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もふ20 もふもふ盛り盛り


 初めこそハプニングもあったが、その後何度かセニョール・レオナルドは城を訪れ、その度にドン・サンチェスはおめかし熊ちゃんになるので、アンドレアの心臓もずいぶん鍛えられてきた。



 そんなある日、セニョール・レオナルドからついに肖像画が完成したとの知らせが二人の元に届いた。


 自分の姿には自信がないアンドレアだが、例の熊ちゃん王子さまのドン・サンチェスの肖像画が城の大広間に飾られるのが待ち遠しくてたまらない。


 最近は短毛の獣人達にも馴染んできたので、恐ろしいばかりではないことは解っているつもりだが、城に飾られた肖像画に描かれる彼らは、猛々しさが強調される画風が好まれるのか、どの絵も射貫くような目で牙を剥き、見ているだけでも喉元を噛み切られそうで、あまり良い心地がしないのだ。


 特に、アンドレアの自室に飾ってある獣人の肖像画は、城にあるどの絵よりも恐ろしく、何度外して欲しいと頼もうと思ったか知れないほどだ。


 しかし、短毛ではあるものの、ドン・サンチェスと同じクリーム色の毛から察するに、恐らく代々の首領の誰かだろうから、そんな大切な絵を外したいなどと言うのは大層不敬な事だと思い、言えずにいた。


 新しい絵が出来上がったら、簡単な複製で良いから自分の部屋にも一枚もらえないだろうか。


 アンドレアはそんなことも考えていた。



 待ちに待ったその日、セニョール・レオナルドの運び込んだ大きな絵は、美しい額に入れられて城の大広間の真ん中に飾られた。


 ドン・サンチェスもアンドレアも午後の公務も写本の手伝いもそっちのけで、広間に飾られた絵を観に行った。


 「おお、素晴らしい出来だ!」


 最初に広間に入ったドン・サンチェスは感嘆の声をあげる。


 カミラや他の魔女達も口々に絵を褒めたたえた。


「ご覧下さい、アンドレア姫のお美しいこと。バラの花に囲まれてエルフの女王のようですよ。」


 そんなふうに言われると何だかくすぐったい。


 きっと実物よりも相当「盛られて」いるのだろう。


 アンドレアは期待半分、心配半分という体でおずおずと上を見上げた。



 そこには。



 なるほど、実物よりも若干「盛られた」アンドレアが描かれてはいるが、「やりすぎ」感はなく、咲き乱れるバラの中で愛する夫の隣りで微笑む姿はまさしく今の幸せをそのまま絵にしたかのようだ。



 しかし……。



「あのう、サンチェス様、私の隣りに描かれているのは誰で……」


「えへん、えへん!」

「ごほっ、ごほっ!」

「ぶほっ、ぶほっ!」


 その場にいたカミラ、エスカミーリョ、レアルら全員が一斉にわざとらしい咳払いをしてアンドレアの言葉を遮った。


 何と、アンドレアの隣に描かれている獣人は、装いこそ王冠にかぼちゃブルマーだが、中の人はもふもふ熊ちゃんとは似ても似つかぬ何とも恐ろしげな姿。


 そう、アンドレアの部屋をはじめ、城中のいたる所に飾られている、クリーム色の短毛の獣人ではないか。


 他の絵と同じように見開いた鋭い目はらんらんと輝き、牙を覗かせた口は耳まで裂け、今にも隣りのアンドレアをひと飲みにせんばかりだ。


 しかし、


「さすが、セニョール・レオナルドは天才だ。俺の真の姿を良く表現できている。アンドレア姫も本物と同じくらい素晴らしい。」


 ドン・サンチェスは嬉々として周りに同意を求めているが、いつもの事なので皆曖昧に頷いている。


「さて、そろそろ公務に戻るかな。手のひらサイズの複製もたくさん作らせたからまた皆に配るとしよう。」


 そうして、上機嫌で広間を後にした。



 広間に集まった使用人達も、しばらく新しい絵を眺めてあれこれ話していたが、自分達の持ち場へ戻るべくひとり、ふたりと散っていった。



 もしや、城中のあのクリーム色の獣人は、ドン・サンチェスの肖像画のつもり、


 なのか!?



「…………。」


 広間にひとり残されたアンドレアは、呆然と立ち尽くし、絵を見上げていた。



 も、


 も、



 盛りすぎーーーー!!!!



 アンドレアの心の叫びは城下の町までこだました。



 いつもお読みいただきありがとうございます!


 たくさんの方のお目に止まり、こうしてここまで読み進めていただき大変ありがたく思っています。


 引き続きお楽しみいただけたら嬉しいです。

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