話 死界輪廻

「あなたは、“人間”じゃない」


 


その言葉は、

黒煙と悲鳴に満ちた王都の中で、

異様なほど静かに響いた。


 


セレスの思考が止まる。


 


「……は?」


 


理解が追いつかない。


 


人間じゃない?


自分が?


 


「ふざけたことを……」


 


立ち上がろうとした瞬間、

全身を激痛が貫いた。


 


黒い侵食が、

胸元まで広がっている。


皮膚の下を“闇”が這っていた。


 


「動かないで!」


 


リリアが叫ぶ。


 


「その侵食は、“向こう側”と繋がってる……!」


 


「向こう側……?」


 


リリアは空を見上げた。


裂けた空間の奥。


巨大な瞳。


世界の外に存在する“何か”。


 


「あれは《外界》の存在」


 


彼女は静かに言った。


 


「この世界を観測している者たち」


 


「観測……?」


 


意味がわからない。


 


だが。


482回もの死を繰り返したセレスには、

ひとつだけ理解できることがあった。


 


——この世界は普通じゃない。


 


死ねば戻る。


運命は修正される。


決められた死から逃れられない。


 


そんな世界、

最初から壊れている。


 


「じゃあ俺は何だ」


 


セレスは低く問う。


 


「なんで俺だけ戻る」


 


リリアは一瞬だけ目を伏せた。


 


そして。


 


「……“死界輪廻”」


 


その単語を口にした。


 


「あなたに埋め込まれた禁忌術式の名前」


 


ズキン——!!


 


頭痛。


 


脳裏に断片的な記憶が流れる。


 


白い部屋。


拘束具。


無機質な声。


 


『13番目、死亡確認』


『術式再起動』


『時間逆行開始』


 


「ぐっ……!」


 


セレスは頭を押さえる。


 


今まで見えなかった記憶。


だがこれは——。


 


自分の記憶だ。


 


「俺は……実験体……?」


 


掠れた声が漏れる。


 


リリアは頷かなかった。


否定もしなかった。


 


それだけで十分だった。


 


「……はは」


 


笑いが零れる。


 


482回。


死に続けた理由。


戻り続けた理由。


 


全部、

“誰かに作られた仕組み”だった。


 


「ふざけるな……!」


 


怒りが込み上げる。


 


何度も絶望した。


何度も苦しんだ。


誰も救えず、

自分も壊れていった。


 


その全てが。


 


“実験”だったというのか。


 


ゴォォォォ……


 


その瞬間。


空の裂け目がさらに広がった。


 


黒い霧が王都へ降り注ぐ。


触れた人々が次々と倒れていく。


 


「いやぁぁぁ!!」


「助けて!!」


 


皮膚が黒く侵食され、

人々は苦しみながら崩れ落ちる。


 


セレスは歯を食いしばった。


 


「リリア」


「……なに」


 


「止める方法はあるのか」


 


リリアは静かにセレスを見つめる。


 


「本当なら、まだあなたは知らないはずだった」


 


「答えろ」


 


彼女は少しだけ迷い、

そして口を開いた。


 


「……黒い月を壊すしかない」


 


セレスの瞳が揺れる。


 


黒い月。


七日後に現れる終焉。


 


「あれが全ての原因?」


「うん」


 


リリアは空を見上げた。


 


「でも今までのあなたは、一度も辿り着けなかった」


 


482回。


一度も。


 


セレスは拳を握る。


 


「じゃあ今回は違う」


 


黒い侵食が腕を蝕む。


激痛は続いている。


それでも。


 


セレスは立ち上がった。


 


「全部壊してでも終わらせる」


 


その瞬間。


 


——ドクン。


 


セレスの胸が脈打った。


 


赤黒い紋様が、

胸元から浮かび上がる。


 


リリアの顔色が変わる。


 


「それ……!」


 


紋様は全身へ広がっていく。


 


魔力が暴走する。


 


空気が震えた。


石畳が砕け、

周囲の瓦礫が浮き上がる。


 


セレスの赤い瞳が、

禍々しい黒へ染まり始める。


 


「……なんだ、これ……」


 


すると。


 


頭の奥から、

知らない声が響いた。


 


『適合率上昇』


『“終末核” 起動開始』


 


「ッ!?」


 


瞬間。


 


セレスの背後に、

巨大な黒い魔法陣が出現した。


 


王都中の魔力が、

一斉に吸い寄せられていく。


 


リリアは震えた声で呟く。


 


「嘘……」


 


彼女は青ざめた顔で、

セレスを見つめた。


 


「もう“目覚め”始めてる……」

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