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寄せ集め会議・2

「私の」


 オウム返しに呟いてから、それでもやはり意味がわからなくてウィリアムは怪訝そうな顔をした。

 何か話を聞き漏らしただろうかと考えこんだが、そんなはずもない。

 ウィリアムは自分がこの場にいるのは場違いなのではと思っていただけなのだが、そうではないというのだろうか。

 どう考えたってそんなはずはないだろうと、助けを求めるような心境で賢者の顔をのぞき込んだ。

 賢者は大仰に頷いてからもう一度同じことを言った。


「お主の話じゃ」


 周りを見回せば、女王も、アデルバートも同じように頷いている。

 葉月を見ても、やはり頷いていた。――だが妙な確信があった。絶対この女意味わからずに頷いてる。

 若干かちんと来て、ウィリアムはにこりと笑った。


「葉月さん、私にはよくわからないんですが、どういうことでしょうか」

「え? だから、ええっと、あれがあれして……」


 そのまま流れるように葉月に話を振ってみると、案の定ぐだぐだと返してきた。

 やっぱりわかってなかったな。

 と、笑ってみようとしたところで、葉月が大きな手振りを付けてウィリアムと、女王を示した。


「つまりさ、女王を他の地域でも光臨……でいいのかな。ま、ともかくそんな感じで。

 でも、旧女王になっちゃったジリアンさんではそれはできないわけでしょ?

 だから、あなたの話。だと思ったんだけど」

「概ねそのとおりじゃな」


 少し不安そうに賢者を振り返る葉月。彼女に、賢者は大きく頷いた。

 ――場違いだと思っていたのだが、その感想を持っていたのはどうやらウィリアムひとりだけらしい。

 異変を払うというのは重大ごとだから、そんなことを相談する場に自分がいる意味がどうしてもわからなかったのだが。

 渡されたままの宝剣を鞘ごと机の上、地図の横に置いて困惑した表情を浮かべた。


「こうりん……と言われても。

 さっきも言いましたが、この剣、相変わらずまったく、抜ける様子がないのですが……」

「それなんだけどね」


 女王が、顎に人差し指を当ててうーん、と呟き、それから剣に触れる。何かを思い出すような顔で、ウィリアムと葉月を交互に見て、言葉を続けた。


「もう一度、あの日にあったことを再現してみたらどうかと思うんだけど」

「ああ、なるほど。何かが鍵になっているかもしれないと」


 軽く頷いてから、アデルバートは少し間を開け、一瞬だけ胡乱な目をしてみせた。


「と言っても、毎回反乱を起こされるとかはちょっとご勘弁願いたいところだと思うんですが」

「それはなかろ。襲撃が起きた時にはもう、ウィリアムは剣に選ばれとったんじゃから」


 賢者が、そう言いながら腰の袋に手を伸ばす。ベルトに結わえていた紐を解き、口を開いて中から取り出したのは、賢者自身の拳より少し小さい程度の透明な球体だった。

 水晶球? と呟いた葉月に、賢者は頷いてみせた。


「さっきの駒といい水晶球といい、異世界って割にはあたしのいた世界と似たような物、いっぱいあるのね」

「葉月ちゃんで100人目ですもの。遊びも、武器も、宝石の名前も……いろんなものがこの世界に伝わってるわ。

 チェスはチェスだし、水晶球も……まったく同じ材質かどうかはさておいて、同じようなもの、結構いっぱいあるわよ」


 新鮮味が。とか唸る葉月を、女王がたしなめる。

 ――かつて同じことを、三十年前の少女も考えたことがあるのかもしれない、とウィリアムはなんとなく思った。

 女性二人がそんなことを言っている間にも、賢者は袋を地図の上に起き、その上に水晶球を安置させる。

 手をかざした賢者が何かをつぶやくと、球体はほのかな光を放つ。


「何か占っているんですか?」

「ん? ただの雰囲気じゃよ」


 アデルバートは、賢者に質問した数秒前の自分の口をふさぎたくなった。

 いたずらっぽく笑って、すぐに賢者は真顔に戻る。


「あの時、何が起こったか。ウィリアム、説明できるか?」


 あの時。

 それは、召喚の術が発動してから、だろうか。

 ウィリアムは一度深く呼吸をしてから、順を追って思い返してみる。

 ――死を覚悟したことでもあり、思い返すだけでも少し、背筋にぞわりとしたものがはしったが。


「魔法陣の中心に立った後、なんとなく上を見たら、落ちてくる葉月さんが見えました。

 このままでは行けないと思い、受け止めようとして――」


 そこまで言ってからウィリアムがなんとはなしに周りを見ると、他の四人、全員が自分を見ていることに気が付いた。なんとなく落ち着かないのを無理矢理抑えると眉間に皺が寄る。それもそのままにして、ウィリアムは続ける。


「そうすると、穴に落ちるような感覚がしました。

 無我夢中で葉月さんを受け止めて……それだけですね」

「他に何か変わったことは?」

「特に何も」


 がっくりとした空気が、辺りを支配した。

 その中で、ひとりだけ酷く座った目をウィリアムに向けた人物がいた。

 葉月だ。

 彼女はつかつかとウィリアムに近づくと、男の頬に唐突な平手打ちを見舞った。

次は20日、水曜日予定。

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