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第65話「無観客試合」

「ゲーム ジャコビッキ&フェラーリ! フォー ゲームス トゥー ワン!」


 第5ゲームは、またしてもジャコビッキのサーブ4球で片づけられてしまう。


 続く第6ゲーム。ジャコビッキとフェラーリは徹底したリサ狙いに切り替え、カリンにボールを回さない作戦に出た。リサも粘ってはいるが、ありとあらゆる打球に追いついてしまうフェラーリを前に、埒のあかない展開に持ち込まれてしまう。


 痺れを切らし、無理矢理ボールに手を出すカリンであったが……


「アウト! ゲーム ジャコビッキ&フェラーリ! ファイブゲームス トゥー ワン!」


 サーブと違い、生きた打球を返すにはまだ制御が効かず、渾身のスマッシュも白線の外側に着弾したのだった。


 ***


「いよいよ追い詰められてしまいましたな……」


 神妙な面持ちのフォンデュ。


「いや、尿臭ひどいからこっち来ないで……」


 そんなフォンデュを、カリンとリサは鼻を摘みながら遠巻きにする。


「もうフィギュアは諦めましょう、フォンデュさん……。仮にここから連続でゲームを取れたとしても、ゲームカウント3-5で迎える第9ゲームにジャコビッキさんのサービスゲームが待っています……。もう詰みです……」


「ぐぬぬ……。しかし、限定フィギュアを諦める訳には……」


 歯軋りをしながら考えこむフォンデュ。と、その時だった。


「限定フィギュアってこれのこと?」


 何故か客席に戻ってきたノアの姿が。その手には何やら箱の入ったレジ袋がぶら下げられている。


「そ、それはまさしく! 限定フィギュア!? ノ、ノア氏、それをどこで!?」


「え? そこの売店に売ってたけど……って臭っ。ちょっと、こっち来ないでくれる……?」


 ノアはフォンデュの悪臭に気付くと顔をしかめ、鼻を摘んで後ずさりながら言った。


「売店? そんなバカな!? このフィギュアは優勝商品限定のはずでは……?」


 フォンデュはリュックからしわくちゃになったチラシを取り出し、それを広げて中を確認する。そこには「かいじょうげんてい ロゼちゃんフィギュア」とミミズの這いつくばったようなグチャグチャな文字で書かれていた。


「あ……。確かによく見ると『ゆうしょうげんてい』じゃなくて『かいじょうげんてい』って書かれている気がしてきたでござる……。もっとも、字が汚すぎて何とも言えませんが……」


 フォンデュにポスターのオモテ面を向けられ、中身を読んでみるカリンとリサ。


「酷いわね、これ……。今どき3歳児でももっと綺麗な字を書くと思うんだけど……」


「とにかく。そうと分かればこうしてはいられませんぞ! 売店に急がなくては!」


 一目散に売店へ駆け出すフォンデュ。その途中で一度だけ振り向くと、


「あ、もう試合とかどうでもいいのでテキトーに流していいでござる」


 とだけ言い残して、客席の奥へと消えてしまった。


 ***


「ゲームセット ウォンバイ ジャコビッキ&フェラーリ! シックス ゲームス トゥー ワン!」


 そんなかんなで迎えた第7ゲーム。カリンもリサも微動だにせず、フェラーリの緩いサーブ4球であっさり終わったのだった。


「優勝おめでとうございます。ジャコビッキ&フェラーリ ペアには賞品として、トイレブラシ1年分が贈呈されます」


「よっしゃあ! これでついに、彼女の家のトイレ掃除ができるぜ!」


 すっかり無観客となった会場。ウグイス嬢のアナウンスと、勝者の雄叫びだけが響き渡った。

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