34 畑の観察記録
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【畑の観察記録】
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一日目。天気は曇りときどき晴れ。
今日から観察記録をつけます。
今回の実験は
動物のふんを使った堆肥(動物堆肥)
黒の森の落ち葉を使った堆肥(落葉堆肥)
黒の森で採取した薬草を使った堆肥(薬草堆肥)
三種類を用意して、植物が育ってくれるのかを試します。
辺境伯様の研究書には「動物堆肥で植物は育たなかった」とあるため、確認用として試すことにしました。
落葉堆肥、薬草堆肥とも、仕込んでから一週間で完成しました。
想像をはるかに超える早さで完成しましたが、聖霊が関係しているのかどうか、理由はわかりません。
堆肥の作り方については次のページに記録してあります。
今日は三区画それぞれに、ミニトマトの種、ミニトマトの苗、聖星花の種の三種類を植えました。
どんな小さなことでもいいから、新しい発見があることを期待しています。
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二日目。天気は曇り
(動物堆肥・落葉堆肥・薬草堆肥)
種に変化なし。
ミニトマトの苗も変化はありません。
三区画に水をまいて終了しました。一日では変化は起きませんでした。
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五日目。天気は晴れ
(動物堆肥)
種に変化なし。
ミニトマトの苗が真っ黒に変色していました。
昨日まではまったく異常はなかったのに、突然の変化でした。
苗を触った感じは普通と変わりません。
(落葉堆肥・薬草堆肥)
種に変化なし。
ミニトマトの苗も変化はありません。
動物堆肥に変化がありました。ここからどうなるのか、このまま確認したいと思います。
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ハルジュ様に手紙を飛ばしてみました。
聖霊が小鳥の周りに集まって、本当に運んでいきました。すごく可愛かったです。
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七日目。天気は雨
本格的な雨のため、今日の観察はできませんでした。
遠目から見た感じでは昨日と比べて変化はなさそうでしたが、畑が心配です。
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雨の中でしたが、ハルジュ様から返事が届きました。
明日は畑の様子を見にくるそうです。
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八日目。天気は曇りときどき晴れ
畑は無事でした。
(動物堆肥)
野菜の苗は黒く変色したままでした。
今日は葉を触った途端にぼろぼろと崩れてしまいました。
種を掘り起こして確認しましたが、種は両方とも真っ黒に変色し、つまむと崩れてしまいました。
(落葉堆肥・薬草堆肥)
種に変化なし。
ミニトマトの苗も変化はしていませんでした。
実験を始めて一週間で、動物堆肥は失敗しました。
辺境伯様の研究書に書かれていたとおりでした。実際に自分の目で見て、辺境の土地の異変がはっきりわかりました。
落葉堆肥、薬草堆肥はまだ変化する様子がありません。これはいい傾向なのでしょうか。
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特報です。
ハルジュ様がジャージを着ていました。私の姿を見てすぐにファルダさんに頼んだそうです。
デザインはほぼ同じなのに、ハルジュ様にふさわしく進化していました。
落ち着いた茶色のジャージが似合いすぎていて、こっそり何度も見てしまいました。もう最高です。
推しのジャージ姿を見られる日がくるなんて、想像もしていませんでした。
(実験の経過とは関係ありませんが、観察記録として残しておきます)
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十一日目。天気は雨のち曇り
(動物堆肥) 失敗
(落葉堆肥)
ミニトマトが萎れていました。ただし黒色ではありません。触っても崩れることはありませんでした。
種を掘り起こして確認しましたが、植えたときのままの状態でした。成長している様子はありません。
(薬草堆肥)
種に変化なし。
ミニトマトの苗にも変化はありません。
残念ながら落葉堆肥の区画も失敗のようです。残ったのはここまで変化のない薬草堆肥の区画です。
もうすぐ二週間が経ちます。
ここまで緑を保っているだけでも十分な結果を残していますが、それでも最後まで望みは捨てたくない。
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ハルジュ様は今日も来てくれました。ここまででも大きな進歩だと喜んでくれています。
この実験を続けていけば、いつかは結果が出るだろうと期待をしてくれています。
でも、もっとハルジュ様に喜んでもらいたい。明日こそ、いい結果が出ますように。
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今日の記録をつけたところで、部屋の窓をコツコツと叩く音がした。
窓を開けると、聖霊の光に包まれた木彫りの小鳥がふわりと止まり木に止まる。
(ハルジュ様からの手紙だ)
手紙を小鳥の足から外すと、聖霊たちは小鳥から離れていった。
聖霊が手紙を運ぶのにどうして小鳥のおもちゃなのか気になって聞いてみると、ハルジュ様から返ってきた答えは「聖霊たちが白ハト配達員のまねをしたがったから」だった。
(もしハルジュ様の冗談だったとしても、理由が可愛すぎる……)
聖霊たちが小鳥の背中に乗ってはしゃいでいるのを想像して、くすりと笑いが漏れる。
丸められた小さな紙を開いて、中を確認した。
『明日も行くよ』
筆圧が少し強めの美しい文字。たった一言の手紙だけど心が弾む。
はっと我に返り、浮ついてはいけないと気を引きしめた。
実験を始めてからもうすぐ二週間が経つ。
薬草堆肥に植えた二種類の種も、通常なら発芽してもおかしくないはずなのに……。
(何かが足りないのかな……。明日も変化がなかったら、種を掘り起こして確認する必要があるかもしれない)
本当に、辺境で植物を育てる方法はないのだろうか。
◇
十二日目。天気は小雨、午後から晴れ。
「う……うそ……」
ハルジュ様と畑にやってきた私は、目の前の光景を見て絶句した。
薬草堆肥の区画に植えたミニトマトの苗は、あいかわらず緑を保っている。
だけど昨日まで変化のなかった苗が、なんだか伸びているような気が……。
さらにその隣に植えた、ミニトマトと聖星花の種――
昨日まで何もなかった地面の上で、小さな双葉が、あちらこちらに顔をのぞかせていた。
諦めるしかないと思いながらも、諦めきれずに続けていた。
もう無理かと思っていたのに……。
(辺境で……芽が、出た……)
遅れてやってきた喜びがじわじわと押し寄せてきた――そのとき。
突然、視界が何かに塞がれた。
同時に体を強い力で拘束され、動くことができなくなった。
「!?」
いきなりのことに訳がわからず混乱していると、耳元で低く震える声がした。
「これは、現実なのか……? 芽が……辺境で、芽が出た……。何十年も、ずっとできなかったのに……。リナリエ……本当に、君は……! ありがとう……っ!!」
茶色のジャージが視界を埋め尽くし、朝の森のような清々しい香りが鼻腔をくすぐる。
私のものとは別の鼓動が、どくどくと耳に響いてくる。
芽が出た感動を噛みしめる前に、私の思考はそれどころではなくなってしまった。
(は……今、ハルジュ様に抱きしめられてる……!? 待ってやばい。本当にやばい……っ! 息がっ……! まずい……頭が沸騰しすぎて、力が抜ける……)
耳をかすめるハルジュ様の息遣い、触れている場所から伝わるハルジュ様の熱で、私は溶けてなくなる寸前に陥っていた。
「……リナリエ?」
私が反応しないことにやっと気がついたのか、ハルジュ様が腕の力をゆるめた。
顔を動かせるようになった私は、恥ずかしさと苦しさで涙目になりながらハルジュ様を見上げた。きっと顔は真っ赤になっている。
「――っ!! す、すまない!!」
ハルジュ様が目を見開いたあと、突然私から離れようとしたので、私は必死に縋りついた。
「このままでいて!!」
「えっ!?」
ハルジュ様の顔がみるみる赤くなっていくけれど、気にしている余裕はなかった。
私は真剣なまなざしでこちらを見つめる彼に半泣きで訴えた。
「今、手を離されたら……腰が抜けて立っていられません……」
「…………え? あ、ごめんっ!!」
ハルジュ様がそう叫んだのと同時に、突然私の体が宙に浮いた。
横抱きにされ、速やかにベンチに座らされ、何がなんだかよくわからない間に「水を持ってくる」と言ってハルジュ様は走っていった。
私はハルジュ様の背中が遠ざかっていくのを呆然と見送った。
「い……今の、お姫様抱っこ?」
推しを持つ全世界の女性たちが、一度は夢見たことがあるだろう……お姫様抱っこ。
憧れのシチュエーションを体験してしまったと気づいた私は、今度こそベンチに倒れ込んだ。
安定のお姫様抱っこですね(あっさり終了)\(^o^)/




