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5話  最強の竜姫と、全自動リラクゼーション空間

『庭』の人口が四人に増えたことで、俺の「効率化計画」は次のフェーズへと移行した。

 フィオナが警備と教育を、ルナが素材調達を、そしてエルナが防衛術式の最適化を担当する。

 おかげで俺は、より高度な概念構築に専念できるようになった。


「カイル様、これは一体……?」


 出来立ての巨大な石造りの建物の前で、フィオナが目をパチクリさせている。

 その横では、エルナが建物の周囲に刻まれた(俺が適当に定義した)術式を見て、ブツブツと解読を試みていた。


「ただの大浴場だ。湧き水を引いて『常に最適な温度と水質を保つ』ように定義した。さらに水流の概念をいじって、疲労回復用のジャグジー機能も付けてある」


「じゃ、ジャグジー……? 水が勝手に泡立って体をマッサージしてくれるなんて、どこの古代帝国ですか……っ!」


 俺たちがそんな会話をしていると、突然、ズシン、ズシンという重い地響きが森の奥から近づいてきた。

 木々がなぎ倒され、鳥たちがパニックを起こして飛び去っていく。


「なっ、敵襲!?」


 フィオナが剣を抜き、ルナが臨戦態勢に入る。

 直後、俺が構築した『生きた城壁』の一部が、凄まじい物理的衝撃によって粉砕された。


「――見つけたぞ! この森に不釣り合いな、異常な魔力の源をな!」


 土煙の中から現れたのは、燃えるような真紅の髪を揺らす一人の少女だった。

 頭部には、天を衝くような立派な竜の角。瞳は金色の爬虫類特有のスリット型をしている。

 だが、背中に竜族特有の羽はない。その代わり、彼女の脚力と身体能力は、空を飛ぶことを捨てて大地を踏み砕くことに特化しているようだった。


「竜族……! しかも、あの角の形状は王族の証。なぜあんな上位種が辺境に!?」


 エルナが青ざめた顔で杖を構える。


「我は竜王の娘、アイリス! 先日放たれた第七位階魔法と、それを一瞬で消し去った未知の力……我の闘争本能が、お前たちと戦えと叫んでいる!」


 アイリスは地を蹴った。

 羽がないからといって、その速度は決して遅くない。むしろ、大地から直接推進力を得るその突進は、砲弾そのものだった。

 フィオナもルナも、その圧倒的な質量と速度の前に反応が遅れる。


「死合いの栄誉を与えよう、人間の――」


 アイリスの拳が、俺の顔面に迫る。

 だが、俺は片手に持っていたタオルの埃を払いながら、小さく息を吐いた。


「血の気が多いな。風呂上がりには良くないぞ」


「なにっ……!?」


「定義:彼女の足元、半径三メートルの摩擦係数を『完全にゼロ』にする」


 ツルンッ。

 アイリスの砲弾のような突進が、突然スラップスティック・コメディのように崩れた。

 踏み込むはずの足が完全に滑り、彼女の体は空中で無様に一回転する。


「な、なんだこれはっ!? 足が、地を掴めな――きゃあっ!」


 ドサァッ! と勢いよく地面に背中を打ち付けるアイリス。

 だが、俺の対応はこれで終わりではない。


「定義追加:彼女の接地面の硬度を『最高級の低反発マットレス』に変更。さらに、周囲の気温を竜族の副交感神経を最も刺激する『絶対適温』に固定」


 ポフン……。

 アイリスが叩きつけられた地面が、まるでマシュマロのように柔らかく彼女の体を包み込んだ。

 同時に、ぽかぽかとした陽だまりのような温度が彼女の全身を覆う。


「……あ、あれ? 痛くない……? それどころか、なにこれ……すっごく、気持ちいい……」


 さっきまでの好戦的なオーラはどこへやら。

 アイリスの金色の瞳がとろんと濁り、無防備な無防備な顔で床(低反発の地面)に頬をすり寄せ始めた。


「ふわぁ……。ダメ、これ……体が溶けちゃう……。戦うの、もうどうでもよくなってきた……」


「……よし、制圧完了。無駄な戦闘はカロリーの浪費だからな」


 俺がそう言うと、背後の三人は呆然とした顔で揃って首を振った。


「カイル様……竜族の王女を、地面の寝心地だけで陥落させるなんて……」

「ご主人様、恐ろしい子……!」


 むにゃむにゃと寝言を言い始めたアイリスを見下ろし、俺は肩をすくめた。

 これで聖騎士、獣人、エルフ、竜族と、無駄に戦闘力の高い人員が揃ってしまった。

 これなら、ちょっとした都市の防衛なら完全に自動化できそうだ。


 ◇◇◇


 同じ頃。

 王都、ギルド『黄金の翼』。


「ゼクス様! ギルド長からの通達です! 昨日のクエスト失敗による違約金が払えない場合、パーティのランクをCまで降格させると!」


「ふざけるな! 俺は勇者だぞ! なんでこんな急に、何もかもが上手くいかなくなったんだ!?」


 ゼクスは酒場でテーブルを蹴り飛ばし、頭を抱えていた。

 剣は折れ、魔法は暴発し、野営のテントすらまともに張れない。

 彼らは今になってようやく理解し始めていた。


「まさか……。あの無能だと思っていたカイルの雑用が、俺たちを支えていた……?」


 だが、気づいた時にはもう遅い。

 彼らがどれだけ後悔しようとも、カイルは今、辺境の森に築かれた『全自動大浴場』で、多種族の美少女たちに背中を流されながら優雅なバスタイムを満喫しているのだから。

AIの文章が含まれています。

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