もふ50 もふもふとドラゴン
アンドレアが中庭で拾った綿毛のような生き物は、本当にサンダードラゴンの幼生だったようだ。
凄まじい放電の後、白く光る綿毛となり、その電気を強力な魔力によって吸収して巨大な発光体となったドン・サンチェスの頭の周りをふわふわと漂っている。
「しかし、困りましたね。レアル様のおっしゃるとおり、この子が本当にサンダードラゴンだとしたら、親元に返さなくてはなりませんよ。」
セニョリータ・パパゲーナが不安気にそう言うが早いか、
ピシャーーーーン!!!!
天空から一筋の稲妻が落ちてきて、中庭に置かれていた石像が粉々に砕かれた。
「…………。」
パパゲーナは呆然と崩れ果てた石像を眺めた。
どうやら、先ほどのちーちゃんの放電で母親が我が子の所在を突き止めたようだ。
「うーむ、激おこですなあ。」
ドン・サンチェスは半ば呆れたように呟いた。
「先代首領の石像が……!」
「落ち着きなさい、セニョリータ・パパゲーナ。」
ドン・サンチェスは蒼白になるパパゲーナにパリパリと放電しながら穏やかに言った。
「ち。」
「いやいや、ちー殿、気にしなくて大丈夫。元々、あの石像は自分大好きな親父が無理に作らせたものだから気に入らなかったんです。壊してくれて助かりました。」
「自分がちゃんと見ていなかったせいなのに、逆ギレではありませんか。こっちは保護してあげているんですよ。」
筋の通らないことが嫌いなレアルが文句を言い始めた。
「頂点に立つ生き物がこちらの都合なんか考えるワケないさ。いやいや、ちー殿を責めているのではありませんよ。」
「ちー。」
「屋敷を襲ったりはしませんでしょうか?」
鳥人族のセニョリータ・パパゲーナは少し心配症なところがある。
用心深いのは良い事だが、ネガティブな思考に囚われがちなのだ。
「いくら何でもそこまではしないだろう。さっきの超絶に絶好調の放電を見れば、ちー殿が心身共に健康なのは明らかだからな。」
ドン・サンチェスは呑気なものである。
「でも、ちー殿も早くお家に帰りたいでしょうから、森の寝ぐらまでお送りしましょうね。」
「ち!」
「しかし、送ると言っても……。」
セニョリータ・パパゲーナは益々不安そうに声を落とす。
この屋敷のある盆地の周りの山々はドラゴンの領地だから、立ち入るのはほぼ不可能だと考えられている。
「いいよ、俺がひとっ走り行ってくるよ。」
「購買にパンを買いに行く程度の気楽さで言わないで下さい!」
パパゲーナは悲鳴に近い声を上げた。
まったく、この首領ときたら、緊張感の無い事にかけては右に出る者はいない。
「平気だよ。こう見えてパシリなら得意だ。いつもエスカミーリョに焼きそばパンを買いに行かされていたからな。レアルは留守番しておいてくれ。万が一、ドラゴンが襲って来たら頼む。謝っておいて。」
「こちらに非は無いのに……。」
レアルは納得いかない顔でまだブツブツ言っている。
「わ、私も一緒に行きます!」
傍らで一部始終を見守っていたアンドレアは置いてきぼりを喰らう恐れを感じとり、慌ててふわふわ浮いていちーちゃんとドン・サンチェスの側へ行こうとしたが、
ごつん!
と、セニョリータ・パパゲーナのシールドにぶつかってしまった。
「い、いたあ……。」
「しばらくドン・サンチェスとちーちゃ……さま? には触れませんよ。感電死しちゃいますからね。」
「え〜。」
アンドレアはパパゲーナの言葉に、おでこを抑えながら口を尖らせた。
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