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彼女が前へと進むのは
アファトスは決して足音を立てないようにして前へ進む。父の部屋の前の扉はできるかぎり見ないようにして、ただ前へ進む。幸いとでもいうのだろうか、父の部屋の中から音が聞こえてこない。耳は物音を聞きたくてしょうがないを自覚しながらも、同時になにも聞きたくないと願っている。それはこの部屋の前を早く通り過ぎてしまいたいと思っていながらも、ゆっくりにしか進まない歩みにも似ていた。心は張り裂けてしまわないばかりであったが、トルフのためという大義名分を抱えて前へと進むアファトスであった。




