もふ34 魔女カミラの身の上話
アンドレアと共に避暑地へ同行できると聞いたカミラも手放しの喜びようだった。
セレブのサロンと化す避暑地へ行けるのは限られた人間(魔族)だけなのだ。
カミラは改めて魔族の国へ来て良かったと思った。
人間の世界では、どんなに有能な魔女でも、王宮に出入りする為にはそれなりのコネが必要だ。
アンドレアは自分の事を、この間まで台所で働いていた、「なんちゃって公爵令嬢」などと言ってはいるが、普通の田舎娘には、その公爵家に奉公することすら難しいのだ。
ʕ•ᴥ•ʔ
「卒業試験が満点だなんて、我が魔女学校始まって以来ですよ。」
カミラの生まれた小さな村の魔女学校の校長は、卒業証書を握ったカミラの肩を叩いた。
しかし、そんな点数が何になる?
二百点とか、中には百五十四点などという、ぎりぎりの点数で卒業した同級生が、コネで街の有力貴族の元へ奉公が決まっていくのに、そんなコネなど持たないカミラには、結局どこにも勤め口が見つからなかった。
実力派の中には、一攫千金を狙って賞金稼ぎや宝探しなどを始める者もあるが、こんな田舎の魔女学校へ行かせてもらうために親戚中から借金までさせた親を思うと、そんな危ない橋を渡る気にもなれない。
そんな折、校長の知り合いから田舎の小学校の教師の口を紹介された。
しかし、その小学校というのは
「ま、魔族の国の学校ですって!?」
「そうなの。魔族は生まれながらに魔力の高い者が多いのだけれど、その分、学問としての魔術を教えられる者が少ないの。それに、文字を操る力は私達人間の方が長けているからね。」
驚くカミラに校長は言った。
この頃も既に、人間と魔族の間で戦が始まっていたものの、戦争は王都の中しか知らない国の中枢のお偉方がチェスゲームに興じているようなものだ。
地に足のついた人々には、魔族も人間もさほど変わりはない。
エルフ族やドワーフ族をはじめとする、人間にも魔族にも属さない種族は一貫して中立な立場をとっていたし、人間と魔族に於いても、辺境付近ではそれなりの交流があった。
カミラの田舎でも、魔女が魔族の持ち込んだ薬や薬草を本やお菓子と交換したりしていたし、獣人や他の魔族もよく見かけていた。
カミラが助手をしていた教師の魔女のところへも、ごくたまに、身体の大きな獣人が大きな真珠玉を持って来てくれた。
こんな田舎の魔女には人間の商人の真珠はとても手が出ないから、魔族の持ってくる真珠によって調合された薬でたくさんの人が助けられた。
「お給料を真珠玉でもらうこともできるから、親元に仕送りもできるわよ。」
校長の一言でカミラの人生は決まった。
いつも真珠玉を持って来る獣人が、カミラを勤め口のある村まで送ってくれることになった。
「あんたは見たところ才能がありそうだから、借金を返したら奨学金を取って首都にある魔導学院へ行くといいよ。」
道々、その獣人はカミラにそんな事を言う。
「魔導学院?」
「ああ。いい成績で卒業したら、城で働けるよ。今の首領は緊張感のないボサボサの外見だが、その分見た目で差別しないから有能な奴なら人間だって雇ってくれるよ。」
「そうなの?」
「実はさ、俺はその首領と同じ学校へ行ってたんだ。いつも従兄弟のしっぽに隠れてるような情け無い奴に見えたんだが、いっぺん、めちゃくちゃに怒らせて半殺しの目に遭ったことがある。んでもって、こんなふうに将来を棒に振っちまったけどな。」
「そんな事ない。あんたの真珠玉で村の子供達の命が何人救われたか知れないわ。その首領って人は、戦をする以外に何かしたの?」
「ありがとう。」
カミラの言葉に獣人はにやっと笑った。
獣人にも大分慣れてきたカミラだが、大きな口から覗く牙を見るのはやはりまだ怖い。
彼らを怖がらずに見られる日は果たして訪れるのだろうか?
「けど、そいつは名君だと名高いんだぜ。先代の親父は評判が悪かったけどな。もし、本当に城へ行く事になったら、フリオ・サンチェスと、そいつの従兄弟のエスカミーリョに俺から宜しく言っておいてくれ。」
「わかったわ。」
カミラは笑ってその獣人と別れたものの、田舎者で人間のこの私が、お城で働けて、魔族の首領や、その従兄弟と話ができる訳がないじゃない。と、内心考えていた。
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