9. 隊長の怒り
暴力表現あります。
「チヅル様を刺した者がいるのか⁉」
ギース隊長が後ろを振り返って隊員達を睨みつける。
「王妃様、近寄る無礼をお許しください」
ギース隊長が近づいて、私の目の前でかかんだ。
「チヅル様はずっと地下牢にいたのですよね?」
「あー、ハイ……」
うお、威厳ありまくりのギース隊長に様付けで呼ばれちゃったよ。
どうしよう、ここでマクザにされたというのは簡単だけど、めちゃくちゃ怒られるんだろうな。
大事にするとややこしいし。
そう思ってチラリとマクザの方を見てしまったのがいけなかった。その視線を見過ごさなかったギース隊長が、顔面蒼白で立ちすくむマクザの首元を掴んで、勢いよく地面に叩きつけたのだ。
「マクザ、貴様チヅル様を傷つけたな⁉」
物凄い力で押さえつけられたマクザの首はミシミシと音を立てて、彼は「が、アッ!」と声を出し悶絶するが必死に弁明しようとした。
「ぐ、も、申し訳、ありません! そんな御方だとは知ら、ず……!」
「手荒く扱うなと言っただろう! お前の身体を串刺しにして、その鱗に囚人番号を刻んでやろうか!」
「ひっ!」
鬼の形相で押さえつけ、更に手に持った槍でマクザの足元……ヒレ部分に槍をグッと突きつけるギース隊長。ツツ……と先端から出血しマクザは許しを請うが、隊長の手は緩まない。
す、すご……。偏見かもしれないけれどまさにザ・軍隊って感じ。
隊長から見れば、私は巻き込まれた異界人だし、こんな鱗の色だからそりゃあキレるのもわかるけれど、あのままじゃあ彼が死にそうだわ。
「あの、隊長さん。手を離してください……私怒ってないですから」
「ですが……」
抑えつけた状態でギース隊長は顔を上げる。マクザは自分の部下だから、余計にこうして制裁を加えなければと思っているんだろう。
「いいんです。なんていうか、子供が癇癪起こして悪戯したって感じでしたから。もう血も止まっていますし、気にしていません」
母親やっていたらわかる、あんな暴言は男子ならあるよ。綾人も思春期は良くイライラしてたしなー。
軽い雰囲気にしようと私がそう言って笑うと、王妃は目に涙を溜めては「やはりチヅル様は器の大きな御方だわ!」と感激し、横にいた国王も深く頷いていた。
「チヅル様、寛大な御心感謝いたします」
ギース隊長は、頭を大きく下げて述べた。ウェーブがかったオレンジ色の肩まである髪がサラリと揺れる。
あの、呼び捨てでいいですから……。




