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もふ成分薄めの番外編 お手伝い妖精の幸せ 3


 その後、デノングとその娘、そしてイズマルの三人は、長い間中庭のあずま屋で色々な話をした。



「サンダードラゴンの貴女様が、俺のような下等なお手伝い妖精なんかとこんなふうにしていては、悪い噂がたってしまいます。」


「私以外の生物は、みんな下等だから大丈夫。」


「ち。」


 レアルが聞いたらまたぞろ怒り狂いそうな台詞だが、イズマルにはその辛辣な言葉の割りには、自分を見下されているような気持ちにはなれなかった。


 デノングはイズマルの肩に頭を置いた。


「今の私はクソックマのせいでみっともないもさもさにされちゃったけど、本当は美しいの。本当よ。」


「俺はもさもさも好きです。優しい感じがするから。」


「そう? 貴方が言うなら、そうなのかも。」


 デノングはピンクゴールドの火柱をパチパチと飛ばした。



         ʕ•ᴥ•ʔ



「私もこの仕事を始めてずいぶん長いですが。」


 翌日、超特急のドラゴン便で屋敷に呼ばれたリナレスは言った。


「ドラゴンとお手伝い妖精の指輪を作らせていただくのは初めてにございます。」




         ʕ•ᴥ•ʔ



 程なくして、イズマルは暇乞いをして、アンドレアに惜しまれつつも屋敷を去る事となった。


 新婚旅行と称して、未だもさもさのデノングの背に乗って世界中を巡るのだそうだ。


「あんなにもさもさなら、ちっとも寒くないですね。」


 アンドレアは屋敷の中庭でイズマルを待っている巨大なキツネのしっぽのようなデノングを見て言った。


「もっと色々なお菓子を見たいので、人間達の国にも訪れようと思っているのです。アンドレア様、ご両親に何かお言づてはないですか?」


 イズマルの言葉にアンドレアは俯いた。


「私からの言づてなんて、父は喜ばないと思いますが……もし、そんな機会があれば、アンドレアは幸せにやっていますと、お伝えください。」


「お喜びになるに決まってます。娘の幸せを願わない親などいるはずがありません。自分にも娘ができたから、わかるのです。」


「ち!」


 イズマルは肩に乗っている小さな愛娘に頬擦りをした。


 アンドレアは寂しそうに笑ったが、それ以上何も言わなかった。


 きっと、きっと、届けます。


 イズマルは心に誓った。



          ʕ•ᴥ•ʔ



 修道士カブレラは、修道院の礼拝堂で贖罪の祈りを捧げているところだった。


「兄弟カブレラよ。」


 同僚の修道士が声をかけた。


「熱心ですね。また、御息女の事を祈っていたのですか?」


「あやつは娘などではありません。しかし、あやつの犯した罪を償うことが私の生涯の勤めです。」


 修道士カブレラは、苦々しげに吐き捨てるように答えた。


「御息女は罪など犯してはおりません。むしろ、人と魔族の和平の功労者ですよ。先日も、里帰りでとてもお幸せそうな姿を見せておいでだったと評判ですのに。」


 同僚の修道士は優しく、励ますように言った。


「魔族と暮らして幸せなどと、罪以外の何でしょう。」


「しかし、国王の決めた事ですから、御息女に抗えるはずもありません。政略結婚で幸せになれるなど、人間同士でも難しいのに。」


「魔族と契るなど、穢らわしい。寝所で刺し違えることもできたでしょうに。」


「な、何と言う恐ろしい事を言うのだ! 言葉を慎め、兄弟カブレラ!」


 温厚な修道士も流石に声を荒げた。


 しかし、修道士カブレラはふんと鼻を鳴らし、天を仰ぎ両手を広げた。


「私の言葉が間違っているのならば、神よ、今すぐここへ雷を落とし給え!」




 ピッシャーーーーン!!




 一筋の稲妻が礼拝堂に落ちた。



「わああーーっ!」



 天井は落ち、バラバラと石壁が崩れ、修道士カブレラと同僚の修道士はほうほうの体で礼拝堂から逃れた。



「見よ、其方の無慈悲で傲慢な物言いに神もお怒りだ!」


 何ごとかと集まってきた修道士達は、話を聞くと口々に修道士カブレラを糾弾した。



 背徳者の烙印を押され、破門され只の男となった彼は、頭に乗せられた荊の冠の他は古ぼけたローブ一枚の姿で門から放り出された。


 

「魔族と契るなど、穢らわしい。和平だと? ふん、下らん! この俺が公爵ならば和平など許さなかったものを。穢らわしいケダモノなんぞ皆殺しにしてやったのに……。」


 男は訳の分からない事をブツブツ呟きながら荒地へ消えた。


 どこへ行ったのか、誰もわからないという。



          ʕ•ᴥ•ʔ

         


「こんなもんで良かったかな?」


 ピンクゴールドの彗星となって空を舞うデノングは言った。


「『電話』には何と?」


 デノングの頭の上からイズマルが尋ねた。


「貴方に言われたとおり、アンドレアは幸せですって、それだけよ。」


「良かった。アンドレア様とのお約束が果たせて。」


「ち!」


 イズマルは肩に乗ったサントゥアリオと顔を見合わせにっこりと微笑み、愛しい妻のもさもさの頭に口づけた。



 パチパチっ!



 と、デノングの身体からピンクゴールドの火柱が散る。


 アンドレア姫から結婚のお祝いにいただいた、毛糸のマフラーを首に巻いているイズマルは、ピンクゴールドの心地よい刺激を楽しんだ。





 いつもお読みいただきありがとうございます。


 次章より本編が再開します。


 引き続きよろしくお願いいたします。

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