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もふ43 愛の力


「危ない、カミラさん!」


「おひめさ……!」


 アンドレアが雷の直撃を受けようという刹那、白い魔法陣が現れ盾となり、雷は四方へ弾かれた。



「腕輪をつけたままシールドを発動させただと!? 何なんだ、何なんだ、こいつら、人間のくせに!」


 自分の発した魔法が弾かれ、ホセはますます恐怖する。


 さっきまで泣くだけで何も出来なかったデクの棒の側近が急に動きだし、あろう事か封じられている筈の魔法を使うとは。


 相手が悪すぎる。ペドロの二の舞を踏むのはごめんだ。ホセが踵を返そうとした振り向きざま



「お願いされちゃったもんで、すんませんね。」



 どこからか羽音と共に声がした。



(使い魔! 魔力を封じられているのに、なぜ使い魔を使えるんだ!? )



 ぐわん、と、時空が歪み、ホセの身体は宙に浮かぶとそのまま地面に叩きつけられた。


「……かはっ。」


 ホセは全身を激しく打ちつけられ、痙攣したまま失神した。




「わああん! カミラさん!」


 アンドレアは泣きながらカミラにすがった。


「おひめ、さま、うで、わ、うで、わ、を……!」


「はい、今すぐ!」


 アンドレアは息を切らしながら訴えるカミラから鉛の腕輪を外し、ショールに包んだ。



「カミラさん、ごめんなさい! ごめんなさい!」


 お面を涙でぐしよぐしよにして抱きつくアンドレアをカミラもぎゅっと抱きしめた。


「お姫様こそ、私を庇うためにあんな向こう見ずな事! ピアが守ってくれたから良かったようなものの……!」


「ピアちゃんが?」


 アンドレアは涙とハナミズでガビガビのお面をピアに向けた。


「あの魔法陣の盾はピアちゃんだったのね。ありがとう!」


「あー、いや、えっと、まあ……。」


 ピアは気まずそうに頭を掻いた。



「それにしても。」


 アンドレアはガビガビのお面姿で首を傾けた。


「どうしてこの人達はカミラさんと私を間違えたのかしら?」


「そ、それは…………!」



 ドン・サンチェスの元にやって来てから緩みっぱなしとは言え、アンドレアとて充分「美少女」の部類に入る容姿だ。


 立ち振る舞いも幼い頃に叩き込まれたのであろう、一介の平民には真似のできない気品のようなものを備えているし、身につけているドレスも派手ではないがごく上質なものを特別にあつらえている。


 しかし、それらは全て毛糸のお面とショールに隠れてしまっていたし、前のよく見えないお面のせいでヨタヨタ歩いていては気品も何もあったものではない。



 答えに詰まったカミラは慌てて捕らえた男達に向き直った。


「よくもやってくれたね!」


 しかし、腕輪を外され力の戻ったカミラが反撃開始とばかりに腕をまくったものの、既に男達は充分すぎるほど痛めつけられているからこれ以上何かしたら殺してしまう。


 仕方なく、拘束魔法で動きを封じた後は、瀕死の彼らに回復魔法までかけてやった。


「カミラさん、本当にすごいです! 鉛の腕輪を上回る力を持つなんて……!」


 アンドレアはもう一度カミラに抱きついた。


「あら、当然ですわ。これは魔力じゃなくて、愛の力だもの。」


 ふふっ、と、カミラは左手を広げて振ってみせた。


「初めて見たけど、すごい効果ね! リナレスの指輪は妻の貞操を守ってくれるのよ。夫の愛が強いほど、炎の威力が増すんだから。」


 カミラは全身に火傷を負ってぐったりとしているペドロを勝ち誇ったように見た。


「もうっ。あの人ったら、やりすぎよ。妬きもち焼きで困っちゃう。」


 ふふふふふふ。


 カミラは意味ありげに微笑んだ。


 それを聞いたアンドレアも急に興奮し始めた。


「すっごーい! 指輪にそんな秘密があったんですね! あの、悪人さん!」


 くるり、と、お面が男達を振り返った。


「私にもやって下さい!」


「はあっ!?」


 ペドロとホセは唖然とお面を見た。


「私も、サンチェス様の愛の強さをこの目で確かめたいですー! さあ、早く早く!」


 自分達よりさらに凶悪な犯罪に手を染めていそうな謎の覆面をした、てるてる坊主のような変な女が両手を突き出しこちらへヨタヨタ向かって来た。



「サンチェス!? 愛の強さ!? じゃあ、じゃあ、こいつが……??」




 嘘だろーーーー!?




 ペドロとホセは絶叫した。


 

 いつもお読みいただきありがとうございます!


 次章からもふもふ再登場です。

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