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第64話「ホームランクイーン」

 続く第三ゲーム。サーバーはフェラーリ。


 コントロール重視の緩いサーブが打ち込まれる。


「パワーショットなら決まる可能性が高いでござる」カリンの脳裏にフォンデュの言葉がよぎる。ならば、ここで取るべき選択は一つ。強烈なリターンでリターンエースを狙う。


 カリンが思い切り振り抜いたラケットは、フェラーリの緩いサーブを真芯で捉える。強烈な打球が相手コート目掛けて飛んでいき……


「カリン選手 今シーズン 第1号ホームランでございます。 おめでとうございます」


 綺麗な放物線を描き、スタンドに吸い込まれていった。ウグイス嬢のアナウンスが会場に響き渡る。


「いや、何よこのアナウンス!? 野球用じゃない!?」


「カリンさん、流石は『B組のホームランクイーン』ですね……」


「うるさいわね!? アンタもどっちの味方なのよ!?」


 ***


「カリン選手 今シーズン 第2号ホームランでございます。 おめでとうございます」


「カリン選手 今シーズン 第3号……」


「第4号……」


「ゲーム ジャコビッキ&フェラーリ! スリー ゲームス トゥー ラブ!」


 ***


「流石は『B組のホームランクイーン』ですな……。これが野球の試合でないことが心底恨めしいですぞ……」


「これが入りさえすれば……勝機もありそうなのですが……」


「耳が痛いからこれ以上言わないで……」


 カリンのホームラン4球で終わった第3ゲーム。ここまで為す術もなく0-3。ミーティングも既にどこか終戦ムードだ。


「カリンさん、提案なのですが……。コートにムカつく人間の顔があると想像して、そいつに

ぶつけてやる気で打ってみるというのはどうでしょう……? 例えば……フォンデュさんとか」


「ちょっとリサ氏!?」


「ああ、それいいかもしれないわね。早速やってみるわ」


「カリン氏!?」


 一人冷や汗をかくフォンデュを置いて、二人はコートへと戻って行った。


 ***


 迎えるは第4ゲーム。カリンのサービスゲームだ。


 カリンは静かに集中し、脳内でコートの一点にフォンデュの顔を浮かび上がらせる。


 ボールをトスし、インパクトの瞬間「○っねぇ!」と脳内で叫ぶ。


「フィフティーン ラブ!」


 ジャコビッキは一歩も動けず、カリン渾身のサービスが決まった。


「200km/h……。カリン氏は拙者にこれほどまでの殺意が……」


「サーティー ラブ!」


「250km/h……」


「フォーティー ラブ!」


「300km/h……」


「ゲーム カリン&リサ! ワン ゲームス トゥー スリー!」


「350km/h……。遂にジャコビッキ越え……。もうセクハラしないから、命だけは助けてほしいでござる……」


 客席ではフォンデュがただ一人、失禁しながら戦々恐々としていた……。

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