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第61話「必殺『ムーンサルト・イェーガー』」

「カリンさん、お願いがあります。この大会に一緒に出てください」


 今日は珍しく一人でコルボに来たリサ。その手には一枚のチラシが握られていた。


「えっと……『男女混合テニス大会 優勝者にはロゼちゃんの限定フィギュアをプレゼント』? 何よ、この謎の大会?」


 チラシには今回の景品として用意されたフィギュアの写真がでかでかと載せられている。


「ていうか私、テニスなんて体育の授業でしかやったことないんだけど……。しかも得意でもなんでもなかったし……」


「よく場外ホームラン打って『B組のホームランクイーン』って呼ばれてたよね」


 近くで作業をしていたノアが、カリンに横槍を入れる。


「うるさいわね……。ラケットを地面に置いて、ポールの脇で本読んでたアンタにだけは言われたくないんだけど……?」


「いやだって、あんなの真面目にやって手首でもやったら馬鹿らしいし……」


「へえ……? そのせいでいつも私が二対一の試合させられてた件についてはどうお考えで?」


「誠に遺憾ながらこの件についてはコメントを差し控えさせていただきます」


「それでなんとかなると思ってるのは政治家だけよ……」


 高校時代を思い出し、思わず話しに花を咲かせるカリンとノア。


「とにかく。頼れるのはカリンさんだけなんです!」


 脱線した話を戻すべく、改めてカリンに頼みこむリサ。


「は、はあ……」


「ノアさんはさっきのお話の通りでしょうし……。アオイさんは……まあ聞かなくても分かります。顔に運動音痴だって書いてあるので……」


「ちょっと!? ひどくない!?」


 たまたま聞いていたアオイの叫びが響く。


「でも実際そうだからフォローの仕様もないんだけどね……」


「ノアちゃん!?」


「逆にどこに打てば返せるのか、って。あれは最早ある種の実験だったわね……」


「カリンちゃんまで!?」


 アオイはもう涙目だ。もういい加減やめて差し上げよう。


「ていうか……なんで私たちに頼む前提なのよ……? フォンデュとかどうなのよ?」


「実は、私も始めはそうする予定だったんです……。ですが、昨日フォンデュさんと練習のため近所のテニスコートに赴き、そこで野良試合をさせていただいたのですが……。フォンデュさんが必殺『ムーンサルト・イェーガー』を決めた際に肘を故障してしまいまして……。本日、都内の病院でトミージョン手術を受け、実戦復帰は一年後になるそうです……」


「ええ……何してんのよアイツ……」


「ていうか、ムーンサルトもイェーガーも体操の技だし……。しかもそれで、何で肘……?」


 ドン引きのカリンと、意味が分からない様子のノア。


「でも、私たちのテニスの腕前なんて、さっきの話の通りだし……他の友達とかあたった方がいいと思うわよ?」


「友……達……ですか……?」


 カリンのその言葉に、突如リサの表情が曇る。


「私にそんなものがいると思いますか……?」


「なんていうか……その……悪かったわね……」


 遠い目で乾いた笑いを浮かべるリサに対し、カリンはとりあえず謝っとくことぐらいしかできなかった。

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