主約聖書の予言
「『死戦の魔術師』、か・・・・・」
成瀬君が部屋を出てすぐ、私はこんな事を呟いてみる。何だか、あまりいい気分でないのは確かね。
「相変わらず、アカ姉は変なとこに感情を移入される」
「あら、翔。居たのね」
さっきまで居なかったはずの翔の声が聞こえたけど、いつもこんな感じの神出鬼没なのであまり気にしない。
「で、どうしたんや。そんなに憂いて」
「別に、ただここまで『主約聖書』の予言通りだと気持ち悪くてね」
「ああ、『エデンの鍵』の出現についての記述か」
「ええ、『太陽は消え、ただ白く、荘厳な月は闇夜へと浮かび大地を照らせ。聖女、騎士、天使、道化は神の名を携えた魔術師に導かれ、扉を開く鍵を探せ。月が全て欠ける頃、封の鎖は砕かれる』・・・ここでの私たちの役割は、扉の鍵を探す事。でも、その鍵が何なのか分からないから駄目なんだけど・・・・」
「簡単な話だ。神の名を携えた魔術師、かつて北欧神話の最高神にして、最も知識に対して貪欲とされた戦いと死と魔術の神『オーディン』の別称、『ユグ』の名を持つマサキが全てを導く。ワシ等はただそれに付いて行けばいい。」
「そうね・・・確かにそうね、『幻想道化』さん」
「魔法名で呼ぶなや、矛盾聖女。」
「はいはい、たまにはいいじゃない、こういうのも」
「・・・・せやな。もしかしたら、ワシ等はもう、ここには居れへんかもしれんし・・・」
「それでも良い。私が犠牲になって、この学園が守られるなら」
「すでに学園規模ではないけどな。それに、『私が』やのうて『ワシ等が』や。一人で背負うなや」
「そうね、主約聖書通りならあと1週間。この間に『エデンの鍵』が動き出す。なんとしても、止める。それが、私たちの役目なんだもの・・・」
「死んで止めても、オモロないから生きて帰ってくる。アカ姉はそんな気持ちが足りへんわ」
「そうね・・・」
今思えば、私は世界がどうこうよりも、自分の周りが壊れるのを恐れていたのかもしれない。
あと1週間。私は・・いや、私たちは、何を思い、どうするのか。全ては私たちの手の中に委ねられた・・・
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