最終話 旅立ちは夏休みにて
あれから、一ヶ月近くの時が経った。今ボクは、生徒会室の自分の席に座ってぼんやりとしている。
ボクの他には誰も居ない。ささやかな静寂だけが、ここにある。まるで、散り散りなっていったボク等を思わせるように―――――
岡田先輩は、まだ気持ちの整理がついていないのか、生徒会室には顔を出さず、
是沢先輩は、時たま来ては、誰も居ない事を確認してから、微かな声で自責を繰り返していた。
ただ、『俺は、正しかったのだろうか』 『俺が黙っていれば、誰も傷つく事はなかったんじゃないか』とこんな言葉を延々と・・・ボクはそれを、影から聞いていた。虚ろな声にも拘らず、ボクにはそれが、泣いている様にしか聞こえなかった。
それだけ二人は、会長と時間を共有し、信じ合っていたんだ。戦って、苦労して、鍵を見つけるために必死になっていた彼らにとって、会長の存在が大きなものだったのは容易に想像がつく。だから、こうして感慨に耽る事ができる。
じゃあ、ボクは?
会長が、裏切った。大和が死んでいた。こんな事があったにも関わらず、ボクは・・・未だに現実を感じる事ができていない。いや、自分でも馬鹿だと思うぐらい、なにもないんだ。
大和が死んだ。でも、涙が出ない。
会長が裏切った。けど、そこまで心が痛まない。
ボクは、どうしてしまったのだろう? こんなの・・・まるで・・・・
「自分が何も感じない人形だ、と?」
突然、後ろからの声で、振り返った。そこには、是沢先輩がいつも通りの屈託のない笑顔を浮かべて立っていた。
「これ・・・さわせんぱ―――――」
「しっかし、もうすぐ夏休みだな~。今年はどうしようかな~。成るチャン何か予定ある?」
「そ・・・そんな事言ってる場合じゃないでしょう!会長が居なくなったんですよ?!」
「そうだな~。会長さん居なくなったけどさ、いつまでもウジウジしててもしょうがないじゃん」
「だからって!―――――」
「まさか成るチャン。俺と岡田さんがたかだたあの程度のことで諦めたと思ってる?」
「え?・・・それはどういう意味で――――」
「こういう意味だ、成瀬」
是沢先輩の後ろから、大きな旅行用のカバンを持った岡田先輩が出てきた。
「岡田さん、頼まれてたもの、準備できてますよ。」
「こっちもだ。これだけありゃ、一か月程度は持つだろう」
「え?・・・・・これは、いったい・・・」
ボクが驚いて混乱してるのが分かったのか、岡田先輩と是沢先輩が、二人揃って高らかに宣誓した。
「「会長さん(本条)を、探しに行くぞッ!! 成瀬!」」
「・・・・・嘘でしょ」
「何を言っている? 丁度後2日で夏休みなんだ。この機に本条を探して何が悪い? この時のために俺たちは準備してたのに」
そうか。だから、生徒会室に顔を出してなかったのか。でも、
「探すったって、何処を?」
「それがさー、大体の目星は付いてんだよねー」
「費用とかは?」
「ん? 生徒会会計持ち」
なんて事を。でも、この人らしいと言えば、この人らしい。だったら―――
「・・・・・分かりました。行きましょう!会長を探しに!」
「「そう来なきゃ」」
「その代わり。二人にはある約束をしてもらいます」
「何だ?」
「必ず、此処に会長を連れて帰った来て、文化祭などの準備で徹夜しましょう!!」
「・・・・・・・・」
二人が眼を丸くしてボクを見入っている。それもそうだ。ボクがこんな冗談なんていつもは言わないのに。これも、此処にきた影響なのかな・・・・
「ああ、そうだな。腹一杯に、死ぬまで本条には働いてもらおうか」
「岡田さん。その言い方、怖い。」
「良いじゃねーか。なぁ、成瀬」
「はい、それぐらいしてもいいです。」
そうだ。会長を連れ戻す。たとえ会長が望まなくても、ボク等が無理にでも連れ戻す。それが・・・・
『俺らのやり方だ!』
どうも、成瀬 葵です。今までこの作品をご覧頂きありがとうございました。
いろいろと皆様にご迷惑をお掛けし、『読みにくい』作品に練っていたにも拘らず、多くの方に読んで頂き、とても幸いと思います
本当にありがとうございました!!
この話は、とりあえず終わりを迎えますが、近々第2部『“エデンの鍵”とローマ教会の利己主義』をお送りします。
では、またお会いしましょう。ありがとうございました。




