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第51話「コピ・ルアク」

「そこを何とか!? お願いします!」


 遂に土下座までし始めたメグ。その光景を目の当たりにした他のお客さんたちからも、「何事だろう?」と好奇の目線が寄せられている。


「わかった、わかった……。ホールスタッフとかなら経験有ったりしないか……?」


 そんな視線の数々に当てられたせいか、さしもの店長も根負けし、面倒くさそうに頭を掻きながらも、仕方なく妥協案を模索する。


「一日に割ったお皿の数でギネヌ記録に載ったことがあります!」


「よし、却下で」


「昼ピーク前のクソ忙しい時に、私は一体何をやらされているのだろう……?」店長はそんなことを思いながら、遠い目で天井のシミを数えだした。


「じゃあ、せめて一品……。一品だけでもまともに出せる料理はないのか……?」


「そうですねぇ……。『調理魔法で出る料理のクオリティは、術者自身の料理スキルに依存する』って、うちの爺っちゃが死に際に言ってたような気がするので……。私の中の眠れる才能が目覚めるような一品がもしかしたらあるかもしれません! 魔法で出せるから料理なんかしたことありませんが!」


「今の一言だけで結果は見えてる気がするが……」店長は内心思うのだったが、とはいえ、もう試験でもして結果をはっきりさせないとメグは帰らないだろう。


「じゃあお題を5品指定するから、その料理を出してくれ。こちらで毒見役を用意して審査するから、そのうちの一品でも合格点が出たら雇ってやる……」


「本当にですか!?」


 メグの表情がパアッと明るくなる。いったいその自信はどこから来るのだろう?


「とりあえずもうランチピークだから、そこ座って待ってろ……」


 ようやく解放された店長。大あくびを一つして、厨房へと入っていくのだった。


 ***


「店長。言われた通り八九三組呼び出しといたよ」


「ああ。サンキュー、ノア」


 ピークの落ち着いた午後二時過ぎ、ボックス席にはノアに呼び出された哀れな実験台たちが静かに座っていた。


「姉御……。この間のゲロマズ唐揚げは軽くトラウマものだったのですが……」


「せめてアレよりはマシなものにしていただけると嬉しいのですが……」


 肩を竦めて小さくなり、絶望の表情を浮かべるヤクザたち。


「さあ? 私に言われても……。まあ期待しないで待ってれば?」


 ノアの言葉を聞くと、ヤクザたちは一様に肩を竦めて小さくなり、絶望の表情を浮かべていた。


「お待たせしました! ブレンドコーヒーです!」


 そんなモルモット達の悲愴感などつゆ知らず。メグはヤクザたちの目の前に置かれたコーヒーカップ内に、ホットコーヒーを召喚する。


 顔を見合わせ、固唾を飲むヤクザたち。やがて、覚悟を決めたようにカップへ手をかけ、恐る恐る中の液体をすする。


「こ、これは……」


 ヤクザ達の顔が一斉に曇る。この様子では期待はできなさそうだが、はてさて?


「猫の糞の味がします……」


「あー、確かジャコウネコの糞から取り出した物を飲む高級コーヒーってありましたよね? そんな感じですか?」


 小首を傾げ尋ねるアオイ。


「いえ、そんな生半可なものではありません。純粋な猫の糞です。猫の糞100%のストレートジュースの味がします……」


 この世の終わりのような顔でコーヒーをすすりながら答えるヤクザたち。


「飲んだことあるの……?」


 ノアの素朴な疑問も、こんなものが後4品も出てくるという絶望にのまれたヤクザたちの耳へは届いていなかった……。

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