8. 今後のこと
頭が真っ白になり、ペタンとその場に尻もちをつく。
突然この地に落とされ、もう二度と息子に会えないなんて。
「綾人……」
ポロポロと、目から止めどなく溢れる涙。
頼れる親や知人もおらず、二人で生きてきた最愛の我が息子との突然の別れ。
私は涙が止まらず暫く泣き続けていたが、それを責める者は誰ひとりいなかった。
嗚咽を漏らす私に、王妃が私の前に音もなく歩み寄ると、両手を広げて口から何か呪文のようなものを告げる。
周りが息をのむ音が鮮明に聞こえる。
なんだろうと私が涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔を上げると、鱗に覆われた手の甲が白く見えた。
「え……?」
鱗のない掌で顔を拭っておなかに視線を落とすと、なんと私の鱗は黒からあっという間に真珠のようなパールホワイトに変化したのだ。
その鱗は滑らかな光沢があり、光の加減で輝きが変化する美しいものだった。
周りにいる人魚達にこの色の鱗を持つ者がいない為、余計に新鮮に見えるし、変化したこの鱗に皆目が釘付けになっている。
「わっ、なにこれ!」
吃驚する私に、王妃は口を開く。
「貴女の事をお調べしたら、善い行いがかつてないほど膨大で、私は迷わずこの色にしようとしたのです。私が息子を手に抱えていたのが悪いのですが、よりにもよってこの国の最下層である黒にしてしまうとは……。このような事態になり、誠に申し訳ありません」
深々と頭を下げる王妃。
このふたり、そんなに皆の前で頭下げて大丈夫⁉
「しかし、貴女の命の終末は我々ではどうする事も出来ないのです。全ては神が決め、我々は落ちるそのお身体をこの国に適合させるのが役目。ご了承、ください」
「は、はあ」
「今後の生活は、僕達が全て責任を持つから! 君のその鱗と同じ色を持つ者は国内にはいないし、再生治癒の特殊能力を持つのは貴方だけだからね」
国王と似た身体つきの王妃は至極申し訳なさそうに謝罪し、腰を折って私に謝罪してくれた。
ふたりとも小柄だから、私が座った状態でやっと目線が合うくらいだ。
……ちょっと待って。
「再生治癒の特殊能力」ってどういう事?
私の疑問に気付いた王妃は、穏やかな笑みを浮かべてこちらを見る。
おお、気品半端ない。
「カンシーラ国では、鱗の色が薄い者の中で稀に特定の分野で極めて高い能力を持つ者が現れます。私がみる限り、チヅル様は再生治癒の能力がございます」
「でも私、槍で刺されても自然に治らなかったですよ?」
その言葉に、国王は「槍⁉」と驚いた。
周りも一斉にざわつく。




