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もふ46 もふもふ仲なおり


 ドン・サンチェスは罪滅ぼしにアンドレアと一緒に蒸し風呂に入ったばかりにすっかりクタクタになってしまい、ひんやりとした大理石のベンチに舌を突き出してはあはあ息を切らして身体を横たえている。


「お姫様には申し訳ないけれど、ご主人様は悪くありませんわ。正しい判断だと思います。許してあげて下さいな。」


 ドン・サンチェス他、屋敷の者達のアンドレアへの仕打ちを聞いたものの、鉛の腕輪の恐ろしさを誰よりも知ることとなったカミラは、ドン・サンチェスに冷却魔法を送りながらそう言った。


 その後ろではエスカミーリョがカミラの髪を梳かしてやっている。


 アンドレアはドン・サンチェスの頭に氷嚢を当てて、暑いのが苦手な彼に蒸し風呂を付き合わせたのは少し可哀想だったと反省していた。


「それに、ご主人様はジャスミンの花数珠で貴女を守ってくれていたではありませんか。レアル様の使い魔まで護衛につけて。お姫様はご存知ないと思いますが、使い魔が自分の主人以外の為に魔法を使うことなんか滅多にないんですよ。」



 あのフリオのことだから、ピア相手に無理矢理自分の要求を通したのだろう。


 カミラの髪を梳かしながらエスカミーリョは考えた。


 緊張感のない人畜無害な姿かたちをして、側近に頭の上がらない弱腰な首領は、単なる印象付けだと、子供の頃から彼を見てきたエスカミーリョはとっくに気がついている。




「セニョーラ・カミラ」


 ぐったりしているドン・サンチェスがかすれるような声でカミラを呼んだ。


「はい、ご主人様。」


「今日は災難だったね。」


「めっそうもございません。私が居ながらお姫様を危険に晒してしまい……。」


「いやいや、それもこれも、みーんな、レアルが意地悪だからいけないのだ。良かったら明日いちにち暇を取ってゆっくりしなさい。お芝居のプレミアのVIP席の招待状をあげるから観てきたら?」


「まあ、そんな、私なんかが……!?」


 ドン・サンチェスの言葉にカミラは胸をときめかせつつも戸惑ってしまう。


 田舎からたったひとりで魔族の領地へやって来たカミラにとって、避暑地のプレミア公演へ行けるなんて夢のような話だ。


 しかも、VIP席だなんて。


「良かったね、カミラ。」


 エスカミーリョも愛する妻の嬉しそうな顔を満足そうに見た。


 いつもアンドレアがドン・サンチェスにするのと同じくらい、慈しみ、大切にカミラの髪を梳かしており、時折、カミラの細い首筋に黒い鼻をくっつけ、ラブラブっぷりを見せつけている。


 しかし、


「おや? なぜエスカミーリョがこんな所にいるのかな? 仕事をサボっても怒られないなんて羨ましいなあ。そうだ、暇そうだからセニョーラ・カミラをエスコートしてあげれば?」


 ドン・サンチェスの提案にエスカミーリョは顔色を変えた。


「えっ、お、俺も!? いや、俺はそう言うのは……。」


 カミラの手前あまり言わないが、エスカミーリョは元々、セレブとか社交界というものをバカにしているところがある。


 そもそも、この避暑地への同行しなかったのもそのためだ。


 自分だってセレブの端くれのクセに、社交嫌いということに密かにプライドを感じているという、ちょっぴり屈折したエリート意識を持っているエスカミーリョにとって、セレブの中でもチャラチャラした派手好きな連中の集うプレミアへ行けというのは、鉛の腕輪をつけるのと同じくらいの苦行なのだった。


「まあ、ご主人様! 何てお優しいんですの!」


 しかし、エスカミーリョが何か言う前にカミラが大感激してドン・サンチェスに超強力な冷風を送った。


「わああ、素敵! イケメン近衛隊長が美人妻を伴ってレッド・カーペットに降り立ったら話題になるでしょうね!」


 アンドレアもその提案に大喜びだ。


「え、ちょ、待っ、俺……。」


 何か言おうとするエスカミーリョの言葉に被せるようにドン・サンチェスは言った。


「二人とも今日はお疲れ様。明日の準備もあるだろうからもう下がって良いよ。一応、俺の名代なんだから、獣人のVIPの名にかけて、ばっちり! おしゃれして行ってね。」


「はい! ご主人様!」


「フリオ、てめえ、覚えてろ……!」


 有頂天のカミラの横で、エスカミーリョが恨めしそうにドン・サンチェスを睨む。


「いってらっしゃい。」


 ドン・サンチェスはへろへろとしっぽを振った。




 二人きりになった寝室で、アンドレアはドン・サンチェスの口に特大の氷を入れてあげながら耳の後ろを掻いてあげていた。


「カミラさんとっても嬉しそうでしたね。サンチェス様、私からもお礼を言わせて下さい。」


 ドン・サンチェスの優しい計らいに機嫌もすっかり直ってしまった。

 

「お礼を言われる事なんて何もしてませんよ。」


 ドン・サンチェスはしっぽをアンドレアに絡めながら、口の中の冷たい氷に食べ損ねたカキ氷への思いを馳せつつ、耳の後ろの心地よい刺激を楽しんだ。


 お読みいただきありがとうございます♪


 いつも読んでいただいている方、


 初めてここまで読んで下さった方、


 励みになっております。


 本当にありがとうございます!


 引き続きお楽しみいただけたら嬉しいです♪



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