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もふ45 もふもふ大反省


「あ、セニョーラ・カミラ。」


 未だ柱の影から動かないドン・サンチェスは厩から戻ったカミラに気がついた。


「一体、何があったのだ?」


「申し訳ございません、ご主人様。私が付いていながら……。」


 カミラが説明をしようとした時、中庭からけたたましいドラゴンの鳴き声がしたかと思うと、エスカミーリョが屋敷に飛び込んで来た。


「カミラ!」


「まあ、あなた?」


 驚くカミラをエスカミーリョは抱きしめた。


「何があったんだ!? 指輪が締めつけられたから、君に何かあったんじゃないかと気が気じゃなくて、こうしてドラゴンを飛ばしてやって来たんだ!」


 指輪で妻の異変に気がつき、遥々竜を飛ばしてこんなところまでやって来てくれるとは。


 カミラはエスカミーリョの愛に胸が熱くなった。


「何でもないわ。それより、近づかない方が良いわ。鉛の腕輪をはめられて。」


「鉛の腕輪を!?」


「大丈夫だから、離れてちょうだい、あなたまで汚染されちゃうわ。」


 エスカミーリョは更に激しくカミラを抱く。


「そんなのどうだって良いよ。かわいそうに、酷い目にあったんだね。無事で良かった!」


「あなた、あなたが、あなたが守ってくれたのよ……。」


 カミラはエスカミーリョの胸に顔を埋めた。


「さあ、お清めの沐浴をしよう。俺がきれいにしてやるよ。」


「やん、もうっ。みんなが見てる前で。」


 エスカミーリョは頬を染めるカミラを抱えると屋敷の奥へ消えた。


 一部始終を見ていた魔女達は二人の愛の強さに涙ぐむ者もいる。



 まるで貸本の小説に出てくるヒーローとヒロインのようだ。アンドレアもうっとりと二人を見送った。



 それに引き換え……。


「サンチェス様は私を汚物扱いして、近寄っても下さらないんですのね……。」


 アンドレアは柱からはみ出しているドン・サンチェスの方を向いた。


 お面に縫い付けられているボタンの目が恨めしそうにじーっと見ている。


「えっ、それは……。」


 ドン・サンチェスは、ぎくっ、として耳を寝かせた。


 魔力の無いアンドレアが鉛の腕輪を触っても何の危険もないのだから、ついこちらの安全を優先してしまった。


「え、エスカミーリョはほら、武装してるから多少ならだいじょう……。」


「そう言う問題じゃありません!」


「そ、そうですよね! す、すみません!」


 ドン・サンチェスはぼさぼさの身体を二つに折りまげた。


「そう言えば、サンチェス様の指輪は締めつけられたりはなかったのですか?」


「指輪が? 何で?」


 ドン・サンチェスは自身の手を眺めたが、毛が逆立ちすぎて指輪が隠れてしまっている。


「……!」


 カミラの指輪は遠く離れたエスカミーリョに彼女の危機を知らせてくれたと言うのに、私達の指輪は毛に紛れてサボっているとは……。


「……もう、良いです……汚物はさっさとお風呂に入ってきます。」


 アンドレアはぷいっ、と、そっぽを向き、エスカミーリョがカミラをお姫様抱っこしながら消えた廊下をひとりでヨタヨタと進んだ。


「待って、待って、アンドレア姫!」


 流石にまずい事をしたと気づいたドン・サンチェスは慌ててアンドレアを追いかけた。


「一緒に、入る?」


「…………。」


 アンドレアはもう少し懲らしめてやろうか迷ったものの、不安そうに耳を寝かせ、特大のしっぽを下に垂らしているドン・サンチェスを見てしまったら身体がウズウズしてきた。ヘソを曲げるような無駄な時間はない。


「入る!」


 アンドレアがしがみついても、今度は引き離される事はなかった。


 先ほどのカミラとエスカミーリョと同様に、ドン・サンチェスもアンドレアをお姫様抱っこしながら二人専用の豪華な浴室へ向かった。


「一体、何があったのですか?」


「話して差し上げても良いけど、話を聞いたら、さっきのご自分の態度を絶対に後悔しますよ。」


 アンドレアはもう怒ってはいないけれど、まだ少しだけ意地悪な気持ちになってしまう。


「さっきのエスカミーリョ様、とってもカッコよかったなあ。エスカミーリョ様ってちょっと怖かったけど、見直しました。カミラさんが彼を愛してる理由がわかったわ。」


「ううう。」


 ドン・サンチェスは申し訳無さそうに耳としっぽを垂れた。


 今回は自分が悪かった。


 確かに、訳も聞かずにあんな仕打ちをしては怒るのも当たり前だ。



 けれども。



 何だよ、エスカミーリョの奴め。いつもカッコよく現れて差をつけやがって。


 アンドレアが、夫にするならエスカミーリョが良かったと思いやしないかと、俺がどんなに恐れているかを知りもしないで。


 ちくしょう。


 しかし、アンドレアは口では意地悪を言っているが、ドン・サンチェスのもふもふの身体に身を委ね、顎の下の柔らかい毛をさわさわして、もう機嫌は治っているようだ。


 良かった……。


 ドン・サンチェスは心の中でホッと息をついた。


 暑さに弱い俺だから、蒸し風呂は大の苦手だが、一緒に入る事で俺なりの誠意をアンドレア姫も感じとってくれれば良いのだが。





 お読みいただきありがとうございます。


 引き続きよろしくお願いいたします。

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