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第52話「味の決め手は青酸カリ」

「姉御……もう帰っていいですか……?」


 開幕から強烈な一撃をくらい、既に意気消沈のヤクザたち。


「二品目、エビフライです!」


 しかし、無慈悲にも二品目がテーブル中央の皿へと召喚された。ヤクザたちはそれを渋々口へと運ぶ。


「これは……その辺のドブ川で獲ったアメリカザリガニを、83年間一度も交換したことのない揚げ油で揚げた味がします……」


「まあ、コーヒーよりかは幾分ましです……」


「あっし、もう胸焼けしてきました……ヴォエッ」


「さっきからやけに具体的なのはなんなのよ……」


 二品目も残念な結果に終わったようだ。


 ***


「三品目、ナポリタンです!」


「ナポリの風の味がします……」


「無味無臭なのがいっそありがたいです……」


「ナポリタンは別にナポリの料理じゃないんだけどね……」


 ***


「四品目、オムライスです!」


「硫化水素キメてる時の味ですね……」


「今にも飛びそうです……」


「アンタたち、今までよく生きてたわね……」


 ***


「さあ、泣いても笑ってもこれが最後な訳だが……」


 店長がメグに最後のお題を告げる。


 ヤクザたちは既に放心状態で、それぞれが虚空を見つめている。


「最後の五品目、プリンアラモードです!」


 しっかり固めなクラシックプリンに、帽子のような真っ白のホイップクリーム。脇に彩りを添えるカットフルーツたち。見た目だけは真っ当なプリンアラモードが、ヤクザたちの目の前に召喚される。


 恐る恐る舌先を触れ、味の確認をするヤクザたち。


「こ、これは!? 青酸カリ!?」


「わあ、すごいです! 青酸カリを舐めて見破る、アニメの名探偵さんみたいですね!?」


「真似しちゃだめなやつだけどね、それ……」


 電流が走ったような表情のヤクザたちと、ズレた賞賛を送るアオイ。


「さ、砂糖と青酸カリを間違えて作ったプリンの味がします……」


「そこはせめて塩であってほしかったわね……。ていうか、言われても全く味の想像がつかないんだけど……」


 常人には砂糖と青酸カリを間違えて作ったプリンを食べる機会など無いので、全く味の想像もつかない。


「あ、食べてみます? 遠慮せずどうぞ」


「いや、やめておくわ……」


 あわよくばカリンに押し付けようとしたヤクザたちだったが、あえなく失敗に終わる。


「と、まあこれで全てのお題が終わったわけだが」


 店長が頭を掻きながら切り出す。


「当然、不合格だ。今度こそさっさと帰ってくれ」


「なんでですか!? ナポリタンとか会心の出来だったんですけど!?」


 信じられないといった表情で、愕然としているメグ。どこからその自信がくるのだろう。


「ただ味がしないってだけじゃねぇか」


「変な味がするよりマシです」


「自分で言うな。さっさと帰れ」


 こうしてメグのハローワーク通いが決定したのだった。

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