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ルーチェ・エデンズ・キー LAST 崩壊する生徒会 

「これで、ようやく、終わりだな」


 岡田先輩は静かに呟く。エデンの鍵は未だに地面に顔を伏せ泣いているままだ。


「これで、終わったんですね。是沢先輩」


 校舎の壁に体を預け、僕は近くに居る是沢先輩に対して、と言うよりは半分は自分に対してそっと呟いた。


「ああ、これで本当に終わるのなら・・・な」


「どういうことですか?」


「・・・・・・・本当は、こんな時にこんな話をするなんて、場違い甚だしいんだけど、どうも俺にはこのまま終わるような気配がしないんだ」


 声に強さはなく、まるで、適当な言葉で真実を隠すかのように、是沢先輩は言う。確かに、言われてみれば、いくつか疑問は残る。そう、例えば


「鍵はまるで、ボク等が先に裏切った・・・・・・・・・・ような言い方をしていましたね。そこですか、気がかりなのは?」


「それもだけど・・・・やっぱいいや」


 そう言って是沢先輩は、「へへへ」っと笑ってみせる。でもそれは、何かを隠している時など見せる、曖昧な笑い方だった。



『が・・・アがぁぁぁぁぁぁぁぁ嗚呼あああああぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!』



 耳をひどくつんざく、まるで獣の獰猛さと、機械の冷徹な感じの音が合わさった奇声が辺りを支配した。声のほうを見ると、エデンの鍵がうずくまり、声を上げている。そして、鍵はルーチェ諸共、白い光で包み込んだ。


「何が・・・何が起こっているッ!!」


 岡田先輩が声を上げるが、誰もその答えを説明できるはずもなかった。やがて、光が収まると、白髪の天使は消え、変わりにうつ伏せに倒れたクリーム色の髪の少女と、その背後には、光の球体が残った。そして、その光の球体こそが、おそらく・・・・・


「「「あれが、エデンの鍵・・・・・」」」


 3人ともが、静かにそう呟く。鍵とは言ったが、それ自体は、鍵の形状などしていなかった。でも、それ自体がエデンの鍵であるということは、本能的に、と言うよりは、記憶に在ったと言った方がいいかもしれない。


 岡田先輩が、鍵に向かって歩みだす。是沢先輩もボクも、それに釣られて鍵の傍まで来て、鍵の前に並んだ。そして、ボクは膝を突いて、ルーチェを抱きかかえる。どうやら気を失っているだけだ。それからボクは、鍵の方へ視線を戻す。


「これでやっと、終わるんだな・・・・・」


 そう言って、手にしていた大剣を振り上げる。そして、鍵に向け、振り下ろそうとした瞬間――――



 ガシャンと、まるで、鏡が一斉に割れたような音を立て、鍵の周りに居るボク等の周りは、砕け散った。そして、砕け散った世界から見えるものに、ボク等は驚愕するばかりだった。




「・・・・そんな、こんな事が・・・・・」


 意味のない絶望が、辺りに響く。そして――――――






  



「どうして、君がそんなに驚くの? 岡田君・・・










 そう、そこには戦闘で死んだ・・・・・・はずの会長が・・・・・・

        エデンの鍵を・・・・・・手にしていた・・・・・・ッ!!


「・・・・本当に、本条・・・なのか・・・」


 岡田先輩が、震えた声で、問う。会長もそれに応えるように微笑み返す。


「ええ、そうよ」


 会長が、生きていた。死んだはずの会長がたった今、こうしてボク等の目の前に居る。 驚きと歓喜でごちゃ混ぜになったボクは、ただ安堵に浸っている。





「・・・・・やっぱり、こういう結末か・・・・・」






 隣に居た是沢先輩が静かに呟く。そして、会長の前へと出た。


「会長さん。生きていたのは嬉しいんだけどさ、そろそろ、鍵を破壊してくれないかな?」


 さっきまで浮かべていた微笑は、まるで嘘だったかのようにあっさりと消え去った。そして、何かに怯えたように硬直する。


「どうしたの?俺たちの悲願じゃないか、会長」


「・・・・・・・・・・」


「どうして、鍵を壊そうとしないの? ずっと握り締めたままなの? そんなに鍵がほしいの?」


「・・・・・・・・・」


「・・・じゃ、質問を変えよう。大和は、何処だ?!」


「――――――――――――ッ!!」


 まるで、名探偵にトリックを暴かれた犯人のように、会長はさらに硬直する。そういえば、大和の姿が見当たらない。会長が生きているなら、大和が生きていてもおかしくはないのに。なぜ?


「答えられない? だったら俺が教えてやるよ。それは―――――


 『大和は、この学園には存在しない架空の人物であり、会長さんが操る人形だったから』

 

 どうかな?当ってる?」


「・・・・・・・・・」


 会長は、是沢先輩をただ見つめているだけだ。許しを乞うようでもなく、衝撃に表情を染めるわけでもない、ただ、機械のように見つめている・・・・・


 それって、つまり・・・・ボク等への裏切り・・・・なの・・・か・・・・


「黙っているのは、肯定だから、と解釈していいかな?」


「・・・・・・・ええ、正解よ。翔は、此処には居るはずのない人物よ。いえ、その表現は正しくない。正確には、『翔はもう、この世には存在していない』、よ」


「・・・・やっぱりか。道理で何度占っても、結末が変わらないわけだ・・・・・

 会長さん。何でアンタがエデンの鍵を欲しているのか、そんな事は俺には判らない。けど――――


 何で、俺たちを裏切るんだよッ!? 何か理由があるなら話してくれたっていいじゃねぇか!

それをさ、自分独りの中に抱え込んで、挙句の果てには、大和なんていう『虚無』を造って、俺たちを欺いて、そうまでして、何がしたいんだよッ!!答えろよッ!!」


 是沢先輩が、会長に咆えた。あの、いつも優しくて温厚な人が、慟哭を顕している。瞳には、光るものが見え隠れしている。


「どうして・・・・どうしてだよ・・・・会長さん・・・・・!」


「・・・・・あなた達には、分からないでしょうね。いえ、理解なんかされてほしくもないわッ!!

私には、果たさなきゃいけない約束がある!そのためには、このエデンの鍵がどうしても必要なの!だから、私は、あの子・・・との約束のためなら・・・・なんだってやってやるッ!!!」

 

 そして、会長は手にしているエデンの鍵を自分の胸へと押し当てた。


「や、ヤメロッ!! 本条ぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 岡田先輩が叫ぶ。でも、その頃にはもう何もかもが遅すぎて、会長とエデンの鍵は、今、一つになった・・・・ルーチェの時と同じ、髪は白く染まり、眼は鮮血色になって、白い羽根を抱いている。


「・・・・・さようなら、みんな・・・」


 そして、会長は羽を羽ばたかせ、藍色の空へと飛び立った・・・・・


「どうして・・・・どうしてだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 岡田先輩の咆哮は、もう、会長には届かない・・・・・



 




 



いよいよ、次回最終回です。

更新は、3月上旬を予定していますので

よろしくお願いします。

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