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第69話「THE HERO WAS FALLING DOWN」

勇者の旅路 その果ては何か

何も掴めぬ 右の手に問う


答える者など あるはずもない

剣を失くした 愚者を除いて


 今行くぞ、俺の理想郷(ユートピア)


 垣根の頂上に右手を掛ける。


 深呼吸を一つしてから、右手に力を入れ、遂に垣根の向こう側に身を乗り出そうとした、その時だった。


 顔面に目掛けて高速で飛んでくる水球。当然避ける術などなく……


「ギャーノ!」


 衝撃でバランスを崩した俺は、男湯側へ真っ逆さまに落下。そのまま背骨を強打したのであった……。


 ***


「今……誰かいなかった?」


「私には見えなかったけど……」


「アンタは明後日の方向見てたんだから、そりゃそうでしょうよ」


「猿かなんかだろ」


 どこかから上がった奇声と物音に怪訝そうな反応をする一同。しかし、目下の問題はまた別であった。


「どうしようかしら、このお湯……」


「ゴキの出汁入りかあ……」


「いいだろ、それくらい。どうせ温泉なんて誰かしら小便してんだ。気にしたら負けだ負け」


「余計気持ち悪いこと言わないでくれるかしら……」


「わ、私は遠慮しておきます……」


 ***


 うおお……。背中が痛い……。


 あまりの激痛に動けないでいると、顔面に何やら黒茶色の物が降ってきた。


 一瞬だけ見えたシルエットと色。鼻に触れる昆虫の足や触覚の感触。コイツはまさか……。


「うっきゃあっ!」


 その正体が分かり、思わず飛び上がる。しかし、飛び上がった先に足場はなく、湯船へとダイブしてしまった。


 ***


「またすごい音がしたわね……」


「猿が喧嘩でもしてんだろ」


 可能な限りお湯を入れ替え、アオイを除く三人は湯船に入ることにした。複雑な気分ではあるが、ここまで来て入らないのも、それはそれでもったいない。


 それに、入ってしまえばなんだかんだで気持ちが良かった。


 ***


 うう、寒い……。


 ずぶ濡れになって重くなってしまった服をしぶしぶ脱ぎ捨て、肌寒い秋の空気の中、生まれたままの姿で垣根をよじ登る。


 何が俺をここまで駆り立てるのか。当初の目的はすでに忘れてしまったが、ここまで来て登れずに帰る訳にはいかない。


 ***


「何かあの垣根、ずっとミシミシ言ってないかしら……?」


 不自然に揺れる垣根を指差すカリン。


「猿がよじ登っってんのか? 流石にこっち来られても困るな……」


「猿にしてはデカくないかしら……?」


 カリンと店長が対処に困っていると……


「任せて」


 そう言ってノアが呪文を唱えた。


 ***


 あと少し、あと少しだ……!


 手先は凍えて力が入らず、おまけにずぶ濡れですぐ滑る。しかし、そんな困難も乗り越え、ようやく頂上が見えてきた。


 眼前の栄光に向かって、その右手を伸ばそうとした刹那。ふと、股間のあたりに感じる違和感。下を見てみると、そこには紫色の禍々しい球体が蠢いていた。


 こ、これはまさか? ネトール四天王が最後の一人()()()()()()の必殺技、「去勢(スフィア)(オブ)紫球(カストレイション)」では……?


 しかし時すでに遅く、次の瞬間、人生最大の痛みが彼の股間を襲い、敢え無く気絶した勇者はそのまま地へと堕ちて逝ったのだった。 

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