第58話「株式会社 M&E」
「暇ねー」
「そうだねー」
閑古鳥が鳴いているコルボ店内。手持ち無沙汰になったカリンとアオイは、キッチンの提供カウンター越しにまったりと雑談していた。
先日訪れた客のうち数人が、「この店はヤクザが営業している」「反社会的勢力の資金源」「きっと脅されてぼったくられる」等など、口コミサイトへと書き込んでいったらしい。その影響か、新規客がほとんど訪れて来ず、今日の来店はほぼ常連客ばかりだった。
店長にバレたときは「何だこれは……?」と呆れ顔で言われたりもしたが、それも「そもそもアンタがバックレたからでしょうが」とカリンに睨まれると、都合が悪くなって黙ってしまった。
そんな訳で一同が手持ちぶさたにしているときだった。
カランコロン。
「こんにちはー! 『マジック&エクスプロージョン社』の者でーす! 新製品の紹介に来ましたー!」
勢いよくドアが開き、爽やかな体育会系の営業マンが、大きな声と共に入店してきた。
「店長さーん。『マジック&エクスプロージョン社』の営業の方がいらっしゃいましたが、どうしますかー」
応対したアオイが、店長にどうするかの確認をする。
「店長ならもう寝てるよ」
事務所の方を指差し、ノアが言う。
「うーん……。どうしましょうか?」
「どうせ暇だし、話聞いとけば?」
ノアの提案で、話を聞くことにしたアオイであった。
***
「まずはこちらの新商品から! こちら『重力強化式レモン搾り機器』になります!」
そう言ってセールスマンが取り出したのは、あちこちに穴の空いたハンドボール大のステンレス球が、10センチほどの四本の足で自立している謎の器械だった。
「使い方は簡単! ここの扉を開けてレモンを入れ、中に重力球を発生させるだけです! 重力魔法を使うことができる方であれば、誰でも簡単に使うことができます!」
セールスマンが球体上部の扉部分を開閉させる。
「ずいぶんとピンポイントな『誰でも』だね……」
セールスマンの説明に怪訝な顔をするノア。
「え、すごーい! どうなるんだろう? ちょっとノアちゃんやってみてー?」
かたやアオイは興味津々のようだ。いったいこれのどこが彼女の琴線に触れたのだろう?
「カリンちゃんも見てみようよー」
「120パーセントガラクタの香りしかしないから遠慮したいんだけど……。まあ暇だから見るだけ見ようかしら……」
キッチンでの作業をしていたカリンを、アオイが呼びに向かう。すると……
「え、『カリン』って? まさか?」
急に背筋を伸ばし、ガタガタ震え始めるセールスマン。
アオイに呼ばれ、面倒くさそうにキッチンから出てきたカリンの姿を見るや否や
「お久しぶりです、カリン様!」
深々とその場に土下座し始めたのだった。
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