第62話「300km/h」
「まもなく決勝戦、カリン・リサ ペア 対 ジャコビッキ・フェラーリ ペア の試合を開始致します」
場内アナウンスが決勝戦の開幕を告げる。
カリンとリサのペアは予選・準々決勝・準決勝と、並みいる強豪たちをなんとか討ち倒し……
「って、この大会私たちと相手のペアしか出てないじゃない!? わざわざ決勝戦とか言う必要ある!?」
た訳でもなく、いきなり決勝の刻を迎えようとしていた。
「いうてまあ、景品がアニメのフィギュアだけですからね……。こんな大会に好きこのんで出るテニス選手は少ないですよ……」
「まあ、それもそうよね……。いっそ不戦勝で景品だけ貰えれば良かったのに……」
大会のエントリー人数はたったの二組四名。この為だけにわざわざ貸し切られた大型テニスコートには、観客の姿がまばらまばらにあった。
試合前の挨拶を終え、拍子抜けしながらコート入りするカリンたち。
相手コートではジャコビッキが、ボールを地面にバウンドさせながらコートの感触を確かめていた。
***
「さあ、カリン氏。拙者の限定ロゼちゃんフィギュアの為に頑張って欲しいでござる」
祈るような面持ちで、客席から試合を見守るフォンデュ。その右肘は術後でガチガチに固定されている。
「頑張れ~、カリンちゃ~ん!」
その隣には、お店を休みにしたアオイ・ノア・店長の姿もあった。
「しかしまさかあのジャコビッキが出て来るとは……。これは厳しい戦いになりそうですな……」
神妙な面持ちで語りだすフォンデュ。
「え? あの人そんなにすごい選手なんですか?」
***
「ザ ベスト オブ 1セットマッチ! ジャコビッキ サービス トゥー プレイ!」
審判が試合開始を告げ、ジャコビッキがサーブを放とうと大きく振りかぶる。
姿勢を低くし、サーブに備えるカリン。
ズドン!
しかし、ジャコビッキが放ったはずの打球を目で追うことすらもかなわず、一瞬風が通り過ぎたかと思えば、それに遅れて鈍い着弾音が響くのみであった。
「フィフティーン ラブ!」
今何が起きたのかすらも分からず、カリンは唖然とするより他になかった……。
***
「ジャコビッキは、社内のテニス大会でタイトルを総なめにした、腕利きのプレイヤーでござる。特筆すべきはそのサーブの速度。時速300kmにも達するとも言われるその超高速サーブは、常人では反応することすらできませんぞ。接待テニスで取引先のお偉いさんをボコボコにしたせいで左遷されたと聞いていましたが、まさかこんなところで見ることになろうとは……」
フォンデュがメガネを光らせ解説を始める。
「とりあえず……こりゃ無理だな」
「無理だね」
「無理ですね……」
店長、ノア、アオイと、次々に諦めモードになるギャラリーたち。
「さ、帰って店開けるか」
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